著者
井田 聡子 隅藏 康一 永田 晃也
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.169-191, 2009 (Released:2010-05-26)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

近年の医薬品産業においては,企業間の合併・買収,戦略的提携が増加している。このような企業境界の変化は,当事者企業のイノベーションに様々な影響を及ぼすと考えられるが,その影響は十分に明らかになっていない。そこで,本稿では,イノベーションの決定要因である専有可能性と技術機会という2つの概念に着目し,製薬企業間の合併がこれらの要因に及ぼす影響について分析を行った。第一三共(三共と第一製薬の合併)とアステラス製薬(山之内製薬と藤沢薬品工業の合併)を対象とした事例研究の結果,以下の知見が得られた。 (1)同質的な製品セグメントにあった2社が合併した場合は,専有可能性が向上する。 (2)異質的な製品セグメントにあった2社が合併した場合は、技術機会の源泉となる情報源が多様化する。 このように,合併がイノベーションの決定要因に及ぼす影響は,合併を行った2社の製品セグメントの異同によって異なることが明らかになった。
著者
井田 聡子 隅藏 康一 永田 晃也
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.257-271, 2008 (Released:2010-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

近年の医薬品産業においては,新薬の開発競争の激化を背景として,世界的な規模で業界再編が進展している。日本国内においても,企業間の合併,経営統合,戦略的提携等が活発化しつつある。本稿では,このような企業境界の変化がイノベーションの決定要因である専有可能性(appropriability)と技術機会(technological opportunity)に及ぼす影響を分析した。対象事例として,中外製薬とロシュによる戦略的提携を取り上げ,両社による戦略的提携が専有可能性と技術機会に及ぼしつつある影響を考察した。中外製薬における医薬品売上構成の変化,開発パイプラインの品目構成の変化を中心に分析した結果,提携後の中外製薬においては,(1)イノベーションから得られる利益の専有可能性が高まった,(2)ロシュ・グループ外部からの技術機会が制約された,などの結論が得られた。