著者
岸本 麻子 井野 素子 多田 直樹 南 豊彦 井野 千代徳 田辺 正博
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.237-242, 2010 (Released:2011-11-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Angina Bullosa Haemorrhagica (ABH) の原因として Oral Allergy Syndrome (OAS) が原因と思われた 2 例を報告した。ABH は特発性に発症する口腔内の大きな血腫で多くは食事中ないし食直後に発症する。原因の一つに硬いものを食した物理的要因が考えられているが、明確にアレルギーとの関連での報告はない。OAS は食物にて発症する接触アレルギーで、食事中ないし食直後に発症する。主な症状は痒みなど刺激症状である。報告した 1 例は頬部に発症した ABH でメロンを食し、1 例は軟口蓋に発症した ABH でリンゴを食して発症した。共に、口腔内に痒みを自覚し、前者は頬部を刺激陰圧化している内に腫れが出現し、後者は舌で口蓋を触れている内に発症した。両者は共にスギ花粉症を持ち、シラカバ抗体が陽性であった。ABH の原因の一つとして OAS があることを示し、その診断にあたっては、シラカバ抗体を含めたアレルギー検査が必要となると考えた。
著者
井野 千代徳 一色 信彦 松島 康二 多田 直樹 井野 素子 溝口 兼司 田邉 正博
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.147-161, 2013-07-20 (Released:2014-08-01)
参考文献数
14

痙攣性発声障害(SD)は心因性疾患ではなく局所性ジストニアとされているが、多数例を診る中で SD 患者にも陰性の感情を認めることも少なくない。そこで、62 例の SD 患者を対象にしてその特徴を調べる目的で問診、心理検査そしてアンケートなどを行い、その結果を心因性疾患とされるほかの耳鼻咽喉科疾患と比較を行うことで検討した。SD 患者は 30 歳未満の症例が多数を占め、病悩期間が 2 年以上の症例が多かったことが咽喉頭異常感症と舌痛症と大いに異なっていた。CMI (Cornell Medical Index) で神経症傾向以上を示した症例は 12.9%とほかの心因性疾患とされるそれら疾患に比して著しく低かった。 しかし、その内容の検討より SD 患者は「易怒性」と判定される例が上記疾患に比して高かった。SD 患者の多くはその発症時、声をよく使う環境下にあり原因のいかにかかわらず声の詰まりを経験し悩んでしまう不安障害 (SAD) のごとく神経症的に不安・怯えでは無く、ある種のいら立ちをもって悩んでしまう。SD 患者の多くは電話を苦痛にとらえているが、特に騒音下での電話に苦痛を覚えることを特徴とする。大きな声を出そうとすることが原因ととらえているが、コミュニケーションスタイルのゆがみも疑われる。SD は「性格」、「環境」そして「予期不安・身構え」、「長い病悩期間」があり発症し、「予期不安・身構え」より生じる「声門下圧の上昇」とそれによって生じる「声帯の締まりの増強」によって生じる二次的な回路で強化される。治療はこの二次的に生じた回路の解消であるが容易ではなく、治療法としては一色の甲状軟骨形成術 (Ⅱ型) が最良と論じた。
著者
岸本 麻子 井野 千代徳 多田 直樹 井野 素子 南 豊彦
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.101-110, 2010 (Released:2011-05-01)
参考文献数
4

日常診療でしばしば遭遇する疾患であるにもかかわらず、それを主訴として受診することはまれである口角炎について、医師として何を診るベきかを細菌検査などより検討した。口角炎は年齢によって受診する主訴、病原菌が異なることが分かった。29 歳以下の年齢では、口内ないし咽喉頭異常感症に随伴し病原菌は主疾患の病原菌と同じであることが多い。30 歳以上では、口内乾燥症、ストレス性疾患である口内ないし咽喉頭異常感症に多く見られた。細菌検査結果で 60 歳以上の症例ではカンジダ属が 35.1%に、MRSA が 19.3%に検出されたことが特徴的であった。口角炎はビタミンB2、B6などの欠乏で発症しやすくなる。欠乏の原因とし胃腸障害、抗生剤の服用、ストレス、肝障害などがあり、口角炎は、眼前の患者の背景を読むヒントとなり得るものと考えた。
著者
井野 千代徳 稲村 達哉 木下 卓也 加藤 真子 柳田 亜由子 井野 素子
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.759-764, 1994-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
19

唾液腺型の高アミラーゼ血症を主訴とした2症例を報告した. 1例目は, 20歳の女性で, 嘔吐などがあり, 20kgを越す体重の減少があり, anorexia nervosaが疑われた. 両側の顎下腺腫脹があり, 穿刺組織診で唾液腺症と診断された. 2例目は, 40歳の女性で, 既往歴として高尿酸血症と甲状腺機能亢進症がある. 後者の方は, 現在コントロールされているが, 前者は, 依然として高値のままである. 両側の耳下腺の腫脹があり, 穿刺組織診で唾液腺症と診断された. 唾液腺症に高アミラーゼ血症を伴う例は, anorexia neruosaに合併した唾液腺症以外は報告されていない. 唾液腺症の腺房細胞の顆粒は, clear, dark, mixedに分類されるが, clearな顆粒を有した腺房からは, 唾液中にアミラーゼが多く分泌されるという. 今回報告した2症例の分泌顆粒はclearなものが優位なため, 高アミラーゼ血症を呈したものと考えた.
著者
岸本 麻子 井野 素子 多田 直樹 南 豊彦 井野 千代徳 田辺 正博
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.237-242, 2010

Angina Bullosa Haemorrhagica (ABH) の原因として Oral Allergy Syndrome (OAS) が原因と思われた 2 例を報告した。ABH は特発性に発症する口腔内の大きな血腫で多くは食事中ないし食直後に発症する。原因の一つに硬いものを食した物理的要因が考えられているが、明確にアレルギーとの関連での報告はない。OAS は食物にて発症する接触アレルギーで、食事中ないし食直後に発症する。主な症状は痒みなど刺激症状である。報告した 1 例は頬部に発症した ABH でメロンを食し、1 例は軟口蓋に発症した ABH でリンゴを食して発症した。共に、口腔内に痒みを自覚し、前者は頬部を刺激陰圧化している内に腫れが出現し、後者は舌で口蓋を触れている内に発症した。両者は共にスギ花粉症を持ち、シラカバ抗体が陽性であった。ABH の原因の一つとして OAS があることを示し、その診断にあたっては、シラカバ抗体を含めたアレルギー検査が必要となると考えた。