- 著者
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井田 聡子
隅藏 康一
永田 晃也
- 出版者
- 公益財団法人 医療科学研究所
- 雑誌
- 医療と社会 (ISSN:09169202)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.2, pp.257-271, 2008 (Released:2010-05-26)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
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近年の医薬品産業においては,新薬の開発競争の激化を背景として,世界的な規模で業界再編が進展している。日本国内においても,企業間の合併,経営統合,戦略的提携等が活発化しつつある。本稿では,このような企業境界の変化がイノベーションの決定要因である専有可能性(appropriability)と技術機会(technological opportunity)に及ぼす影響を分析した。対象事例として,中外製薬とロシュによる戦略的提携を取り上げ,両社による戦略的提携が専有可能性と技術機会に及ぼしつつある影響を考察した。中外製薬における医薬品売上構成の変化,開発パイプラインの品目構成の変化を中心に分析した結果,提携後の中外製薬においては,(1)イノベーションから得られる利益の専有可能性が高まった,(2)ロシュ・グループ外部からの技術機会が制約された,などの結論が得られた。