著者
夏池 真史 菊地 哲郎 Lee Ying Ping 伊藤 紘晃 藤井 学 吉村 千洋 渡部 徹
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.197-210, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
144
被引用文献数
12

食物連鎖の根底を担う藻類を含め生物にとって不可欠な微量元素である鉄は, 陸域から河川や地下水を経て下流に移行し, 沿岸域での基礎生産に貢献していると考えられている。本総説では, このような流域における鉄の生物地球化学動態について既往研究を整理した。鉄の化学的特性として, 中性pHでは無機第二鉄の溶解度はサブナノモーラーであること, 溶存有機物が鉄の溶解度を上昇させること, 種々の熱力学・光化学的反応が鉄の生物利用性と密接に関係することが明らかにされている。また, 微細藻類による鉄の生物利用性は鉄の化学種に強く依存するため, 陸域由来鉄が沿岸域の基礎生産に及ぼす影響を適切に評価するには, 鉄の化学種に着目して研究を進めていく必要がある。森・川・海のつながりにおける鉄と有機物の動態研究では, 陸での有機鉄の溶出から沿岸域生態系への移行までをカバーした総合的な研究が重要と考えられる。
著者
今岡 亮 藤井 学 吉村 千洋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_525-III_533, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
29
被引用文献数
1

植物プランクトンへの鉄供給プロセスの観点から,本研究では腐植物質の化学的性質が鉄との錯形成に及ぼす影響について調べた.pH 8において競合リガンド法により,様々な起源をもつ標準腐植物質と鉄の錯形成を調べ,錯化容量と条件付き安定度定数について多様な値が得られた.これら錯形成パラメータと元素分析・13C-NMR・酸塩基滴定から得られた腐植物質の構成元素比・炭素種割合・官能基量との関係を調べた結果,芳香族炭素割合と錯化容量には有意な正の相関がみられ,芳香族領域にある官能基が主な鉄結合部位であることが推測された.さらに,安定度定数は硫黄や窒素含有量と弱いが有意な正の相関があり,スルホン基やアミノ基を含む腐植物質は鉄と高い親和性を有する可能性が示唆された.
著者
大村 達夫 藤井 学 三浦 尚之 渡辺 幸三 佐野 大輔
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は、沿岸域のプランクトンが環境からカキにノロウイルスを運んでいるという仮説を立てて、その検証を行った。カキを養殖している松島湾内の複数地点において動植物プランクトンとカキを採取した。動物プランクトンと植物プランクトンを顕微鏡下の形態観察に基づいてソーティングし、それぞれからノロウイルス遺伝子を検出および定量した結果、一部サンプルからノロウイルスが高い濃度で検出された。動物プランクトンの個体数の割合が高い地点のサンプルほど、ノロウイルス濃度が低下していた。また、カキ中腸線のDNAメタバーコーディング解析を行い、カキが動物および植物プランクトンの双方を捕食していることも確認された。