著者
谷 明洋 澤田 莉沙 松田 壮一郎 樋江井 哲郎 隅藏 康一 科学コミュニケーター 科学コミュニケーター 科学コミュニケーター 科学コミュニケーター 政策研究大学院大学 / National Graduate Institute for Policy Studies
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.22-01, 2022-04

現在「科学コミュニケーター」として活動している人々には多様なタイプの人材が存在し,科学コミュニケーターという言葉が指し示す人物像が曖昧になっている。本研究は,このような現状を踏まえ,科学コミュニケーターの個々の多様な能力と人材価値を包括的に説明する「方法論」を探求するものである。その方法論の具体的な手順として,科学コミュニケーターが有し得る能力を,いくつかの「職能」として言語化した上で,さまざまな「職業領域」における「人材価値」を説明することにした。科学コミュニケーターへのヒアリング・アンケート調査や,科学コミュニケーターを集めた100 人規模のイベントでの議論,研究グループのメンバーの経験に基づく議論などを踏まえて,科学コミュニケーターの「職能」,「職業分野」ならびに「人材価値」に具体的な情報を盛り込み整理した。その結果,【1】科学コミュニケーターは多様な「職能」を幅広く有し得る人材である,【2】それらの職能は,社会の幅広い職業分野において応用が可能である,【3】科学コミュニケーターは複数の「職能」を兼ね備えることで,付加価値を高めやすいーということが説明できた。また,この方法論は,必要に応じて具体情報を当てはめて活用できる汎用性を備えており,科学コミュニケーターが自身の能力や人材価値をとらえ直すために参照・活用することで,幅広い職業分野への進出によるキャリア形成につながっていくことが期待される。
著者
隅藏 康一
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.271-289, 2021-09-30 (Released:2021-10-21)
参考文献数
45

In this paper I review prior academic debates on knowledge transfer between university and industry, that is University-Industry Cooperation (UIC), and describe its history in Japan. Before the 1990s there were no systematic UIC in Japan and a result of basic research was transferred informally through already existing personal network. In the later 1990s, Technology Licensing Organizations (TLOs) were established to connect university invention and corporate innovation. In 2004, Japanese national universities were incorporated and UIC headquarters began to operate inside university. After the Hiranuma Plan in 2001 aiming at 1,000 university-led start-ups in 3 years and its achievement, several successful cases were created and are widely known. In making a UIC policy in the 2020s, we expect that TLOs, UIC headquarters and their specialized staffs, would be a producer to create a new business and innovation based on the results of basic research and to increase the value of the knowledge originated from university.
著者
長根 裕美 鈴木 潤 藤田 正典 隅藏 康一 富澤 宏之 永野 博 安田 聡子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、日本の科学研究の低迷をもたらした研究システムの負のメカニズムを解明し、日本の科学研究界にブレークスルーをもたらす改善策を提案する。日本の科学研究の凋落がセンセーショナルに報道されている。その主な原因としては、経済の低迷のほか、近年の大学改革の失敗が挙げられるが、実際のところ、確たるエビデンスがあるわけでなく、あくまで示唆にとどまっている。なぜ日本の科学研究力は低下したのか?本研究は定量的に研究力低下の負のメカニズムを解明するとともに、定性的なアプローチでもってその定量分析の結果の確からしさを検証していく。
著者
森下 竜一 隅藏 康一 齋藤 裕美
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.68-73, 2015-08-31 (Released:2017-10-19)

The environment of business development on regenerative medicine in Japan was drastically changed by the Pharmaceuticals and Medical Devices, etc. Act and the Regenerative Medicine Act that were enforced on November 25th, 2014. In parallel, the situation surrounding health and medical innovation in Japan is also changing. In this article we interviewed Professor Ryuichi Morishita, a member of the Council for Regulatory Reform, to discuss the trend of medical regulatory reform in Japan.
著者
古澤 陽子 枝村 一磨 隅藏 康一
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2015-04 (Released:2015-05-12)

