著者
仁尾 かおり
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.43-50, 2011-11-20

ダウン症児の母親の背景要因と自立に関する認識によるレジリエンスの差異を明らかにすることを目的とした。自立に対する認識尺度は、【自立に対する望み】3因子、【自立へのかかわり】3因子で構成されている。S-H式レジリエンス検査用紙は、<ソーシャルサポート>、<自己効力感>、<社会性>の3因子で構成されている。両尺度共に信頼性・妥当性が確認されている。研究参加者は、12〜22歳のダウン症児の母親297名である。調査は無記名、自記式郵送調査とし、患者会を通して調査用紙の配付・回収を行った。母親の背景要因では、有職者がレジリエンス合計得点、レジリエンスのうち<自己効力感>因子の得点が高かった。自立に関する認識では、【自立に対する望み】、【自立へのかかわり】高得点群がレジリエンス全て、および一部因子の得点が高く、<ソーシャルサポート>において差が顕著であった。以上のことから、母親が働くことはレジリエンスを高めること、自立に対する望みを高くもち自立の可能性を広げる取り組みを積極的に行うためには、周囲の支援が不可欠であると考えられた。
著者
仁尾 かおり 石河 真紀 藤澤 盛樹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.543-552, 2014-09-01 (Released:2014-10-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1

背景:先天性心疾患をもつ学童期から青年期の患者の病気体験に関連したレジリエンスの構造を明らかにし,“病気体験に関連したレジリエンス”アセスメントツールを作成する.方法:学童期から青年期の患者を対象に,“病気体験に関連したレジリエンス”を調査し,因子分析により構造を明らかにした.また,背景要因による特徴を分析した.結果:有効回答178名,年齢10〜32歳(平均17.2±5.8歳)であった.因子分析の結果,「自分の病気を理解できる」,「前向きに考え行動する」,「無理をしないで生活する」の3つが明らかになった.背景要因による比較では,年齢の高い人が「自分の病気を理解できる」が高得点であり,重症度の高い人が「前向きに考え行動する」が低得点であった.「無理をしないで生活する」では,背景要因による差は認めなかった.考察:発達段階の早い段階から病気の理解を促す支援をすること,重症度が高い人の「前向きに考え行動する」ことへの支援,また,先天性心疾患をもつ人に特有な要素として見いだされた「無理をしないで生活する」ことを支えることが重要である.
著者
仁尾 かおり
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-8, 2008-03-20
被引用文献数
2

先天性心疾患をもちキャリーオーバーする中学生・高校生の病気認知の構造および背景要因による差異を明らかにすることを目的とし、先行研究の結果より独自に作成した調査票を用いて調査を行った。因子分析の結果、病気認知は、『病気による制限・制約に対するつらい思い』『病気をもつ自分を前向きに受けとめようとする思い』『病気をもつ自分を理解してほしい思い』『病状や死に対する不安』『病気を知られたくない思い』『身体を守りたい思い』の6因子により構成されていた。背景要因では、重症度の高い人が、『病気による制限・制約に対するつらい思い』『病状や死に対する不安』が高く、『病気をもつ自分を理解してほしい思い』『身体を守りたい思い』では、重症度の高い人に加えて高校生が高得点であった。彼らの相反する認知による葛藤を理解し、肯定的な認知を高め、否定的な認知を低減する支援が必要であることが示唆され、具体的な支援を検討した。
著者
仁尾 かおり 石河 真紀
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.25-33, 2013
参考文献数
19

本研究は、人の内面の強さを示すレジリエンスに着目し、先天性心疾患をもつ思春期・青年期の人のレジリエンス構成要素を明らかにすることを目的とした。研究参加者は16名(平均18.2歳)で、データ収集は4グループ(1グループあたり3〜5名)のフォーカスグループインタビューにより行った。データは質的に分析した結果、212コード、45サブカテゴリー、および「将来に希望をもつ」、「自分で病気の管理ができる」など10カテゴリーが抽出された。そして、カテゴリーをGrotbergの考え方により分類した結果、『I AM』5カテゴリー、『I HAVE』3カテゴリー、『I CAN』2カテゴリーとなった。その結果、自分の病気を受容し、頑張ることができる内面の強さ、どの発達段階においても成長のために他者からサポートを得ること、友達や家族に支えられていると実感できること、発達段階により具体的な内容は変わるとしても、発達段階に応じて自分の病気を理解して自分で管理できることが重要であることが示唆された。