著者
仙田 裕子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.383-400, 1993-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
23
被引用文献数
5 5

高齢者の生活の質を理解するためには,生活空間の把握が不可欠であると考え,本稿では余暇的活動を行なう際に取り結ぶ社会関係の空間的範囲(「関係空間」と称す)に焦点を当て,調査を行なった.調査地域には今後高齢化の進展が予想されている東京大都市圏の郊外地域(横浜市戸塚区秋葉町)を選定した.調査は,「関係空間」の広がりと属性との対応に関するアンケート調査と,ライフヒストリーとの対応に関するインテンシブな聞き取り調査の2段階に分けて行ない,その結果以下のことが判明した. (1)高齢者の「関係空間」の広がりは,高齢以前の生活空間によって規定されるが,身近な地域については高齢以後に形成される関係に規定される. (2)職住の空間的な分離や人口の流動性の高さといった郊外地域の特性は,加齢に伴った「関係空間」の変化を余儀なくする.高齢者はそうした空間的な変化に対しても適応する必要が生じている.