著者
大谷 聡一郎 青木 伸 池北 雅彦 森田 明典 モハマド ズルキフリ 伊石 安里 王 冰 田中 薫 岡崎 遥奈 吉野 美那子 細井 義夫
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.106, 2011

我々は、オルトバナジン酸ナトリウム(バナデート)が、p53転写依存性・非依存性の両経路を抑制する阻害剤として機能し、腸死を克服できる初めてのp53阻害剤であることを明らかにしている。放射線防護効果が報告されている他のp53阻害剤としては、ピフィスリンαやピフィスリンµが知られているが、これら3つの阻害剤の内、防護効果の最も高いバナデートのみがp53変性作用を有していることを見出した。我々は、このp53変性作用をバナデートの特徴と捉え、p53変性作用を有する新しい阻害剤の探索を進めた。一方、p53変性作用は、p53分子内に存在する金属イオン結合部位に配位する亜鉛イオンの解離によって生じることが報告されていた。 そこで本研究では、p53依存性の放射線誘発アポトーシスを引き起こすMOLT-4細胞を用いて、亜鉛キレート化剤のp53阻害剤としての有効性評価を行った。その結果、検討した5種のキレート化剤の内、2種がアポトーシス抑制効果を示した。アポトーシス抑制効果が最も高かったBispicenは、バナデートと同様にp53変性作用を示し、転写依存性・非依存性両経路のアポトーシス過程を抑制した。さらに、p53ノックダウン細胞株やp53変異体株、p53欠損細胞株での比較から、Bispicenのアポトーシス抑制効果がp53特異的であることも明らかとなった。現在、p53特異性の向上を目指し、Bispicenにp53特異的ペプチドを付加したハイブリッド化合物の活性評価を進めているところである。