著者
近藤 雅臣 今川 正良 田窪 芳博 西原 力
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究ではBacillus megaterium芽胞殻外層の主成分, ガラクトサミンー6-リン酸(GalN-6-P)多糖と蛋白質について, 外層の形態形成過程での生合成・沈着の両面から検討した. 多糖生合成に関与する酵素, UDP-GlcNAc-4-epimerase(GEP)の合成時期を, 免疫学的方法により調べたところ, T6付近よりその合成が始まりT10でほぼ一定になることが分かった. 芽胞形成後期の中間代謝物の一つがFAB-MSスペクトル, 13C-NMPスペクトルよりUDP-GalNと同定された. 脱アセチル化酵素UDP-GalNAc-deacetylase(GDA)活性はGEPの活性発現時期より2時間遅れてT8より現れた. 外層に存在する48K, 36K, および22K daltonsの蛋白質(P48,P36,P22)のうち, P48とP36は主にイオン結合により, P22は強い疎水結合により芽胞上に沈着していると考えられる. また芽胞表層蛋白質の特異抗体を用いて芽胞表層蛋白について調べたとこたろP36が最表層にあることが, 一方P48はプロテアーゼに対する挙動から外層内部に存在すると考えられた. これらの蛋白質を欠損している外層欠損変異株MAEO5株の解析より, この株は母細胞原形質中ではP48のみが生合成されておらずP36, P22は生合成されていること, P36およびP22は前駆芽胞上には沈着しているが, 母細胞の溶解に伴って前駆芽胞上より消失することが明らかとなった. 蛋白質を消失させる因子は, 培養液の上清に認められ, プロテアーゼ様酵素と考えられる. 従ってP36, P22の前駆芽胞上への沈着にP48およびGalN-6-P糖鎖は必要ではなく, 前駆芽胞上の蛋白質の保持にGalN-6-P糖鎖が関与していることが推察された.トランスポゾンの挿入変異により得られた外層欠損変異株の解析結果より, P48遺伝子の発現とGEP, GDA両活性の発現は同一の制御を受けているものと考えられた.