著者
植松 一眞 細谷 和海 吉田 将之 海野 徹也 立原 一憲 西田 睦
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

オランダ国ライデン自然史博物館に保管されているシーボルトが採集した日本産フナのタイプ標本を現地で精査した結果、C. cuvieriはゲンゴロウブナに,C. langsdorfiiはギンブナに,C. grandculisはニゴロブナによく一致したが、キンブナに対応するタイプ標本はなかった。一方、C. buergeriのタイプシリーズにはオオキンブナとナガブナが混入している可能性が示唆された。日本各地および韓国群山市で採集したフナ59個体と7品種のキンギョを入手し、筋肉断片から抽出したミトコンドリアDNA(mtDNA)ND4/ND5領域の約3400塩基配列に基づく近隣結合法による系統樹作成、外部形態・計数形質・内部形態の計28項目の計測比較、倍数性の確認を行なった。その結果、これらは1.琵琶湖起源のゲンゴロウブナからなる集団、2.韓国・南西諸島のフナとキンギョからなる集団、3.日本主要集団からなることが遺伝学的にも形態学的にも確認された。日本産と韓国産の2倍体フナは異なる久ラスダーを形成したことから、両者には異なる学名を与えるべきと考えた。日本主要集団の2倍体個体はさらに東北亜集団(キンブナ)、中部亜集団(ナガブナとニゴロブナ)、そして南日本集団(オオキンブナ)に分けられるので、これらに与えるべき学名を新たに提案した。また、ゲンゴロウブナ集団はすべて2倍体であったが、他の2集団は、遺伝的に非常に近い2倍体と3倍体からなる集団であった。すなわち、2倍体と3倍体は各地域集団において相互に生殖交流しつつ分化したものと考えられた。キンギョは遺伝的に日本主要集団のフナとは明らかに異なり、韓国・南西諸島の集団に属するので、大陸のフナがその起源であることがあらためて確認された。フナとキンギョの行動特性(情動反応性)が明らかに異なることを示すとともに、その原因となる脳内発現遺伝子の候補を得た。
著者
北川 哲郎 森下 匠 細谷 和海
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.45, pp.129-134, 2012-03 (Released:2013-10-08)

チョウセンブナMacropodus ocellatusの繁殖生態について,屋外および飼育室における飼育試験によって調査した。産卵は,屋外,飼育室内のいずれにおいても,雌に対して雄1尾を投入した飼育容器内のみで観察された。雌は同一容器に複数尾を投入しても問題なく産卵に至った。確認された産卵数は,78-324粒であった。産卵周期を観察するため,飼育室内で産卵した雌雄の2組を飼育し続けたが,産卵後の雄は雌を激しく攻撃し,再び産卵行動をとることはなかった。受精卵は産卵後約2日で孵化し,孵化後6日目で摂餌を開始した。孵化直後の仔魚は強い浮力を有し,浮遊物の付近や飼育容器の壁面沿いに塊をなして浮遊していた。孵化直後の遊泳力は皆無であり,能動的な遊泳が観察されたのは孵化後5日目であった。
著者
北川 えみ 北川 忠生 能宗 斉正 吉谷 圭介 細谷 和海
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.146-150, 2005-03-15
被引用文献数
5 1

1988 年にオオクチバスフロリダ半島産亜種が放流された池原貯水池では,1996, 1997 年の遺伝学的調査においてフロリダ半島産亜種由来のミトコンドリア DNA(mtDNA)をもつ個体の割合は 56.8% であった。今回(2003 年)再調査を行った結果,本亜種由来の mtDNA をもつ個体は全体の 86.7% となり,前回調査より有意な増加がみとめられた。また,近畿地方の池原貯水池とは別水系の湖沼(津風呂湖,宝ヶ池,深泥池)からも本亜種由来の mtDNA をもつ個体が検出された。<br>
著者
横井 謙一 細谷 和海
出版者
日本生物地理学会
雑誌
日本生物地理学会会報 (ISSN:00678716)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.1-14, 2003 (Released:2006-06-09)
被引用文献数
1

オガサワラヨシノボリRhinogobius sp. BIは, 小笠原諸島に固有な淡水魚である. 本種は開発にともなう生息地破壊や環境変化により数を減らしつつあり, 保護が急務となっている. 生息地保全に必要となる本種の分布や生息環境を調べた結果, 父島に加えて母島での本種の生息を確認した. 本種は河川の上流域の淵に多く生息していた. 両島から得られた個体群の形態的特徴について比較したところ, 母島の個体群は胸鰭条数や背鰭前方鱗数の変異が少なく, 父島個体群にくらべ遺伝的多様性が低いことが示唆された. これらの変異は, それぞれが独自の地域個体群を形成しているものと考えられた. 本種の保護には, 生息地保全や系統保存など, 包括的な保護施策が必要と思われる.
著者
細谷 和海 足羽 寛 西野 麻知子
出版者
日本陸水学会
巻号頁・発行日
pp.97-97, 2003 (Released:2004-11-26)

