- 著者
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伊東 亜由美
森永 芳智
石原 香織
臼井 哲也
森 智嵩
原口 雅史
中尾 一彦
栁原 克紀
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
- 雑誌
- 医学検査 (ISSN:09158669)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.3, pp.310-316, 2016-05-25 (Released:2016-07-10)
- 参考文献数
- 8
- 被引用文献数
-
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検査前過程の影響で起こる検査データの偽高値や偽低値について,検査室による適切な評価と指導は適切な治療に貢献できる。偽性高カリウム(K)血症は検査前過程で発生することが多く,偽高値は不適切な治療につながり得る。今回,検査室主体の原因検討,他職種との情報共有および患者指導がK偽高値を解決した症例を経験した。症例は72歳女性,自己免疫性肝炎疑いで入院中であった。主治医よりK値の大きな日差変動(3.9–6.2 mmol/L)と患者病態および使用薬剤状況との乖離について問合せがあった。検査技師が病棟に出向き採血状況を確認すると,患者は過度のハンドグリップを行っており,解除直後のK値は4.9 mmol/Lであった。K高値がハンドグリップの影響か判断するため,完全に掌を開いた状態で採血を行うと,採血管順序に関わらずK値は4.0 mmol/Lで一定であった。以上より,ハンドグリップがK高値の原因と考えられた。この旨を診療録に記載するとともに,主治医,看護師と情報を共有した。さらに,患者本人に採血時の注意点を説明し,自己申告する内容について指導した。指導後はK偽高値を疑う値は示さなかった。正確な検査結果を得るための検査前過程の質の確保には,医療者側の対策だけでなく,患者が自身の体質を認識することも重要である。検査技師による積極的な連携と情報共有体制は,より質の高い医療につながるものと考えられる。