著者
今岡 亮 藤井 学 吉村 千洋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_525-III_533, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
29
被引用文献数
1

植物プランクトンへの鉄供給プロセスの観点から,本研究では腐植物質の化学的性質が鉄との錯形成に及ぼす影響について調べた.pH 8において競合リガンド法により,様々な起源をもつ標準腐植物質と鉄の錯形成を調べ,錯化容量と条件付き安定度定数について多様な値が得られた.これら錯形成パラメータと元素分析・13C-NMR・酸塩基滴定から得られた腐植物質の構成元素比・炭素種割合・官能基量との関係を調べた結果,芳香族炭素割合と錯化容量には有意な正の相関がみられ,芳香族領域にある官能基が主な鉄結合部位であることが推測された.さらに,安定度定数は硫黄や窒素含有量と弱いが有意な正の相関があり,スルホン基やアミノ基を含む腐植物質は鉄と高い親和性を有する可能性が示唆された.