一般に、淡水魚は発育・成長に伴って生息場所を変えるのが普通である。特に、河川の附属湿地である水田やワンドは、梅雨時に生産性の高い一時的水域として現れ、種々の淡水魚にとってきわめて重要な産卵場と生育場として機能する。そのため、淡水魚を保護するためには、成魚の生活場所である河川を部分的に保全するだけでは不十分で、農業用水路を介した河川と附属湿地のネットワークをつなぐ施策が望まれる。個体の移動が保証されるならば、生活環を全うできるばかりか系統の異なる集団間で交配が可能となり、遺伝的多様性を高めることにも役立つ。
著者
高久 宏佑 細谷 和海
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.13-18, 2008-03-20
被引用文献数
2

カワバタモロコは、コイ科ラスボラ亜科に属する全長3-6cmの日本固有の淡水魚で、日本に生息する淡水魚類の中ではもっとも小さいコイ科魚類とされる。静岡県瀬戸川以西の本州太平洋側、四国瀬戸内海側および九州北西部に分布し、主に平野部の農業用ため池や用水路など里山の環境に生息している。本種には繁殖期に顕著な性的二型が見られ、雌は雄より大型化し、雄は鮮やかな黄金の婚姻色を呈する。このような特徴的な形態を持つため、キンモロコ、キンターなど地方名も多く残される馴染み深い魚であり、西日本では里山のシンボルフィッシュとなっている。しかし、近年ではブラックバス・ブルーギルなど肉食性外来魚による食害や、圃場整備などの水田開発、農地の放棄による生息地の荒廃により個体数は激減し、最新の環境省版レッドリストでは絶滅危惧IB類に指定されている。希少種では、生息地や野外個体の数が制限されることが多く、保全に必要な生態情報を得るには野外調査だけでは不十分な場合が多い。飼育実験により得られた生態情報を野外へ還元することは希少種の保全において重要であり、そのためには、まず供試魚を効率的に得るための人工繁殖方法の確立が必要となる。そこで本研究では、カワバタモロコの系統保存技術向上と、生息地保全のための基礎的研究を目的として、ホルモン投与による産卵誘発方法の確立、適した初期飼育条件の選定、基礎的な成長に関する実験を行なった。
著者
片野 修 細谷 和海 井口 恵一朗 青沼 佳方
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.19-25, 2001-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
31
被引用文献数
12

Freshwater fish in rice fields near the Chikuma River, Nagano Prefecture, were investigated by visual census and net sampling. The rice fields were classified into three types. Type 1-terraced and supplied with water from an upper pond; type 2-supplied with water from drainage ditches; and type 3-supplied and drained by separate irrigation ditches. Rhinogobius sp.OR (sensu Kawanabe and Mizuno, 1989), Misgurnus anguillicaudatus and Pseudorasbora parva were abundant in type 1 fields, whereas Tribolodon hakonensis, Carassius spp., M. anguillicaudatus and Gnathopogon elongatus elongatus were recorded in type 2 fields. Only M. anguillicaudatus was found in type 3 fields. The fish abundance and diversity did not differ significantly between type 1 and 2, but was extremely poor in type 3. The recent rearrangement of rice fields from types 1 and 2 to type 3 evidently reduced fish abundance and diversity.
著者
小西 雅樹 朝井 俊亘 武内 啓明 細谷 和海
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.43, pp.105-110, 2010-03

干物から透明骨格標本を作製するため二重染色法を改良した。この方法が従来の方法と大きく異なる点は、1.塩抜きのために水戻しをすること、2.固定時のフォルマリン濃度を高くすること、3.透明化処理時の水酸化カリウム水溶液濃度を低くすることの3点である。この方法は、干物をきれいに透明化できる点で従来の方法よりも優れている。
著者
井藤 大樹 今田 彩乃 石田 孝信 水出 千尋 細谷 和海
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.46, pp.81-89, 2013

近畿大学農学部キャンパス内に造成された棚田ビオトープにおいて水生生物相調査を行なった。その結果,18目34科37属39種の水生動物が確認された。本調査で確認された種の中にはレッドリストおよびレッドデータブックに記載されているシマヒレヨシノボリ(環境省版:準絶滅危惧),ミナミメダカ(環境省版:絶滅危惧II類,奈良県版:希少種),ニホンアカガエル(奈良県版:絶滅危惧種),トノサマガエル(環境省版:準絶滅危惧),コオイムシ(環境省版:準絶滅危惧,奈良県版:希少種)が含まれていた。一方で,国外外来種であるアメリカザリガニとサカマキガイも確認され,早急な駆除対策が求められる。一時的水域である水田,水路での出現種数は,1年を通して水量が安定している温水路,調整池での出現種数よりも少なかった。しかし,希少種であるコオイムシは水路でのみ確認されており,生物多様性の創出には生息場所の多様性が必要であると考えられた。また,本調査地で確認された魚類の種数と両生類の種構成は平地の田んぼと異なっていた。これは,樹林帯に囲まれている棚田と用水路や河川と連絡している平地田との周辺環境の差異に影響されているものと考えられた。
著者
細谷 和海 西井 啓太
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.73-130, 2003-03-31

