著者
飯干 泰彦 児玉 匡 位藤 俊一 水野 均 山村 憲幸 西谷 暁子 藤井 仁 人羅 俊貴 藤井 亮知 伊豆蔵 正明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.1032-1036, 2013-08-20 (Released:2013-08-20)
参考文献数
34

甲状舌管囊胞に合併する小児期の癌は稀であり,確立した治療方針も明らかではない.乳頭癌を合併した甲状舌管囊胞の13 歳男児例を経験したので報告する.主訴は下顎部腫瘤.下顎正中に舌骨に接する弾性硬の腫瘤を触知した.超音波検査上,舌骨より正中頤に至り,内部に高エコー部の存在する30×17 mm の囊胞状腫瘤を認めた.甲状舌管囊胞の診断でSistrunk 法により囊胞摘出術を施行した.病理所見上,囊胞壁の乳頭癌と筋層への浸潤を認めた.術後に行なった超音波検査では,甲状腺の病巣やリンパ節転移を認めなかった.浸潤は舌骨に接する筋に限局し,癌は舌骨切除で摘出された可能性を考え,現在厳重なフォローアップ中である.術後経過良好で,2 年4 か月間再発を認めない.超音波上囊胞内に高エコー部のある甲状舌管囊胞においては,癌の存在を考慮し,慎重な診断,治療が必要である.