著者
高島 秀之 今村 早苗
出版者
文教大学
雑誌
情報研究 (ISSN:03893367)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.111-124, 2002
被引用文献数
1

フィレンツェにあるウフィッツィ美術館は、メディチ家によって1581年に創設された現存する世界最古の美術館である。"Uffizi"・とは、イタリア語の「オフィス」であり、メディチ家の事務所を美術館にしたことからその名が由来する。ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」や「プリマヴェーラ」、レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」などイタリア・ルネサンスを代表する美術品の収蔵で名高い。その世界最古の美術館をデジタル・ミュージアム化しようとするプロジェクトが進行している。 このプロジェクトはDADDI "Digital Archive through Direct Digital Imaging"(直接デジタル撮影処理によるデジタルアーカイブ)と呼ばれ、ウフィッツィ美術館先進技術部が推進する所蔵作品の保存、修復、活用のためのプロジェクトである。 参加機関はイタリアのフィレンッェ・ピストイア、プラート地区文化遺産監督局、チェントリ力社、フィレンツェ大学電子工学部、デンマークのフェーズワン社および日本の凸版印刷社である。このDADDIプロジェクトの技術的な特徴としては1.超高精細、高細密による画像のデジタル化(最大画素数:16,000×12,000ピクセルで約8倍サイズの印刷可能)2.ヴァーチャルな画像修復の技術3.カラーマネジメント(Colour Manegement System)によるメディア間の色合わせ技術4.電子透かし技法によるコピープロテクションの研究が挙げられる。 さらに、このプロジェクトは"Uffizi Strategic Projects"にバックアップされており CNR(Consiglio Nazionale della Ricerche), CNR National Committee for Science and Technology of Cultural Heritage, フィレンツェ大学電子工学部のLCI(Laboratory Co㎜unication and Image)によって、1990年より絵画の修復に関するデジタル処理を中心とした研究が進められている。 この小論はこのDADDIのプロジェクトの概要を紹介しつつ、ミュージアムのデジタルアーカイビング化がどのような問題を解決しなければならないかを検証し、これからのミュージアム像に迫ろうとするものである。 The Uffizi Gallery established 1581, the oldest museum in the world is famous as Renaissance Art-Collection. Now in Uffizi, Digital Archive through Direct Digital Imaging (abbreviate DADDI) Project is going on. DADDI Project is collaborated with Uffizi Gallery, University of Florence, Phase One Co., Ltd., in Denmark, Centorica Co., Ltd., in Florence, Toppan Printing CO., LTD. in Japan and so on. This Project aims at Digital Image Processing for Virtual Restoration of Art-Works, Science and Technology for the safeguard of cultural heritage, Colour Certification by using the VASARI scanner, Mosaicing for High Resolution Acquisition of Paintings, Telematics networks for remote access to museums, DC.T-based Watermark Recovering Without Resorting to the Uncorrupted Original Image and so on. This report intend to introduce the DADDI Project's Experience. It may be a driving force for future digital archiving.