著者
今橋 美千代 鷲谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.131-147, 1997-01-24
被引用文献数
26

本研究では小規模な「表層土壌のまきだし」を行うことにより,河畔自然草地の植生復元に土壌シードバンクを利用する可能性を検討した.小貝川の河畔林林床と冠水草原において1992年7月末と1993年3月初めに表層土壌試料を採取し,バーミキュライトを敷いたプランター内にまき出し,出現する実生を定期的に調査した.その結果,林床の土壌からは少なくとも26種5896,草原の土壌からは41種15935の実生が得られた.その中には保護上重要な種であるミゾコウジュとタコノアシが含まれていた.まきだし時期にかかわらず主要な出現種は共通し,多くの種の実生がまきだし直後に出現した.まきだし実験で出現した主要な種はすべて土壌採取地の上部植生構成種であった.これらの結果により,「表層土壌のまきだし」が季節を問わず利用可能であり,河畔冠水草原のような自然度の高い撹乱地の植生を復元する手段として有用であることが示唆された.