著者
村山 綾 今里 詩 三浦 麻子
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.35-44, 2012 (Released:2017-06-02)

本研究の目的は、専門家と非専門家による評議コミュニケーション場面で専門家の意見が評決に及ぼす影響について実験的に検討することである。実際の裁判員裁判に類似したシナリオを用いて、裁判員役の大学生3名と裁判官役の実験協力者1名の4名からなる評議体(合計93名、31評議体)が被告人の有罪・無罪について話し合った。事前意見分布(有罪多数、対立、無罪多数)と評議スタイル(評決主導もしくは証拠主導)を操作した。分析の結果、裁判官役と反対意見に判断を変化させる参加者よりも、同一判断に意見を変容させる参加者が多かった。また評議後に裁判官と同一判断だった参加者は、評議前の判断の確信度よりも評議後の確信度の方が高くなっていた。本研究で得られた知見に基づいて、裁判員制度および評議過程に関する提言を行った。