著者
今野 裕光 桝田 正治 村上 賢治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.227-234, 2012

トマトの防根給水ひも栽培において,栽培後に肥料袋を除去する「紐上置肥(以下,置肥)」を培地再利用が容易な砂に適用し,生育,収量および養分溶出率について土培地と比較した.また,両培地における混肥と置肥の施肥法の違いについても同様に調査した.供試材料には中玉トマトを用い,第7段摘心栽培とした.栽培期間は,2009年9月~2010年2月の136日間であった.草丈および摘心部の新鮮重・切断直径には,全処理区間で差がなかった.可販果収量は砂と土区間に差はなく,両培地における施肥法間にも差がなかった.砂区の果実は土区より全段位で酸度が低く,高段位でグリーンバック果の発生率が高かった.肥料を栽培後に培地から取り出し分析したところ,total-NおよびK<sub>2</sub>Oの溶出率は80%を超えており,砂区は土区より若干溶出率が低かった.砂区における施肥法間には,溶出率にほとんど差はなかった.一方,見かけの養分吸収量は,特にK<sub>2</sub>Oで少なく,砂区が土区より約4 g低い値を示した.これは元の培地の含有量に依存するものであり,砂区における果実酸度の低下とグリーンバック果の多発に関係していると考えられた.以上より,砂培地の肥料設計は,土培地よりもK<sub>2</sub>Oの肥効を高める必要があると考えられた.<br>