- 著者
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斎藤 隆
伊東 秀夫
- 出版者
- 一般社団法人 園芸学会
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.4, pp.278-290, 1963
- 被引用文献数
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キユウリの花の性の分化に関する生理的機構を明らかにする目的で, 花の性の分化に対する Gibberellin の影響について調べた。<br>1. Gibberellin 施与濃度の影響 5, 20, 50および100ppm 溶液を施与した結果, 濃度の高いほど生育が旺盛となり, 雌花の着生節位が上昇してその節数が減少し, 雄花節数が増加している。<br>2. Gibberellin 施与頻度の影響 50ppm 溶液を施与する期日の間隔を12日, 8日, 4日および2日と変えた場合および4日間隔で施与回数を2回, 4回, 6回,8回および10回と変えた場合, 施与頻度の高まるのに伴なつて生育は旺盛となり, 雄花の発現が増加し, 雌花の発現が滅少している。<br>3. Gibberellin 施与部位の影響 50ppm 溶液を施与する場合, その施与部位を生長点部のみ, 成熟葉のみ, あるいは全面と異ならしめた場合, いずれの部位に施与しても生育は促進され, 雌花の着生節位は上昇して, その節数が減少し, 雄花節数が増加している。<br>4. Gibberellin 施与時期の影響本葉0, 1, 2, 3, 4, 6, 8および10枚展開時にそれぞれ 100ppm溶液を4日間隔で2回施与した結果, いずれの時期に施与しても生育が促進され, 雌花の発現が抑えられて, 雄花が発現している。Gibberellin 施与の影響が現われる部位は, 処理時期が1期遅れるごとにそれぞれ3~5節ずつ上節位に移動して行き, いずれの時期の処理でも7~8節ずつの雄花が発現している。<br>5. かんざし苗に対する Gibberellin 施与の影響 生育が全く抑えられ, 雌花が生長点部近くまで連続して着生してかんざし状になつた苗に, Gibberellin 100ppm溶液を施与した結果, 生育が促進されて正常な発育状態に戻り, 雌花の発現が抑えられて, 雄花の発現が誘起された。<br>6. 大苗に対する Gibberellin 施与の影響 雌花が相当数連続して着生している大苗に対し, Gibberellin 100ppm 溶液を施与した結果, 無処理区では雌花を連続して発現しているのに対し, 施与区では雌花の発現を抑え, 雄花の発現を誘起した。<br>7. 短日処理感応に対する Gibberellin 施与の影響短, 日処理によつて雌花の発現が誘起されるが, 短日処理前あるいは処理中に Gibberellin 100ppm 溶液を施与すると, 雌花の発現が全く抑えられ, 短日処理の効果は全然現われない。短日処理後に施与した場合には, 雌花は発現するがその数は少ない。<br>8. Gibberellin 施与に対する品種間差異 相模半白, 加賀節成, 刈羽節成, 聖護院節成および四葉の5品種を用い, Gibberellin 50ppm 溶液を施与した結果, いずれの品種においても生育が促進され, 雌花の発現が抑えられ, 雄花の発現が助長されている。<br>9. 摘葉と Gibberellin 施与との組合わせの影響 相模半白, 落合および青葉は, 高温連続照明下では葉が存在しても第40節までは雌花が全然発現せず, 摘葉, Gibberellin 施与区ではもちろん雌花が全然発現しない。加賀節成, 刈羽節成, 聖護院節成および夏節成は, 高温連続照明下でも雌花が相当数発現するが, 摘葉処理によつて雌花の発現が著しく減少し, これに Gibberellin を施与するとさらに雌花の発現が減少する。<br>10. 花の性の分化に対する Gibberellin の作用機作<br>Gibberellin の施与量, 施与部位, 施与時期等を変えたいずれの場合も, それぞれの処理に対応して植物体の生点長部における Gibberellin 量が増加して, 植物体の生育が旺盛となり, 作用部位における花成物質の集積量が減少して雌花の分化が抑えられるものと考えられる。