著者
任 公越
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3-4, pp.233-248, 1985-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15

著者は鍼灸を情報療法の1つの形であると考えている。情報療法とは最適な情報注入点 (経穴) から変調した経絡にネガティブ・フィードバック (負帰還) 情報を与えることによって治療するものである。情報療法, 理学療法, 化学療法の間には本質的な違いがある。情報療法は施術者 (あるいは情報療法のための機器) と自律神経系の間の交信あるいは対話である。鍼, 灸, 吸角, 膏薬貼付, マッサージ療法などは広義鍼療法であり, 狭義情報療法でもある。この論文ではこれらと共に気功 (深呼吸運動法), バイオフィードバック, 催眠, 暗示療法などを含む広義情報療法についても簡単に解説する。この論文で論じられるのは, 陰陽の経絡, 表裏の経絡, 経絡の左右, 手と足の経絡, 腹募穴と背兪穴などの関係, さらに五行の相生相剋, 等位穴, バイオホログラフィ法則など, 経絡の虚実, 入力情報の補瀉, 経絡における情報処理の基本法則についてである。また5種類の巨刺法 (反対側刺鍼法) と準巨刺法を紹介する。著者はサイバネティクスの視点から鍼を取り扱う。彼は情報療法の研究が発展すれば, 将来まったく新しい科学技術の分野―経絡サイバネティクスが形成されると考えている。それは人工知能やコンピュータ科学に重要な影響を与えるであろう。