Biological articles about so-called black basses, viz., the largemouth bass Micropterus salmoides and smallmouth bass M dolomieu, were compiled in a bibliography. Black basses are typical invasive alien fishes transplanted from North America, and constitute a serious biohazard in Japanese freshwaters. The bibliography lists approximately 500 articles including scientific papers, reports, and other miscellaneous printed materials, which are classified into seventeen specifically ordered subjects both in English and Japanese. This bibliography aims to provide necessary information to the persons such as scientists, conervation officers, and volunteers concerned about the bass problem, to help them to understand it the problem objectively, and to promote the eradication or control of alien basses in Japan.記事区分:資料
著者
魚野 隆 濱口 昂雄 久米 幸毅 細谷 和海
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.109-114, 2011 (Released:2011-09-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

メダカは,遺伝的特徴によって北日本集団と南日本集団に大きく二分される。両集団は,京都府由良川水系において側所的に分布しているにもかかわらず,それぞれ純系を維持している。このことは,両集団間に生殖的隔離が成立していることを示唆している。そこで,両集団の生態的分化の程度を探る一環として,京都府由良川水系の南北集団を用いて,通常時と刺激を与えた時の群れ行動について比較実験を行った。通常時では,南日本集団は北日本集団より小さな魚群半径を形成した。しかし,4尾の場合では魚群半径にばらつきが見られた。刺激を与えた時では,南日本集団は一度分散した後,密集し,静止した。一方,北日本集団は活発に動いていたが,冬期に南日本集団と同様に静止することを確認した。以上の結果から,南北集団間で群れ行動が異なることが確かめられ,そのことから地域性を無視した放流は生態的地域固有性を失わせるものと危惧された。
著者
細谷 和海
出版者
近畿大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

1. 海外博物館での標本調査初年度は、シーボルト標本調査のため、直接ライデン博物館へ赴き、一部標本の再検査および同定による種名とタイプ標本の地位について確認した。しかし、分類学的な課題は依然残されており、いくつかの種については、海外の著名な博物館において絶滅危惧種など優先度の高い種について調査を行なう必要がある。そこで平成21年度は米国スミソニアン博物館へ、次いで、平成22年度は3月12日から18日までChicagoフィールド博物館ならびSan Francisco,カリフォルニア・アカデミー博物館(CAS)へ赴き、タイプ標本と照合を行なった。その結果、サケ科、およびタナゴ類など小型コイ科魚類の学名の整理(シノニム関係)ができた。このことにより、保全対象種の実態が明確となり、具体的な保全目標の設定が可能となった。2. 絶滅種の分類学的精査シーボルトコレクションは西日本に集中している。魚類標本の多くが、長崎周辺と江戸参府の際に収集されたことが原因である。そのため、日本産淡水魚相の過去の態様を探るには、東日本に分布する種について精査する必要がある。近年、絶滅したと考えられていたクニマスが、京大の研究グループにより再発見された。クニマスのタイプロカリティは秋田・田沢湖で、今回、移殖地の山梨県・西湖で生息が確認された。しかし、同定にはかなりの問題があり、模式標本との照合が強く求められていた。フィールド博物館とCASにおいてクニマスの模式標本と比較した結果、西湖の現存標本の特徴はおおむね摸式標本に一致するものの、斑紋・からだの大きさ等が異なることが明らかになった。今後、現存個体群の保全を進めると同時に、遺伝的特性も含め、個体変異と交雑の可能性について検証することが必要と思われた。
著者
北川 えみ 北川 忠生 能宗 斉正 吉谷 圭介 細谷 和海
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.146-150, 2005 (Released:2005-07-15)
参考文献数
15
被引用文献数
4 1

1988 年にオオクチバスフロリダ半島産亜種が放流された池原貯水池では,1996, 1997 年の遺伝学的調査においてフロリダ半島産亜種由来のミトコンドリア DNA(mtDNA)をもつ個体の割合は 56.8% であった。今回(2003 年)再調査を行った結果,本亜種由来の mtDNA をもつ個体は全体の 86.7% となり,前回調査より有意な増加がみとめられた。また,近畿地方の池原貯水池とは別水系の湖沼(津風呂湖,宝ヶ池,深泥池)からも本亜種由来の mtDNA をもつ個体が検出された。