著者
鈴木 紘
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
日本鍼灸治療学会誌 (ISSN:05461367)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.74-78, 1980-07-15 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

Method.1. The treatment was given to 23 patients.2. In order to relieve stiffness in the shoulders and the nape, acupuncture was administered at the following points: BL-10, GB-20, GB-12, TH-17, GB-21, TH-14, BL-11, BL-38, GV-20, GV-12, LI-4, LI-10, HT-7, KI-3, TH-4, GB-41 etc.3. On the shoulders and the nape, stationary insertion was administered was given for 15 minutes.Results.1. Effective results were obtained in 12 cases. Therefore, 52 percent of all patients responded well to the treatment.2. In my last report for the 24th Congress it was 60 percent for 45 patients suffering from the same syndrome. Together with those reported in the previous paper, the results obtained there suggest that favorable results were obtained in 57% of the 68 patients complaining of epipharyugeal syndrome.4. This kind of disease or syndrome almost always has its onset from May to August. This was true in 70 percent of all patients.5. Occupational breakdown showed most of the made patients to be white collar workers and female patients to be housewives.Conclusion.Stiffness is intimately related with diseases. For this reason it may be very important to give treatment to the shoulders and the nape together with the later nape.

59 0 0 0 OA 漢方脾膵臟論

著者
保宝 康詔
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
日本鍼灸治療学会誌 (ISSN:05461367)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.46-57, 1964-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
60
著者
山下 仁 大川 祐世 増山 祥子
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.156-165, 2019-08-01 (Released:2020-07-13)
参考文献数
45
被引用文献数
1 1

2019年5月に発刊された 「腰痛診療ガイドライン2019 (改訂第2版)」 の鍼治療に関する記載において、 文献選択、 データ抽出、 データ入力などの間違いにより逆の結果を示している深刻な誤情報を複数発見したので、 それらを指摘して正しい情報を提供する。 1. 日本人の腰痛に対する日本の鍼治療のランダム化比較試験 (RCT) のメタアナリシス論文の存在が無視されている。 2. 急性腰痛に対する鍼治療については解析ソフトにRCTデータを正負逆に入力する誤りがあり、 鍼が対照群に対して優位でないという逆の結論を導いている。 また、 機能障害のデータ統合の一部で疼痛のデータを入力して解析している。 3. 慢性腰痛に対する鍼治療についてのメタアナリシスで組み入れたRCT5論文の介入の内訳は鍼、 耳ツボ指圧、 レーザー鍼、 椅子の指圧背もたれ、 耳ツボ指圧であり、 鍼灸針を刺入する鍼治療は1編のみであるため、 これは鍼治療のメタアナリシスではない。 誤入力も多く、 図7と8はその内容が逆である。 4. ヨガの医療経済効果のメタアナリシスとして引用している論文に医療経済効果についての記載はなく、 ヨガ以外については明確に示しているものはないとしているが実は鍼治療の費用対効果のメタアナリシス論文が存在する。 Minds診療ガイドラインの手引き2014に 「完全準拠した」 とする腰痛診療ガイドライン2019だが、 システマティックレビューチームを設けておらず、 外部評価委員会の編成については記載がない。 このような状況が深刻な誤りを見逃してしまったことと関連していると推測している。 他の療法に関しても多数の誤りを確認しており、 このままでは日本の診療ガイドラインの社会的信用を大きく失墜することになるため、 できるだけ早い時期に修正版が発行されることを望んでいる。
著者
福田 文彦 石崎 直人 山崎 翼 川喜田 健司 北小路 博司
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.75-86, 2008 (Released:2008-05-27)
参考文献数
72
被引用文献数
2 1

