著者
藤井 仁奈
出版者
文教大学大学院言語文化研究科付属言語文化研究所
雑誌
言語と文化 = Language and Culture (ISSN:09147977)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.269-284, 2012-03-01

Miyoji is a main character of Tempo 12nen no Shakespeare. He is a man of the humblest birth in Edo period; he is a cunning schemer who wants to be in the ruling classes by using words. He idntifies himself as an expert wordsman just like his master who was an expert swordsman. He commits crimes just like as Macbeth: an old which woman makes a prediction about him, which controls him completely. She also tells him that his taboo is one pair of twin women. However, he fervently feels a secret love for them and at last he rapes and kills one and he married the other after killing her husband. This violation of his taboo collapses his identity: he loses his ability to use words and takes his own llife. He can't use any trick or scheme with his wife. He is a defective schemer. This kind of absurdity, which Inoue wanted to write in this play, is put together into Miyoji. I hope to analyse Miyoji's identity as an expert wordsman while showing his contradiction and insanity and suggest the absurdity coming from Inoue's satire on this modern world.
著者
飯干 泰彦 児玉 匡 位藤 俊一 水野 均 山村 憲幸 西谷 暁子 藤井 仁 人羅 俊貴 藤井 亮知 伊豆蔵 正明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.1032-1036, 2013-08-20 (Released:2013-08-20)
参考文献数
34

甲状舌管囊胞に合併する小児期の癌は稀であり,確立した治療方針も明らかではない.乳頭癌を合併した甲状舌管囊胞の13 歳男児例を経験したので報告する.主訴は下顎部腫瘤.下顎正中に舌骨に接する弾性硬の腫瘤を触知した.超音波検査上,舌骨より正中頤に至り,内部に高エコー部の存在する30×17 mm の囊胞状腫瘤を認めた.甲状舌管囊胞の診断でSistrunk 法により囊胞摘出術を施行した.病理所見上,囊胞壁の乳頭癌と筋層への浸潤を認めた.術後に行なった超音波検査では,甲状腺の病巣やリンパ節転移を認めなかった.浸潤は舌骨に接する筋に限局し,癌は舌骨切除で摘出された可能性を考え,現在厳重なフォローアップ中である.術後経過良好で,2 年4 か月間再発を認めない.超音波上囊胞内に高エコー部のある甲状舌管囊胞においては,癌の存在を考慮し,慎重な診断,治療が必要である.
著者
藤井 仁奈
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Language and Literature (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-22, 2012-09-01

井上ひさしは、「シェイクスピア大全集」を謳い文句にした劇作『天保十二年のシェイクスピア』へ、シェイクスピア作品の筋を巧みに持ち込んでいる。私は、『井上ひさし・追悼プロジェクト『天保十二年のシェイクスピア』研究』に参加し、その際、論文「『天保十二年のシェイクスピア』論―佐渡の三世次について―」のなかで、佐渡の三世次が作品全体の不条理さに関わり、三世次さえも不条理に破滅するという点を明らかにし、井上がこの作品で、「人が何の理由もなく次々に死んでいかなくてはならぬこのご時勢」において、「ばたばたと無造作に命を落とす」という「不条理」を強調して描こうとしたこと、そしてその不条理が不完全な「策略家」である三世次に集約されていることを指摘した。だが、『ハムレット』については、きじるしの王次の「きじるし」が三世次によって引き起こされ、『ハムレット』の筋を主軸にする登場人物たちの死が三世次に起因することを指摘するにとどめた。三世次が井上自身を投影した登場人物であり、不完全な策略家であることの指摘を目的としていたためだ。しかし、三世次が『ハムレット』の筋にからむことによって、『ハムレット』におけるオフィーリアの役割を担うお冬が、王次の言動によって狂気に陥り、死を遂げるという結末は、いっそう不条理なものになるという点も論証したかった。あくまでも「オフェーリアはお冬に[…]転生している」ようにしか見えないお冬も、井上によって巧妙に作り変えられている。お冬の死に至る過程には、一見三世次が無関係のように思われる。しかし、三世次こそがお冬に不条理をもたらすのであり、その不条理は『ハムレット』におけるオフィーリアの悲劇とは異質のものなのだ。お冬の不条理さを先の論文で書き切れなかったことは非常に心残りであり、私個人の「井上ひさし追悼研究」はお冬を論証することで完結させたいと思う。したがって、本論では『ハムレット』におけるオフィーリアと『天保十二年のシェイクスピア』におけるお冬を比較考察し、お冬の狂気の原因が、三世次のことばによるものであることを明らかにすると同時に、お冬について、井上がオフィーリアをパロディ化する巧みさを指摘したい。
著者
正林 大希 飯干 泰彦 西谷 暁子 宇治 公美子 山村 憲幸 藤井 仁 今里 光伸 金 浩敏 位藤 俊一 伊豆蔵 正明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1168-1172, 2015-12-20 (Released:2015-12-20)
参考文献数
20

