著者
仁木 賢治 新谷 公朗 糠野 亜紀 金田 重郎 芳賀 博英
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.601-614, 2009-02-15

保育所では,子どもの発達状況を記録する「発達記録」の作成・保存が,厚生労働省の指導によって義務付けられている.発達記録については,作成・保存するための発達記録システムが数社から市販されている.しかし,既存の発達記録システムでは,子ども1人ひとりの発達傾向を表示するグラフ機能は持っているが,クラス全体の保育傾向を示す機能は持っていない.そこで,本論文では,保育者の保育傾向をグラフによって読み取ることのできる,発達記録システムを提案する.具体的には,ヴィゴツキーの発達の最近接領域理論を観察項目スコアの付与方法に適用する.これによって,発達記録を作成する際の項目間のスコア付与基準のバラツキを排除する.次に,発達記録データを主成分分析し,その第1主成分を保育者にフィードバックする.プロトタイプシステムを用いて評価データを取得し,その第1主成分を保育者に提示するとともに,グラウンデッド・セオリ・アプローチで分析した.その結果,第1主成分には保育者の視点が反映されることを確認できた.
著者
高橋 一夫 平野 真紀 糠野 亜紀 新谷 公朗 金田 重郎 白井 由希子
出版者
常磐会短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

保育現場では子ども達の表現活動が重視されている。その表現活動には言語表現の領域があり、日々の保育においても絵本の読み聞かせなどが豊かに実践されている。ところが、絵本などを用いずに話す「素話(すばなし)」は、保育の場において衰退しつつある。そこで本研究では、言語表現活動として重視されるべき「素話」が、なぜ保育現場で衰退しているのかを実証的に分析し、「素話」の実践を支援する方策を模索した。その結果、「素話」では絵本の読み聞かせと異なり、子ども達が想像力を働かせていることが明らかになった。そして、この「素話」に特徴的な効果を理解することが、豊かな実践に必要であることが分かった。
著者
金田 重郎 上坂 和也 今城 和宏 三本 貴裕 新谷 公朗 糠野 亜紀
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.2, pp.1-8, 2010-05-15

物語を絵本などの道具を用いずに,語りのみで子どもに聞かせる 「素話」 は,子どもの想像力・集中力向上の効果が高いとされる.反面,演じる保育者の負担は大きく,保育現場でも実施頻度は多くない.本稿では,素話における保育者の負担を軽くするため,子ども達の反応をフィードバックすることを最終的なターゲットとして,ステレオカメラと加速度センサを用いた読み聞かせ分析システムを提案する.ステレオカメラは子ども達全体や保育者を撮影する位置に設置し,それぞれの子どもには加速度センサを装着してもらった.幼稚園での読み聞かせ実演に基づく分析の結果,1) 集中して聞いている子どもとそうでない子どもを識別可能,2) 素話全体の盛り上がりの分析等に 「笑い」 分析が有効,3) 笑いの集団内での伝播現象,等を確認できた.Storytelling increases children's imagination and their ability to think. However, storytelling requires a certain amount of special skill for childminders or kindergarten teachers. If teachers had a support tool to assist storytelling, they might use storytelling more often. To develop such a tool, this paper proposes a new system to detect the concentration of each child during storytelling. The system employs two types of sensors: 3D stereo video cameras set in the room and 3-axis accelerometers attached to the waist of each child. The video signal is processed by OKAO Vision (OMRON Corporation). The unification of data from the two sensors enables us to detect the concentration level of each child and the propagation pattern of laughing among the children.