著者
新田 洋司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.95-97, 2005 (Released:2009-07-07)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3
著者
MIAH Mohammad Noor Hossain 吉田 徹志 山本 由徳 新田 洋司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.672-685, 1996-12-05
参考文献数
31
被引用文献数
5

多収性の半矮性インド型水稲品種(桂朝2号, IR36; SDI)と日印交雑型水稲品種(アケノホシ, 水原258号; JI)の乾物生産特性と穂重に対する出穂期前後に生産された乾物の分配率などについて, 日本型水稲品種[農林22号, コガネマサリ; 穂重型(JP), 金南風, 中生新千本; 穂数型(JN)]を対照品種として, 作期を2回[移植日1992年5月15日(ET), 6月9日(LT)]設けて圃場試験を行い検討した. 多収性品種(JI, SDI)の穂揃期の葉面積指数(LAI)は両作期ともJP, JNより高かったが, 登熟期間での減少割合が大きく, 収穫期には低い値を示した. SDIとJIの穂揃期地上部乾物重は, LTのアケノホシを除いて, 両作期ともJP, JNより高かったが, 登熟期間の乾物重の増加量に有意差はみられなかった. 特にSDIでは登熟期間のLAIの減少割合が大きく, また, 登熟期後半のSPAD値が大きく低下したことと相まって, 登熟期間の個体群生長速度は最も低くなった. SDIおよびJIの収穫期の穂重はJP, JNと比較してETでは20〜30%, LTでは18〜20%高かった. また, 両作期のSDIとJIの収穫期の地上部乾物重に対する穂重の割合は, JP, JNと比較して有意に高く, この差が穂重差に反映されたものと考えられた. 穂重に対する出穂期までに茎葉に蓄積された乾物の分配率をみると, ETではJPとJNの平均値よりSDIとJIが約2倍, LTではSDIが約4倍それぞれ高い値を示した. 穂揃期の穂重(シンク容量)は収穫期の穂重と有意な相関関係を示し, シンク容量の大きい品種は登熟期間の地上部乾物重増加量が少なくなる傾向がみられた. また, 茎葉に蓄積された同化産物の穂重への分配率はシンク容量と関係が深いことが認められた.
著者
服部 優子 松田 智明 新田 洋司
出版者
日本作物学会関東支部
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.102-103, 2003

平成14年度は北関東の平野部において, 早生および中生品種を中心に精玄米の一部に白色不透明部を有する不完全登熟粒が多発し, 各地で一等米比率および品質の低下問題が生じた. とくに茨城県内では, 土浦市などを含む南部地域での被害が著しく, 北部地域と比較して一等米比率は著しく低下した. これらの要因としては, 高温登熟の影響が考えられているが, その詳細については不明な点が多い. そこで本研究では, 低品質化が目立った茨城県南部産の「コシヒカリ」における不完全登熟粒の胚乳構造を, 福島県産「コシヒカリ」とともに走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した.
著者
大川 峻 松田 智明 新田 洋司
出版者
日本作物学会東北支部
雑誌
日本作物学会東北支部会報 (ISSN:09117067)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.127-128, 2007

これまでに急速凍結-真空凍結乾燥法によって可視化される炊飯米の微細骨格構造のうち、炊飯米の表面に伸展する「細繊維状構造」および内部に認められる「海綿状構造」の網目の発達程度が良食味米の構造的指標となること、また、炊飯に伴って良食味米では細胞壁やタンパク顆粒は分解されるが、低食味米では分解されずに残存することなどを指摘した。本報では、これらの構造的指標を用いて新しい水稲良食味米系統「北陸200号」の微細骨格構造を走査電子顕微鏡レベルで評価した。
著者
高橋 一典 松田 智明 新田 洋司
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.47-53, 2001-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
27
被引用文献数
4 4

炊飯に伴うデンプンの糊化についての基礎知見を得るため,1998年産コシヒカリ,きらら397およびタイ米(インド型長粒種,単一銘柄)を供試して,米粒中のデンプン粒の糊化過程を経時的な微細構造の変化として走査電子顕微鏡により詳細に追跡した.炊飯開始後10分(炊飯釜内中央部の温度45.0℃)でコシヒカリではアミ口プラスト包膜の表面から分解が開始された.炊飯開始後15分(51.3℃)には,炊飯開始前に長径で約3~4μmであったデンプン粒は約4.5~5μmに膨潤し,精白米の第1層目の胚乳細胞内のデンプン粒で,表面から繊維状の糊が伸展した.網目状の構造はデンプン粒の表面から内部に向かって形成が進行した.アミ口プラスト内のデンプン粒は互いに網目状構造で融合し,一体化して多孔質の糊となり不定形化した.炊飯開始後20分(98.5℃)には,コシヒカリの米粒の表層部では,きらら397やタイ米と比較して網目の拡大した微細骨格構造が形成された.アミ口プラスト単位で一体化した不定形の糊状構造は,炊飯開始後25分(98.5℃)には,さらに胚乳細胞を単位として一体化するのが認められた.炊飯に伴うデンプン粒の膨潤と網目状構造および不定型の糊状構造の形成は,米粒の表層部ほど早く始まり中央部では遅かった.網目の大きさは米粒の表層部で大型化し,中央部では小型であった.本観察からデンプン粒の糊化とは「緻密」な構造体であるデンプン粒が,その主成分であるアミロペクチンの分子内に氷分子を取り込み,膨潤し,分子密度の低下した構造体に変化することであると考えられた.
著者
山本 由徳 池尻 明彦 新田 洋司
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.495-501, 1996-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
16
被引用文献数
1

