著者
佐藤 恵実子 今山 修平 佐藤 裕
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.613-621, 1985-08-01 (Released:2012-03-15)
参考文献数
24

71才男子。多彩な皮膚症状を呈し, 心不全で急死した原発性全身性アミロイドーシスの1例を報告した。剖検により, 全身の諸臓器にアミロイドの沈着が認められた。皮疹部の光顕所見では, ダイロン, コンゴ·レツド染色で, アミロイドの沈着を真皮に認め, 血管周囲にもアミロイドの沈着が認められた。電顕所見では, 表皮基底膜直下から, 真皮にかけてアミロイド塊が認められ, その間を線維芽細胞が突起を伸ばしていた。一部, 線維芽細胞の突起の間に, 正常なコラーゲン線維が残存しているのが観察された。また, 血管内皮細胞の基底膜の間質側に密接して, アミロイド細線維が認められており, これら光顕·電顕所見から, 血管内皮細胞を透過したアミロイドの前駆蛋白が, 何らかの機序でアミロイド細線維となり, 組織間液の流れにのつて拡散し, 線維芽細胞, 最終的には表皮基底膜にさえぎられて蓄積していつたものと考えた。
著者
城戸 真希子 河崎 玲子 細川 知聡 行徳 隆裕 今山 修平
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.12, pp.1911-1916, 2004

病室の滅菌にはUVC領域の波長254 nmを放射する紫外線殺菌灯(クリーンライザー<sup>®</sup>)が広く用いられているが,その危険性のため本装置は無人状態下の使用が原則である.このたび病室に患者と家族が居る病室で本装置が約30分間作動する事態が発生した.そのうちの一人は暴露側の眼の刺激感と頬部のひりつき感を訴え,以降次第に頬の紅斑は鱗屑を形成し脱落した.同じ装置により照射実験を行ったところ,UVC照射24時間後すでに走査電顕的に角層細胞表面には蛋白変性によると思われる陥凹が生じており,経過と共にケラチンによる紋様は著しく不規則になって脱落した.UVCはDNAに吸収されるため,従来,UVC照射により最初は有核細胞が障害を受け,その変化が次第に角層におよぶとされてきたが,24時間後には既に角層細胞に変化がみられたことから,UVCはケラチンなどの細胞質内蛋白にも直接に影響を及ぼすものと考えた.
著者
今山 修平
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.2069-2075, 2016

<p>1.生涯の全経過を通して,ヒト皮膚には(歩けば体重が足底に,話せば表情筋による内からの変形が顔に,という具合に)生命活動に伴う負荷がかかり続ける.負荷を受けた皮膚は肥厚したり硬化して負荷に対応するから,しだいに負荷は薄くて軟らかいままの部分をたどるように変形させて吸収される.これがシワである.</p><p>2.小ジワは,表皮と真皮乳頭層までの不均一化による表在性の折れ線(図2)である.真皮乳頭層は表皮プロパーの結合組織(→本文)であるから(外用・ピーリングなどの)無侵襲性の表皮修飾により乳頭層も一括して修飾されて小ジワも消える.</p><p>3.大ジワは,深達性の,真皮網状層の中まで表皮が折れ込んだ線(図3)である.不均一になった真皮網状層を(外科的切除・熱変性・充填剤・筋弛緩などの)侵襲性に修飾することで消去する.</p><p>4.露光によるシワは,真皮網状層に板状に沈着した弾性線維成分のために,真皮が(厚紙を折るように)直線的に折れた線(図4)である.光熱暴露を減らすことで予防できる.</p><p>5.誕生と共に発現し,生涯を通してほぼ変化しない均等な分割模様がキメ(→本文)であり,シワとは異なる.とはいえキメは表皮と乳頭層までの(小ジワと同じ深さの)凹凸であるから,個体が置かれた自然・社会環境あるいは疾患により変化する.この様子は苔癬局面ではキメが直線状になることでも経験される.</p>