小児の急性胃腸炎に伴う十二指腸穿孔は稀であり,病態も明らかではない.当疾患の経過中に低リン血症を呈した幼児例を経験した.症例は3 歳男児.発熱と嘔吐に続く血性嘔吐で来院した.超音波,CT 検査にて消化管穿孔が疑われて開腹し,十二指腸球部に穿孔を認め,大網充填術を施行した.術前5 日間嘔吐を繰り返して経口摂取不良であったため,術後末梢静脈栄養を開始した.胃腸炎の遷延があり,脱水,電解質異常をきたし,血清リン濃度が2.1 mg/dl と幼児としては低値となった.リン酸ナトリウム投与により正常化した.嘔吐の遷延する急性胃腸炎の幼児で,経口摂取不良が続く場合,リンの計測が重要である.また,リンの基準値は小児では高く,留意すべきである.小児の胃腸炎の多くは重篤な合併症を起こさずに回復するが,低栄養,脱水,リンを含めた電解質異常や十二指腸穿孔を引き起こし,生命にかかわる場合もあり注意を要する.
著者
藤井 仁美 森 貴幸 古川 綾 井上 岳 厚田 幸一郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.136, no.2, pp.259-263, 2016 (Released:2016-02-01)
参考文献数
5

For prevention of the aggravation of diabetic nephropathy, a treatment method that combines self-care with medical guidance is becoming increasingly important, leading to the development of programs for lifestyle modification for the patients. To assess the effectiveness of such programs, we have conducted a feasibility study of a patient self-care support program with medical collaboration by registered pharmacists in community pharmacies involving patients with diabetic nephropathy who are under treatment at medical institutions, including our hospital. This study evaluated the two primary measurements, which are A) the actual execution rate versus planned programs, and B) the patient satisfaction rate. In addition, the achievement rate of behavioral objectives, satisfaction rate of diabetes treatment, degree of concerns (Diabetes Treatment Satisfaction Questionnaire; DTSQ, Problem Areas in Diabetes; PAID) and other physiological indicators have been evaluated. With the approval of the IRB at Kitasato University, sixteen out of 18 patients have continued to participate in the support program, and the study has shown high patient satisfaction with pharmacist coaching support. Patients have gained interest in managing their lifestyles, thereby increasing self-efficacy. Also, information shared between the pharmacists and the physicians has clarified patients' issues and concerns pertaining to their lifestyles, which were effectively utilized in the coaching program. Through meetings with pharmacists, patients have been reassured of the expertise of the pharmacist and thus gained mutual trust, which leads to the patient's behavioral change. We believe that the collaboration of patients, pharmacists and physicians has resulted in effective team-based patient care.
著者
藤井 仁奈
出版者
文教大学
雑誌
言語文化研究科紀要 = Bulletin of The Bunkyo University Graduate School of Language and Culture (ISSN:21892709)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.69-92, 2016-03-16

In the famous novel called “Bruges-la-Morte” by Georges Rodenbach, the name of Ophelia is used for the depiction of the city of Bruges. It is described as a dead woman, just like the wife of the main character Hugues. Ophelia, the dead wife and the city Bruges are all described as dead women. On the other hand, Hugues is alive of course, and the contrast is quite clear.◆However, in the essay called “Bruges”,which was written before the novel, we cannot regard Ophelia as the same dead woman in the novel. In the essay, Rodenbach describes Bruges as the dethroned queen who is dying, but not completely dead. When the narrator is surrounded by silence, he imagines that he can hear the voices of the things around him, which say he cannot live any longer. A visage of Ophelia appears in this imagination. She is the person whose soul is salvaged by the water from her agony.◆These descriptions of Ophelia are in contrast with each other. In the novel, Hugues realizes he is alive in the dead city when he thinks of his dead wife just as Ophelia. In the essay, the narrator perceives Ophelia’s soul in the dying city when he has a consciousness of the order of the things, which means all things are going to be dead and mortal. Both of them are described with the scenery of the water of the canals, but they are quite different.◆In this paper, I want to analyze the essay in detail and compare it with the description of Ophelia of the novel.
著者
吉岡 京子 藤井 仁 塩見 美抄 片山 貴文 細谷 紀子 真山 達志
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.876-887, 2021-12-15 (Released:2021-12-24)
参考文献数
39

