著者
保坂 到 中島 智博 梅田 璃子 大川 陽史 安田 尚美 柴田 豪 伊庭 裕 川原田 修義
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.118-122, 2022-03-15 (Released:2022-04-06)
参考文献数
3

Peripherally inserted central catheter(PICC)は病態に応じて小児から成人まで広く用いられる中心静脈カテーテルであり,内頸静脈や大腿静脈,鎖骨下静脈をアクセスとする従来の方法と比べ手技関連合併症が少ない.一方,血栓症や静脈炎の発症が多く,稀ではあるが抜去困難の報告も散見される.症例は13歳女児で,神経変性疾患のため鎮静剤の長期投与をPICCから受けていた.PICCが閉塞を来し交換の方針となったが,用手的抜去が困難であり当科に紹介された.CTにて,PICCが右腋窩静脈で屈曲しその周囲に高吸収域の構造物が確認された.当科および小児科の合同カンファレンスで治療の確実性と侵襲度を検討し,外科的摘出を選択した.手術は全身麻酔下に右鎖骨下を切開し,腋窩静脈を露出し直視下に静脈閉塞部位を露出した.血管内腔には白色石膏状の構造物が充満しており,内部にカテーテル本体が埋没している奇異な形態を認めた.構造物を摘出し,屈曲したPICCを直線化した後に,穿刺部である右肘窩から抜去した.石灰化を伴う抜去困難症例は報告があるものの,本症例のような形態で抜去困難に至った症例は他になく,また外科的摘除が非常に有効であったと考えられたため今回文献的考察を交えて報告する.
著者
中野 優 伊庭 裕 山田 陽 三浦 修平 今野 光彦 和田 卓也 丸山 隆史 八田 英一郎 栗本 義彦
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.25-29, 2020-01-15 (Released:2020-02-01)
参考文献数
18

症例は71歳男性.11年前に大動脈弁閉鎖不全症に対して大動脈弁置換術,1年前に急性A型大動脈解離に対して上行大動脈置換術がそれぞれ他院で施行されていた.今回,激しい心窩部痛を自覚し緊急搬送された.来院時の血圧70mmHgで,造影CTにて人工血管の末梢側吻合部の仮性瘤と仮性瘤内から右肺動脈への血流を認めたため,緊急手術となった.右腋窩動脈送血,右大腿静脈脱血で体外循環を確立して全身冷却を開始してから胸骨正中切開を行った.低体温循環停止,選択的脳灌流を確立して観察すると,末梢吻合部小弯側が約3cm離開していた.部分弓部置換術で再建し,また右肺動脈前面に穿通孔を認めたためウシ心膜パッチで閉鎖した.術後経過は良好で,22病日にリハビリ目的に転院となった.仮性瘤の肺動脈穿破による左-右シャントによる急性心不全のため血行動態が破綻し,緊急での再々開胸手術にて救命し得た1例を報告する.