臨床ガイドラインは、 臨床医師が特定の疾患を治療する際の意思決定を支援することによって最高の診療を推進するという目的のもとに、 系統的に作成されるものである。 それらはエビデンスと連動しており、 より良い診療を行うために作成される。 鍼灸治療は、 医師や看護師、 理学療法士、 助産婦などの保健医療従事者や医療訓練を受けていない施術者などによってさまざまな状況で行われる可能性があるにもかかわらず、 一般の保健医療施設における安全な鍼灸診療のためのガイドラインはない。 ここに示すガイドラインはがん患者の症状、 特に疼痛症状の緩和やその他 (ホットフラッシュなど) の非疼痛性の症状に用いるために作成された。 本ガイドラインは、 がん患者における鍼治療の方針を提示する必要がある鍼灸師のための雛形として示すものである。 本稿には、 ガイドライン及びガイドラインとともに利用するための、 鍼治療のメカニズムや効果、 安全性についての総括的レビューが含まれている。 付記には、 自分自身で鍼治療を行うための方法を示した。 ガイドラインには、 役割と責任、 鍼治療の基準、 適応、 禁忌及び注意事項、 鍼治療、 調査及び監査のセクションが含まれている。 これらのガイドラインは治療に関する基本的で最低限の標準を示すものであり、 今後のデータとエビデンスの蓄積に応じた再評価と確認が必要である。
著者
新原 寿志 小笠原 千絵 早間 しのぶ 日野 こころ 谷口 博志 角谷 英治
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.315-325, 2012 (Released:2013-10-08)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

【目的】本研究の目的は、 国内の鍼灸臨床における有害事象 (過誤・副作用) の現状を明らかにすると共に、 その問題点と改善のための方策を検討することにある。 【方法】対象は、 平成21年10月現在、 iタウンページに登録の開業鍼灸院20,454件から無作為に抽出した6,000件とした。 アンケートは、 平成21年10月初旬に郵送し、 同年12月末日を返信期限とした。 調査項目は、 1) 回答者プロフィール、 2) 鍼による有害事象、 3) 灸による有害事象、 4) 鍼灸の有害事象に対する患者の苦情および告訴、 5) 鍼灸の有害事象に関するインフォームド・コンセント、 6) 鍼灸の安全性に関する書籍・雑誌の購読状況、 7) 鍼灸の安全性に関する自由記述とした。 なお、 本調査は、 2000年以降の有害事象の経験の有無について調査を行い、 その発生件数(頻度)は問わなかった。 【結果】回収率は21.6%であった。 鍼の有害事象では、 皮下出血 (65.8%)、 微小出血 (62.0%)、 刺鍼時痛52.9%などの副作用が上位を占め、 過誤では鍼の抜き忘れ (32.7%) が最多で、 重大な過誤では折鍼 (2.2%)、 気胸 (2.0%) であった。 灸の有害事象では、 意図しない熱傷 (24.0%)、 髪の毛の燃焼 (15.5%)、 衣服の燃焼 (15.0%) が上位を占め、 重篤な過誤では灸痕化膿 (10.8%) が最も多かった。 有害事象に対する患者の苦情では症状悪化 (21.8%)が、 告訴では気胸 (36.4%, 11件中4件) が最も多かった。 有害事象に関するインフォームド・コンセントを得ているとの回答は全体の74.8%で、 そのうち口頭のみが61.0%であった。 鍼灸の安全性に関する書籍等の購読率はいずれも30%未満であった。 【まとめ】鍼の有害事象の多くは副作用であり、 刺激過多に起因するものが多かった。 灸では、 施術者の不注意に起因するものが多かった。 また、 関連する書籍等の購読率が低いなど、 安全性に関する情報は未だ十分に浸透しているとは言えない現状が示唆された。 今後は、 書籍のみならずインターネットを用いた情報の発信が必要であると考えられた。
著者
佐藤 万代 山崎 翼 上坂 梨沙 音田 愛 矢野 忠
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.157-167, 2012 (Released:2012-08-06)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