近年、規制は企業や産業ひいては経済全体のイノベーション活動に影響を与える重要な要素として認識されている。本研究では、規制が企業の研究開発活動に与える影響を定量的に捕捉することを目的として、日本の製造業に属する企業を対象に、JIPデータベースの規制指標と民研調査の個票データを用いて定量的に分析した。分析の結果、製造業全体では、研究開発のインプットの面で規制緩和は研究開発活動の外部化を促す傾向があるが、全体としては研究開発投資を抑制する(規模を縮小する)方向に作用する傾向が確認された。これは裏返せば、規制水準の強化が研究開発投資を促進する傾向を示すものである。一方の研究開発活動のアウトプットである国内特許出願や新製品投入に対しては、規制緩和はプラスに作用し、国内特許出願を増加させ、新製品の投入も促進する傾向が示された。しかし、製品特性および企業規模を考慮するため、製造業を基礎素材型産業と加工組立型産業に区分し、さらに大企業と中小企業を区分すると、規制緩和が研究開発活動に与える影響は正負両方あり、ひとくちに製造業と言っても、製品特性や企業規模により異なることが確認された。 The regulatory conditions have been identified as important factors influencing the innovation activities of companies, industries and whole economies.The paper aims to assess the impacts of regulation on innovation, taking into account the industry characteristics and the size of the firm. In order to conduct such a quantitative analysis of the impact, we differentiate between the key material industry and processing and assembly industry of the manufacturing sector, and furthermore we consider large enterprises and small and medium enterprises separately. Since our quantitative analysis covers Japanese manufacturing sector, we use individual data of “Survey on Research Activities of Private Corporations” and regulatory index of “Japan Industrial Productivity Database". In manufacturing in general, the empirical results overall confirm the two effects of regulations. First, the easing of regulations may reduce the incentives for companies to invest in R&D whereas it may promotes outsourcing of R&D and encourages open innovation. Second, a weak regulation may favours a rapid and wide diffusion of inventions, which may leads to increase in the number of patent applications and to introduce new products and services in the market.However, taking into account the industry characteristics and the size of the firm, the empirical results show that the regulation may have both positive and negative impact on R&D and innovation. Different types of the industry and firm size generate various impacts of regulation and even a single type of regulation can influence innovation in various ways depending on how the regulation is implemented.
著者
井田 聡子 隅藏 康一 永田 晃也
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.169-191, 2009 (Released:2010-05-26)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

近年の医薬品産業においては,企業間の合併・買収,戦略的提携が増加している。このような企業境界の変化は,当事者企業のイノベーションに様々な影響を及ぼすと考えられるが,その影響は十分に明らかになっていない。そこで,本稿では,イノベーションの決定要因である専有可能性と技術機会という2つの概念に着目し,製薬企業間の合併がこれらの要因に及ぼす影響について分析を行った。第一三共(三共と第一製薬の合併)とアステラス製薬(山之内製薬と藤沢薬品工業の合併)を対象とした事例研究の結果,以下の知見が得られた。 (1)同質的な製品セグメントにあった2社が合併した場合は,専有可能性が向上する。 (2)異質的な製品セグメントにあった2社が合併した場合は、技術機会の源泉となる情報源が多様化する。 このように,合併がイノベーションの決定要因に及ぼす影響は,合併を行った2社の製品セグメントの異同によって異なることが明らかになった。
著者
井田 聡子 隅藏 康一 永田 晃也
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.257-271, 2008 (Released:2010-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

近年の医薬品産業においては,新薬の開発競争の激化を背景として,世界的な規模で業界再編が進展している。日本国内においても,企業間の合併,経営統合,戦略的提携等が活発化しつつある。本稿では,このような企業境界の変化がイノベーションの決定要因である専有可能性(appropriability)と技術機会(technological opportunity)に及ぼす影響を分析した。対象事例として,中外製薬とロシュによる戦略的提携を取り上げ,両社による戦略的提携が専有可能性と技術機会に及ぼしつつある影響を考察した。中外製薬における医薬品売上構成の変化,開発パイプラインの品目構成の変化を中心に分析した結果,提携後の中外製薬においては,(1)イノベーションから得られる利益の専有可能性が高まった,(2)ロシュ・グループ外部からの技術機会が制約された,などの結論が得られた。