著者
今西 禎雄 古田 賢治
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.30-35, 1992

動力噴霧機を使用して水洗する場合に付着細菌の除去に影響する主な要因として使用する水量,水流の噴射圧,水流の温度及び擦り洗いの実施が考えられる。これら要因の影響について鶏舎床面の付着菌数の減少を指標として検討した。次に,水洗効果を高める目的で予め市販畜舎洗浄剤を散布し,上記の各実験の結果から効果が高まると考えられた条件を組合せて実験を行った。また,鶏舎の建築資材を水洗し,水洗による細菌の除去が容易な資材について検討した。<br>1)使用水量を4,6及び8<i>l</i>/m<sup>2</sup>としても,水流の噴射圧を80及び150kg/cm<sup>2</sup>にしても,また,ノズルから噴出する水流温度を100°Cとしても,菌数の減少率はいずれも水洗前の菌数の10<sup>-1</sup>程度であった。一般的な水洗条件である水量6<i>l</i>/m<sup>2</sup>,噴射圧25kg/cm<sup>2</sup>,無加温の水流による菌数の減少率と差は認められなかった。6<i>l</i>/m<sup>2</sup>の水量で水流が当たっている部分の床面をデッキブラシにより6,9及び12回擦って洗うと減少率はそれぞれ10<sup>-1.4</sup>,10<sup>-2.1</sup>及び10<sup>-2.4</sup>となり,擦り洗いをしなかった場合の減少率10<sup>-0.7</sup>に比べ細菌数の減少が大きかった。<br>予め畜舎洗浄剤の0.2%液,0.6l/m<sup>2</sup>を散布した床面を水量8l/m<sup>2</sup>,噴射圧80kg/cm<sup>2</sup>,水流温度100°C,擦り洗い9回として水洗したところ,水洗後の菌数は10<sup>-5.4</sup>/cm<sup>2</sup>,減少率は10<sup>-2.5</sup>となった。動力噴霧機の水流を主体とした水洗ではこの程度の減少率が限界であると考えられる。<br>2)水洗により除去される菌数が少ない資材にはベニヤ板,コンクリート床面,スレート板,木板,錆のある亜鉛鉄板があり,減少率は10<sup>-0.9</sup>-10<sup>-1.3</sup>の範囲にあった。細菌が除去され易い鶏舎建築資材はプラスチック板,化粧ベニヤ板,錆のない亜鉛鉄板で,減少率は10<sup>-3.2</sup>-10<sup>-4.1</sup>であった。市販断熱材の減少率は10<sup>-2.5</sup>でその中間であった。菌数減少率については上記3群間に有意差(P<0.01)が認められた。