著者
仁科 浩美 ニシナ ヒロミ NISHINA Hiromi
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 教育科学 = Bulletin of Yamagata University. Educational Science (ISSN:05134668)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.75-92, 2013-02-15

本稿は、口頭発表時における質疑応答に対する理工系外国人留学生の意識と態度について、日本人学生との比較を通し、PAC(Personal Attitude Construct 個人別態度)分析により、「個」の特徴について質的に分析・検討したものである。その結果、同じ群である外国人留学生においても、意識・態度には多様性が見られ、日本語に関わる要因と専門の内容に関わる要因とを日本滞在の時間経過とともに段階的に切り離して捉えている事例や、回答の誤りに気がついたり、適切な回答ができないと判断すると、反論や質問の複雑化を恐れ、対話を「あきらめ」、切り上げる態度を示す事例などが見られた。日本人学生との比較においては、教員の存在に発言を遠慮・躊躇したりする点と、わかりやすい説明を行なうことの難しさを挙げた点で共通するものがあった。他方、留学生独自の特徴としては、質疑応答の受容・産出に対する一定の日本語力や、動転に伴う日本語の忘却や方言の聞き取りへの対応力等、日本語に関して意識・態度が示されている点と、研究に対する社会的関与への意識が特に見られない点が挙げられた。