目的 本研究の目的は,保健師が策定に参画した保健医療福祉計画(以下,計画とする。)の実行段階における住民との協働に関連する要因を解明し,地域全体の健康レベルの向上に貢献できる保健活動への示唆を得ることである。方法 研究の概念枠組みとしてPlan-Do-Check-Act(以下,PDCAとする。)サイクルを用いた。本調査で焦点を当てた計画の実行段階は「Do」に相当するため,調査項目は「Plan」の段階の内容を中心に構成し,計画の実行段階における住民との協働をどの程度取り入れたか,回答者の属性,計画策定への参画状況,組織要因,計画策定の際に用いた方策を含めた。調査対象者は,地方自治体に勤務する常勤保健師のうち,保健師活動指針が発出された2013年以降に計画策定に参画した経験を有する者とした。協力意思を示した220地域(36都道府県,41保健所設置市,153市町村)に2,185人分の調査票を2019年10月~11月に郵送した。二項ロジスティック回帰分析により,住民との協働を取り入れたことと独立変数との関連について検討した。結果 1,281人から回答を得た(回収率58.6%)。2013年以降に計画策定の経験がなかった203人と欠損値の多かった50人を除く1,028人について分析した(有効回答率47.0%)。計画の実行段階で住民との協働を「全く取り入れなかった」と回答した者は125人(12.2%),「あまり取り入れなかった」者は293人(28.5%),「少し取り入れた」者は482人(46.9%),「とても取り入れた」者は128人(12.4%)だった。二項ロジスティック回帰分析の結果,係長級以上の職位に就いていること,健康増進計画の策定への参画,住民へのアンケート調査やグループワークの実施,ワーキンググループや計画策定委員会の委員への住民の参加,すでに発表されている研究成果の活用,ターゲット集団の設定および計画実施の進捗管理の実施が,住民との協働を取り入れたことと有意に関連していた。結論 保健師が,計画の実行段階における住民との協働を進めていくためには,地域の健康・生活課題解決に向けて住民の声やエビデンスに基づく計画を策定し,確実に実行されるように進捗管理を行う必要性が示唆された。
著者
渡邊 祐子 藤井 仁美 宮川 高一 福山 次郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.341-346, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2

本邦での高浸透圧高血糖症候群(HHS)と糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の合併例の報告は少ない.われわれの経験した5症例は,平均年齢43.6歳,随時血糖1,800 mg/dl, HbA1c 13.4%, 血清浸透圧419 mOsm/kgH2O, 補正後血清ナトリウム値164 mEq/lであったが,意識障害の程度は比較的軽く,全例pH 7.00∼7.24の中等度DKAを合併していた.経過中,横紋筋融解症,stress-induced cardiomyopathy, 急性腎不全,腎膿瘍,肺梗塞症,カンジダ症など多彩な合併症を発症し,全例ICU管理を要したが後遺症なく退院した.退院時治療はインスリン1例,経口薬2例であった.発症誘因は,感冒または清涼飲料水多飲であった.2例は統合失調症であり,糖尿病の既往のある3例中2例が放置例であった.HHSとDKAの合併例は,発症年齢が比較的若く生命予後は良好であるが,多岐にわたる重篤な全身合併症が出現し,多くの人的物的医療資源を要する.若年肥満者や清涼飲料水消費の増加に伴い今後増加が予測され,高リスク群への介入および治療中断予防が重要と考える.
著者
藤井 仁美
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.101-104, 2017-09-25 (Released:2018-09-25)
参考文献数
8
著者
木村 聡元 大塚 幸喜 八重樫 瑞典 箱崎 将規 松尾 鉄平 藤井 仁志 佐藤 慧 高清水 清治 畑中 智貴 佐々木 章
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.952-957, 2017-08-20

【ポイント】◆現在漢方薬は,西洋医学的解析が進み,少しずつエビデンスが蓄積され,使用しやすくなってきた.◆大腸癌における漢方薬は,おもに周術期の合併症予防と抗癌剤治療の有害事象対策に用いられることが多い.◆漢方薬は,その特性を理解し利用することで,今後も癌治療における重要な役割を担っていくものと考えている.