【目的】近年、 ストレスや生活の乱れなどが心身にさまざまな影響を及ぼし、 その結果、 肌状態の悪化を自覚する女性が増加している。 このような背景から、 局所的なケアだけでなく、 全身の健康増進を通して美容効果を得ようとする鍼灸治療が注目され、 「美容鍼灸」 という一つの分野として職域的に拡大している。 本研究では、 肌の不調を自覚する健常成人女性に鍼治療もしくは指圧療法を行い、 肌状態への効果と介入方法の特性について検討を行った。 【対象と方法】対象は肌の不調を自覚する健常成人女性14名とし、 鍼治療群7名と指圧療法群7名にランダム割付けした。 介入期間は4週間とし、 各群ともに週2回の介入を行った。 評価は介入期間の前後とし、 主観的評価として主観的健康感、 身体的・精神的疲労VAS、 ナーリス気分テスト、 肌状態アンケートを、 客観的評価として皮膚色調 (L*値、 a*値、 b*値)、 メラニン指数、 Hb指数、 HbO2指数、 角質細胞面積、 三次元画像変位量によるたるみ、 レプリカ (目尻・鼻唇溝) 解析によるシワ面積率、 および、 印象について評価を行った。 統計処理は、 2群の介入前比較には対応のないt検定を、 介入前後の群内比較には対応のあるt検定を用いた。 【結果】客観的評価においては、 両群の背景因子には有意差は認められなかった。 鍼治療群では主観的なシワ、 たるみ、 肌状態の有意な改善、 客観的評価では左鼻唇溝のシワ面積率減少傾向を認めた。 指圧療法群では主観的な皮脂、 ナーリス気分テストの有意な改善、 客観的評価ではL*値、 HbO2指数の増加傾向、 b*値、 メラニン指数の低下傾向を認めた。 【考察・結論】鍼治療はシワなどの形態的変化を、 指圧療法は皮膚色調を変化させる可能性が考えられた。 効果が異なる理由は不明だが、 介入の違いによるものと考えられた。 本研究は主観的、 客観的評価を用いて美容鍼灸の効果の一端を明らかにしたものであり、 意義のあるものと考えられた。
著者
矢野 忠
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.91-95, 1996-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
著者
岩元 英輔
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.67-74, 2020 (Released:2020-07-13)
参考文献数
14

【目的】脊椎圧迫骨折は腰痛のレッドフラッグの1つであり、 脊椎の叩打痛にて鑑別を行うことが多い。 しかし、 脊椎の叩打痛の診断精度は感度88%、 特異度90%と高い精度だが、 それでも見逃す可能性がある。 今回、 握り拳による脊椎叩打痛は陰性であったが、 脊椎の聴性打診により圧迫骨折が判断できた1例を経験したので報告する。 【症例】症例は58歳、 女性。 病院のX線検査で圧迫骨折は否定されてはいたが、 上殿部と第12胸椎棘突起の体動痛といった病歴や理学的検査所見から圧迫骨折の否定は出来なかった。 そこで、 骨折の際に用いられる聴性打診を脊椎部に応用した。 方法は、 側臥位で背中を軽く丸めた姿勢で、 第11胸椎棘突起を打診点とし、 第1腰椎棘突起に聴診器を設置。 打診音を聴取し、 別の部位の正常音と比べた結果、 陽性 (骨伝導音の低下) と判断されたため、 MRI検査を勧めた結果、 第12胸椎の圧迫骨折と診断された。 【結論】圧迫骨折に対する脊椎叩打痛は有用な所見ではあるが、 単体では誤診の可能性があること、 検査時に痛みを伴うことなどが考えられる。 今後は、 聴性打診の方法の確立と精度を検討する必要はあるものの、 痛みなく短時間で骨折の有無を判断できる有用な方法になり得ると考える。
著者
神田 浩里 岡田 薫 川喜田 健司
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.802-810, 2010 (Released:2011-05-25)
参考文献数
21

