著者
井藤 大樹 今田 彩乃 石田 孝信 水出 千尋 細谷 和海
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.46, pp.81-89, 2013

近畿大学農学部キャンパス内に造成された棚田ビオトープにおいて水生生物相調査を行なった。その結果,18目34科37属39種の水生動物が確認された。本調査で確認された種の中にはレッドリストおよびレッドデータブックに記載されているシマヒレヨシノボリ(環境省版:準絶滅危惧),ミナミメダカ(環境省版:絶滅危惧II類,奈良県版:希少種),ニホンアカガエル(奈良県版:絶滅危惧種),トノサマガエル(環境省版:準絶滅危惧),コオイムシ(環境省版:準絶滅危惧,奈良県版:希少種)が含まれていた。一方で,国外外来種であるアメリカザリガニとサカマキガイも確認され,早急な駆除対策が求められる。一時的水域である水田,水路での出現種数は,1年を通して水量が安定している温水路,調整池での出現種数よりも少なかった。しかし,希少種であるコオイムシは水路でのみ確認されており,生物多様性の創出には生息場所の多様性が必要であると考えられた。また,本調査地で確認された魚類の種数と両生類の種構成は平地の田んぼと異なっていた。これは,樹林帯に囲まれている棚田と用水路や河川と連絡している平地田との周辺環境の差異に影響されているものと考えられた。