著者
Knapp Sandra McNeill John Turland Nicholas J. 仲田 崇志 永益 英敏 大橋 広好
出版者
日本蘚苔類学会
雑誌
蘚苔類研究 (ISSN:13430254)
巻号頁・発行日
vol.10, no.7, pp.212-216, 2012
参考文献数
5

国際植物命名規約(International Code of Botanical Nomenclature)は,国際植物学会議(International Botanical Congress:IBC)の命名法部会で6年ごとに変更されている.第18回IBCはオーストラリアのメルボルンで開催され,命名法部会が2011年7月18日から22日に開かれ,その決定が7月30日の本会議にて採択された.この会議の結果,新学名の発表に影響するいくつかの重要な規約変更が行われた.このうち二つの変更はメルボルン規約の出版より数ヶ月早く,2012年1月1日から発効する.国際標準逐次刊行物番号(ISSN)または国際標準書籍番号(ISBN)を伴ってPortable Document Format(PDF)の形式でオンライン発表された電子資料は有効発表となり,新分類群の学名に対する要件であるラテン語の記載文または判別文は,ラテン語または英語による記載文または判別文へと変更される.さらに,2013年1月1日から効力をもつが,菌類として扱われる生物の新学名が正式発表されるためには,初発表文(protologue:学名の正式発表に際して,その学名に関連して発表された全てのもの)の中に,認定された登録機関(例:MycoBank)の発行する識別子identifierの引用を含まなければならなくなる.電子発表に関する新たな条項の草案を示し,最良慣行(訳注:最適な結果を得るための方法や手順などBestpractice)について概説する.
著者
仲田崇志 冨田勝 野崎久義
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.364-369, 2010-12-20 (Released:2022-10-20)

Volvulina(新称;マユダマモ属)は主に 8または 16細胞性の群体性オオヒゲマワリ類で,中空で楕円体状の群体を形成する.本研究において,マユダマモ属の株が本邦神奈川県津久井湖より分離され,形態に基づきVolvulina compacta(新称:ヨリソイマユダマモ)と同定された.ヨリソイマユダマモはこれまでネパールからしか知られておらず,本邦では初の報告となる.葉緑体の rbcL, atpB, psaA, psaB および psbC 遺伝子を用いた複数遺伝子解析によると,ヨリソイマユダマモの日本産株はネパール産株およびV. pringsheimii のアメリカ産株と近縁で,本邦から知られていたV. steinii(新称:スタインマユダマモ)とは系統的に離れていた.日本産ヨリソイマユダマモはスタインマユダマモよりも V. pringsheimii により近縁だったが,V. pringsheimii とは細胞が頂面観で四角形であることから明確に区別された.これらの結果から,ヨリソイマユダマモに隠蔽種が含まれることが示唆された.