著者
仁木 賢治 新谷 公朗 糠野 亜紀 金田 重郎 芳賀 博英
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.601-614, 2009-02-15

保育所では,子どもの発達状況を記録する「発達記録」の作成・保存が,厚生労働省の指導によって義務付けられている.発達記録については,作成・保存するための発達記録システムが数社から市販されている.しかし,既存の発達記録システムでは,子ども1人ひとりの発達傾向を表示するグラフ機能は持っているが,クラス全体の保育傾向を示す機能は持っていない.そこで,本論文では,保育者の保育傾向をグラフによって読み取ることのできる,発達記録システムを提案する.具体的には,ヴィゴツキーの発達の最近接領域理論を観察項目スコアの付与方法に適用する.これによって,発達記録を作成する際の項目間のスコア付与基準のバラツキを排除する.次に,発達記録データを主成分分析し,その第1主成分を保育者にフィードバックする.プロトタイプシステムを用いて評価データを取得し,その第1主成分を保育者に提示するとともに,グラウンデッド・セオリ・アプローチで分析した.その結果,第1主成分には保育者の視点が反映されることを確認できた.