【目的】鍼や灸刺激の反応のひとつとして、 求心性の無髄C線維の軸索反射によるフレア反応が観察される。 カプサイシン溶液を皮膚に貼付するとフレア反応を誘発し、 繰り返し貼付するとカプサイシン感受性C線維を脱感作させる。 本研究では、 鍼灸刺激で誘発されるフレア反応に関与する受容体を調べることを目的に、 フレア反応への脱感作の影響を検討した。 【方法】同意の得られた健康成人13名 (男性6名、 女性7名;26.0±5.6才) を対象とした。 カプサイシン溶液 (0.1%) を濾紙 (20×20mm) に含ませ、 左前腕内側部に3日間貼付 (6時間/1日) し脱感作させ、 その対側をコントロール部位とした。 両部位の熱・機械的痛覚閾値、 鍼や灸刺激による皮下血流量の変化を測定した。 【結果】脱感作部位ではコントロール部位に比べ、 熱痛覚閾値は有意に上昇したが、 機械的痛覚閾値変わらなかった。 また脱感作により、 灸刺激によるフレア反応は減少し、 鍼刺激によるフレア反応は消失した。 【考察】鍼や灸刺激は主にカプサイシン感受性C線維よってフレア反応を生じることが明らかとなった。 熱刺激に応じる熱受容チャネルはTRPV1以外にもいくつか報告されているが、 今回灸刺激によって起こったフレア反応はカプサイシン脱感作により大きく減少したことから、 主にTRPV1を持つカプサイシン感受性C線維を介して起こったことが考えられた。 また、 脱感作後に灸刺激によって起こったわずかな反応は、 他の温度受容体も関与するかもしれないことを示唆している。 一方、 鍼刺激によるフレア反応は脱感作によって完全に消失した。 機械的痛覚閾値が脱感作によって影響を受けなかったことや、 TRPV1は機械刺激では興奮しないため、 鍼刺激によるフレア反応は機械刺激ではなく組織損傷で産生される化学物質によって引き起こされた可能性が考えられた。

10 0 0 0 OA 灸研究の現在

著者
會澤 重勝 校條 由紀 東家 一雄 仲西 宏元 戸田 静男
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.601-613, 2003-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
12
被引用文献数
3 4

灸の生体に及ぼす作用についての研究は, いまだ十分とはいえない.全日本鍼灸学会学術大会では, 1997年にミニシンポジウム, 1998年にパネルデイスカッション「ここまで判った灸の科学」, 2001年にシンポジウム「鍼灸と免疫」などの特集が組まれて, それに対する研究成果の議論がなされてきた。そして, 年を追うごとにその内容が深まってきているといってよい。このようなことから, 2003年の第52回全日本鍼灸学会学術大会 (香川大会) では, 現在日本での最先端の研究者によるシンポジウム「灸研究の現在」が企画され, 以下のようにまとめられた。會澤重勝 : 灸基礎研究の概観では, 各種データベースにもとついて現在までの研究論文について述べられている。灸の特に基礎的研究は, 免疫学, 解剖学, 生化学, 神経生理学その他さまざまな方面から研究が試みられている。そして, その研究者の多くは全日本鍼灸学会で発表をしている。そのことから, 本学会の灸研究に果たしている役割は, 多大なものといえる。校條由紀 : 施灸部位の組織学的検討では, 施灸後の皮膚組織が変化する範囲が施灸部位を中心として見られた。その範囲は, 施灸終了60分後も拡大していた。特に, 皮下組織の変化の範囲は文の底面の広さを長時間経過しても超えていた.このことは, 施灸刺激の程度を決定する上で参考になる。東家作雄 : 灸の免疫系への作用が, 実験動物を用いて施灸皮膚所属リンパ節におけるサイトカインmRNA発現様式について検討された。作L-12, IFN-γのようなサイトカンのmRNAに発現様式が認められ, その作用機序に文含有成分の関与することが示唆された.仲西宏元 : 温灸の作用機序の検討から, 灸刺激特に温灸は鍼刺激とは異なる伝達系があり, 灸刺激の局所的な刺激が生理活性物質を奮起し, 機能の活性を引き起こし, この効果が神経系にも影響を与えると考えられた。ただし, 灸の原料であるヨモギの産地によって, 含有する金属元素の含有率の違いが大きく認めたことから, 同質重量の刺激を行ってもその治療効果に差が生じるのではないかと推測された。以上のように, 日本ではさまざまな角度から灸研究がなされているといってよいであろう。今回のシンポジウムは, 「灸研究の現在」を情報提供することが出来, 鍼灸医学の発展に寄与出来たものと思われる。
著者
山本 哲朗
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.194-204, 2012 (Released:2012-12-10)
参考文献数
14

