著者
川崎 近太郎 近藤 雅臣 永納 秀男 永山 富雄
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.241-247, 1968-06-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

市販ねり製品, めん製品に高濃度の過酸化水素が残留するものがかなりあることが判明した. これらの食品に添加された過酸化水素は熱あるいはそしゃくに対してもかなり安定であることから食品中の過酸化水素が生体内に摂取されることが予想された. ラットの発育におよぼす過酸化水素の影響を21日間連続直接投与により検討した結果0.6mg/100gでは体重増加, 臓器重量にほとんど影響が認められなかった. 大腸菌, ブドウ球菌, 腸炎ビブリオに対する殺菌効果を検討した結果, いずれの菌種にも高度の殺菌性を示したが, とくに腸炎ビブリオには強力な殺菌性を示した.
著者
川崎 近太郎 永納 秀男 飯尾 利弘 近藤 雅臣
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.155-160, 1970-06-05 (Released:2010-03-25)
参考文献数
21
被引用文献数
6 9

過酸化水素の細菌菌体内酵素におよぼす影響を大腸菌および腸炎ビブリオを用いて検討した. 過酸化水素処理菌体の各種酵素活性は低下し, とくにAldolaseおよびAconitate hydrataseの活性が強く阻害されていた. その活性阻害度は殺菌効果と同様に過酸化水素濃度のみでなく菌体量にも関連することが明らかとなった.これらの結果から, 過酸化水素は菌体内の特定酵素を阻害するのでなく, 酵素系全般に影響を与えることが明らかとなった.また, 無細胞抽出液および粗酵素を過酸化水素処理した際, 抽出菌の種類には関係なく酵素タンパク量に対する過酸化水素量の比に比例して, 酵素阻害がおこることが観察された.過酸化水素の芽胞菌体におよぼす影響を枯草菌芽胞を用いて検討した. 枯草菌芽胞は, 400mg H2O2/mg SporeNで80°, 30分の加熱処理で完全に死滅し, その際, 多量のDPAを菌体外に流出した. また, 過酸化水素処理をすると芽胞殼成分中にシステイン酸が検出され, その内層成分に質的, かつ量的に大きな変化が認められた.
著者
近藤 雅臣 今川 正良 田窪 芳博 西原 力
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究ではBacillus megaterium芽胞殻外層の主成分, ガラクトサミンー6-リン酸(GalN-6-P)多糖と蛋白質について, 外層の形態形成過程での生合成・沈着の両面から検討した. 多糖生合成に関与する酵素, UDP-GlcNAc-4-epimerase(GEP)の合成時期を, 免疫学的方法により調べたところ, T6付近よりその合成が始まりT10でほぼ一定になることが分かった. 芽胞形成後期の中間代謝物の一つがFAB-MSスペクトル, 13C-NMPスペクトルよりUDP-GalNと同定された. 脱アセチル化酵素UDP-GalNAc-deacetylase(GDA)活性はGEPの活性発現時期より2時間遅れてT8より現れた. 外層に存在する48K, 36K, および22K daltonsの蛋白質(P48,P36,P22)のうち, P48とP36は主にイオン結合により, P22は強い疎水結合により芽胞上に沈着していると考えられる. また芽胞表層蛋白質の特異抗体を用いて芽胞表層蛋白について調べたとこたろP36が最表層にあることが, 一方P48はプロテアーゼに対する挙動から外層内部に存在すると考えられた. これらの蛋白質を欠損している外層欠損変異株MAEO5株の解析より, この株は母細胞原形質中ではP48のみが生合成されておらずP36, P22は生合成されていること, P36およびP22は前駆芽胞上には沈着しているが, 母細胞の溶解に伴って前駆芽胞上より消失することが明らかとなった. 蛋白質を消失させる因子は, 培養液の上清に認められ, プロテアーゼ様酵素と考えられる. 従ってP36, P22の前駆芽胞上への沈着にP48およびGalN-6-P糖鎖は必要ではなく, 前駆芽胞上の蛋白質の保持にGalN-6-P糖鎖が関与していることが推察された.トランスポゾンの挿入変異により得られた外層欠損変異株の解析結果より, P48遺伝子の発現とGEP, GDA両活性の発現は同一の制御を受けているものと考えられた.