32℃温度条件下で極短期(4日間)に乳苗を育苗する際に, 蛍光灯により500lux(実験1), 170lux(実験2)の光を育苗全期間, 育苗終了前の2日間および1日間当てる区と光を当てずに暗黒下で育苗する区を設けた. また, 実験2では室内光(昼間最高照度70~80 lux)条件下で4日間育苗する区を設けた. そして, 育苗期間の光条件が乳苗の苗素質と移植後の活着および初期生育に及ぼす影響について検討した. 1)育苗期間の光条件に関わらず, 苗丈7~8cm程度, 胚乳残存割合が40%前後で葉齢2.1~2.3の苗が得られた. 育苗期間に光照射することによって, 暗黒下育苗苗にくらべてやや葉齢の進んだ苗となった. 2)苗の葉緑素含有量は照度が高いほど多くなったが, 光照射期間による差は小さかった. 3)活着の指標とした移植後の初発分げつ日は, 暗黒下育苗苗にくらべて光照射苗で照度, 照射期間に関わらず早かった. その結果, 初期生育は暗黒下育苗苗にくらべて光照射苗で優った. さらに, 胚乳を除去して移植した場合には, 光照射苗と暗黒下育苗苗との活着, 初期生育の差はより一層大きくなった. 4)以上より, 乳苗の育苗期間中に100~500lux程度の光を照射しても苗の伸長生長はほとんど抑制されず, 暗黒下と同様に苗丈7~8cmで胚乳残存割合が約40%の苗が得られ, わずか1日だけ光を照射することによって, 葉緑素が形成されるために活着および初期生育が良好になることが明らかになった.
著者
山本 由徳 濃野 淳一 新田 洋司
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.p601-609, 1994-12
被引用文献数
3

約1/1000aポットに直播栽培した水稲主稈の第2節から第11節の範囲で, 下位, 中位, 上位節に1次分げつを1節のみ, 2節あるいは4節残存させ, 株当り分げつ穂数を20本とし, さらに残存節数が同じ区では, それらの次位別構成を同一とした条件下で, 主稈の節位別, 次位別分げつの子実生産力について検討した. 1) 主稈の生育, 収量(穂重)は, 残存節数が少なく, 残存節位が上位であるほど優った. 2) 同一残存節数区の1次分げつの平均1穂重は, L位>中位>下位節の順に優った. 2次分げつの平均1穂重は, 1節および2節残存区では中位>上位>下位節の順に, また4節残存区では上位=中位<下位節の順に重くなった. 3(4)次分げつの平均1穂重は, 1節および2節残存区では中位>下位>上位節の順に, また4節残存区では中位=上位>下位節の順に重くなった. これらの結果, 全分げつの平均1穂重は1節, 2節および4節残存区でそれぞれ中位>下位>上位節, 中位>上位>下位節, 上位>中位>下位節の順に重くなり, 分げつの子実生産力は出現時期が早く, 栄養生長量の優る下位節ほど優るという傾向はみられなかった. 3)1次分げつの1穂重は穎花数と密接に関係し, 1穂穎花数は茎の生理活性をより直接的に示すと考えられた葉鞘からの葉身抽出速度(cm/日)と非常に高い有意な正の相関関係を示した.
著者
新田 洋司 伊能 康彦 松田 智明 飯田 幸彦 塚本 心一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.315-320, 2008-07-05
被引用文献数
2 3

茨城県産米は従来より,整粒歩合,千粒重,粒厚,1等米比率が低いことが指摘され,改善が要望されていた.そして,茨城県等では2004年から「買ってもらえる米づくり」運動(以下「運動」)を展開している.本研究では,茨城県の作付面積が新潟県についで全国第2位(2004年)である品種コシヒカリについて,千粒重・粒厚と食味関連形質を調査して「運動」目標値等と比較した.そして,それらの形質の相互関係について検討した.調査は,茨城県内各地で品種コシヒカリを化学肥料によって一般的に栽培している20水田を対象とした.育苗,移植,管理,収穫作業等は当該水田管理者の慣行法によった.収穫後,収量および収量構成要素,精玄米の大きさ,食味関連形質等を調査した.収量は330〜617kg/10aの範囲にあった.玄米の粒厚は1.93〜2.02mm の範囲にあり,平均は1.99mmであった.玄米千粒重(20.3〜22.7g)の平均は運動目標値と同じ21.5gであった.玄米の粒厚と千粒重との間には有意な相関関係は認められなかった.一方,精米のタンパク質含有率(乾物重換算で5.3〜7.4%)の平均は6.4%であり,運動目標値よりも低かった.精米のアミロース含有率(18.3〜19.8%)の平均は18.9%であった.精米のタンパク質含有率,アミロース含有率,食味値と玄米千粒重または粒厚との間には,有意な相関関係は認められなかった.以上の結果,比較的千粒重か大きく粒厚が厚い玄米では,精米のタンパク質含有率やアミロース含有率が玄米の大きさに規定されない場合のあることが明らかとなった.また,本研究で用いた2005年茨城県産コシヒカリの食味および食味関連形質は,おおむね良好であったと考えられた.