本稿では、 鍼灸医学の危機を救った石川日出鶴丸の足跡を辿り、 彼の目指した科学的基盤に基づいた鍼灸医学についての考察を行います。 石川先生は、 富山県の出身で、 東京帝国大学を卒業後、 京都帝国大学の天谷教授の下で研究生活に入り、 1908年から4年間、 最先端科学が花開くヨーロッパに留学されます。 主にゲッチンゲン大学のフェルボルン教授の下で研究しますが、 短期間ながら、 ぺテルスブルグ大学のパブロフ教授や英国のスターリング教授、 シェリントン教授なども訪れています。 このヨーロッパでの経験が、 後年の研究発展へとつながるのです。 帰国後は、 京都帝国大学の教授として、 日本の生理学研究を大きく発展させ、 同時に、 鍼灸医学や心理生理学にも生理科学的手法による解析を試みられました。 石川先生は、 神経生理学領域では、 加藤元一教授との論争で有名です。 この論争は、 神経の活動電流が、 麻酔部位で、 減衰して伝導するか(減衰論)、 減衰せずに伝導するか(不減衰論)というもので、 加藤教授が石川先生の愛弟子の一人であったことにより非常な注目を集めました。 京都帝国大学を退官後、 1944年に三重大学医学部の前身である三重県立医学専門学校長として津市に来られ、 翌年には、 大学病院に鍼灸療法科を開設されます。 終戦後、 GHQは、 当時の鍼灸などの伝統医学が、 西洋医学の水準からすると、 科学的根拠に乏しいことから、 「鍼灸禁止令」を考えていました。 先生は、 御自身の研究結果をもとに、 GHQ関係者に鍼灸医学の科学性を説明され、 実際に鍼灸を施術してその効果も体験させ、 鍼灸の存続に貢献されます。 しかし、 この間の過労のためか、 1949年に教授会の席で脳卒中を発症し亡くなられます。 石川先生の遺志は、 弟子の笹川久吾京都大学教授に引き継がれ、 日本鍼灸学会が結成されます。 第1回日本鍼灸学会が1954年に京都大学で開催され、 現在の隆盛へと繋がるわけです。
著者
古東 司朗 中本 和夫
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.233-237, 1994-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

鍼灸治療による医療事故の一つである医原性気胸は, 一般には, 発生頻度が希であるとされ無視されがちである。しかし今回の当院における調査の結果, 6年8ヵ月の間に頸, 肩, 胸郭部の施鍼によって749例中4例 (0.53%) に気胸が発生していることが分かった。その内の3例は入院治療を行った。このことより鍼による医原性気胸は無視のできない医療事故のように思われた。よって, 胸郭周囲部への施鍼においては, 局所解剖を熟知し, 患者の体型を考慮する必要がある。また, 雀啄をしたり, パルス電流を流したり, 保温の毛布をかけるときには鍼が深くならぬように配慮する。頸椎症, 頸肩腕症候群, 胸郭出口症候群に対する施鍼では気胸が起こり得ることを念頭におき施鍼する必要があると思われた。
著者
松井 繁
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.596-604, 2006-08-01 (Released:2011-03-18)
被引用文献数
1

17世紀に管鍼法を考案した先覚者杉山和一以来、鍼灸と視覚障害者とは密接な関係がある。鍼灸を研究し、貢献した視覚障害者5氏について調べた。奥村三策は19世紀文部省が禁止した鍼灸教育を復活させた。20世紀、平方龍男はリンパ鍼療法を開発し、木下和三郎は灸の研究、影山儀之助は鍼灸師初、鍼の研究をそれぞれ行なった!芹澤勝助は太平洋戦争後鍼灸存亡の危機を勝利に導き、世界初コンピューターによる東洋医学自動診断機を開発するなど多数の研究を行ない、鍼灸大学創立の道を開いた。視覚障害者は何度も鍼灸存亡の危機を乗り越え、鍼灸の科学化と取り組み、時代のニーズに応える専門書を執筆するなど、鍼灸医学を確立発展させて不滅の功績を残した。