著者
新田 洋司 伊能 康彦 松田 智明 飯田 幸彦 塚本 心一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.315-320, 2008-07-05
被引用文献数
2 3

茨城県産米は従来より,整粒歩合,千粒重,粒厚,1等米比率が低いことが指摘され,改善が要望されていた.そして,茨城県等では2004年から「買ってもらえる米づくり」運動(以下「運動」)を展開している.本研究では,茨城県の作付面積が新潟県についで全国第2位(2004年)である品種コシヒカリについて,千粒重・粒厚と食味関連形質を調査して「運動」目標値等と比較した.そして,それらの形質の相互関係について検討した.調査は,茨城県内各地で品種コシヒカリを化学肥料によって一般的に栽培している20水田を対象とした.育苗,移植,管理,収穫作業等は当該水田管理者の慣行法によった.収穫後,収量および収量構成要素,精玄米の大きさ,食味関連形質等を調査した.収量は330〜617kg/10aの範囲にあった.玄米の粒厚は1.93〜2.02mm の範囲にあり,平均は1.99mmであった.玄米千粒重(20.3〜22.7g)の平均は運動目標値と同じ21.5gであった.玄米の粒厚と千粒重との間には有意な相関関係は認められなかった.一方,精米のタンパク質含有率(乾物重換算で5.3〜7.4%)の平均は6.4%であり,運動目標値よりも低かった.精米のアミロース含有率(18.3〜19.8%)の平均は18.9%であった.精米のタンパク質含有率,アミロース含有率,食味値と玄米千粒重または粒厚との間には,有意な相関関係は認められなかった.以上の結果,比較的千粒重か大きく粒厚が厚い玄米では,精米のタンパク質含有率やアミロース含有率が玄米の大きさに規定されない場合のあることが明らかとなった.また,本研究で用いた2005年茨城県産コシヒカリの食味および食味関連形質は,おおむね良好であったと考えられた.