著者
京 将司 中森 正治 石橋 修 黒川 一哉
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo‐to‐Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.401-409, 2014

火力発電用ボイラにおいては,長期安定運転が求められている.<br>近年,微粉炭燃焼ボイラにおいて,溝状腐食による伝熱管の減肉が顕在化している.溝状腐食は,バーナーゾーンやその近傍,熱負荷の高い部位に発生し,その発生原因は,H<sub>2</sub>,H<sub>2</sub>Sが混在する低O<sub>2</sub>雰囲気下で火炉側管表面に生じる繰り返し熱応力(スラグの付着脱落による局部的な管表面温度変化,デスラッガ作動中や運転中の管表面温度変化など)に起因する腐食生成物層のき裂発生等が原因であると考えられる.その対応策として,ボイラ伝熱管表面への溶射は有効である.本報では,Cr<sub>3</sub>C<sub>2</sub>-NiCr溶射皮膜を高速フレーム溶射(HVOF)と大気プラズマ溶射(APS)によって作製した.溶射皮膜の特性は,密着力,高温硬さ,摺動摩耗試験,高温エロージョン試験および高温腐食試験などによって評価した.評価結果を基に,実験室で石炭燃焼ボイラに適用するための溶射皮膜における評価方法を提案した.
著者
京 将司 中森 正治 黒川 一哉 成田 敏夫
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
材料と環境 : zairyo-to-kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.456-463, 2010-12-15
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

近年,大容量化する微粉炭燃焼ボイラにおいては,より一層の環境対策が求められ,NOx発生量を抑制する設備対策ならびに運用面での低酸素燃焼運転がなされている.その結果,燃焼室では,酸素不足による強い還元性雰囲気となり,H<sub>2</sub>Sによる高温硫化腐食が顕在化している.それに加え,スラグの除去を目的とするデスラッガからの蒸気噴射の影響により摩耗損傷を与え,それらが複合的に作用して損傷が加速する事象が認められた.調査したボイラでの損傷挙動は,ボイラ蒸発管の表面に生成した腐食生成物は,酸化物と硫化物の混在した層と溝状腐食が認められた.これらは,ボイラ燃焼過程における燃焼状態の変化で,わずかな酸素および硫黄分圧の変化により酸化物および硫化物が生成する可能性が熱力学的にFe-S-O系平衡状態図より示唆できた.また,ボイラの運転に伴う,繰り返し熱応力とデスラッガ蒸気の間欠噴射によるメタル/蒸気の温度差により,スケール層が局部的に冷却され,圧縮応力によるクラックが生じ,スケール層の剥離ならびにガス通路が形成される.そのため,基材への腐食性ガスの侵入が容易になり,腐食を進行させ,局部的に加速したものと推定した.