著者
伊能 良紀 三井 利仁
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.C0925-C0925, 2007

【目的】高校野球には高等学校野球関連規定により、毎年12月1日から翌年3月20日まで練習に主点を置くために対外試合を禁止する規則がある(練習試合は3月第2土曜から解禁)。これをアウト・オブ・シーズン規定という。このアウト・オブ・シーズン規定により春の全国選抜高等学校野球大会(以下、選抜大会)と夏の全国高等学校野球選手権大会(以下、選手権)は、出場決定から本大会までの期間の練習目的が大きく異なる。選抜大会出場校は、選抜大会前にアウト・オブ・シーズンを挟むため、自チームの競技力向上はもちろんの事、秋季大会やそれ以前に受けた傷害・慢性障害(以下、障害)を治療・改善する事にも力を注ぎやすい。さらに、この期間に新たな傷害を受けない事が選抜大会で十分な能力を発揮する事に繋がる。今回、選抜大会出場校のアウト・オブ・シーズンに関わったので報告する。 <BR>【対象及び方法】選抜大会に出場した高校の野球部員21名(身長169.1±4.9cm、体重63.78±5.78kg)に対し、理学療法士と野球部専属トレーナーが外傷に対する応急処置・ケア等、傷害・障害から競技復帰へのコンディショニング・トレーニング指導等を行った。<BR>【結果】関わった人数は、全部員21名のうち、11名(投手4名、捕手1名、内野手4名、外野手2名)。傷害・障害部位は、肩5例、肘4例、腰部7例、股関節1例、膝4例、足部1例の23例。そのうち、急性外傷6例(肩3例、腰部1例、膝1例、足部1例)、慢性障害:17例(肩2例、肘4例、腰6例、股関節2例、膝3例)であった。関わった内容は、練習メニューとは別にテーピング3例、コンディショニング22例、トレーニング指導15例であった(重複あり)。<BR>【考察】様々な傷害・障害を持つ選手がいたが、この期間中に受傷する選手より、秋季大会中や秋期大会以前の野球歴から障害を持ち続けている選手が23例中17例と多かった。その理由として、投手が練習終了後にアイシングをするだけで、整理体操を行う選手も少なく、身体のケアに関心が低かったことが考えられた。アウト・オブ・シーズンの期間を利用して、傷害・障害に対する直接的なアプローチだけでなく、身体のケア・整理体操の必要性を選手に自覚させる取り組みとして、身体のケアについて講義も行った。選手が身体のケアに関心を持ち実践した事により、アウト・オブ・シーズン中に受ける傷害を減らす事ができた。さらに、秋期大会以前の障害も改善できた。以上から、身体のケアのみに練習時間が取られていたこれまでより、多くの練習量の確保ができた。今回の活動で、選抜大会での活躍に少なからず寄与でできたのではないかと考えている。今後の課題として、どのようなメディカルサポートがアウト・オブ・シーズンにとって適切か調査・研究していきたい。<BR>
著者
伊能 良紀 崎山 加奈 本間 昌大 西原 美樹 比嘉 育子 長尾 浩志 清水 かつみ 矢崎 真一 波照間 光茂
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E1650, 2008

【はじめに】当院は、平成18年10月に八重山諸島唯一の回復期リハビリテーション(以下、リハ)病棟28床を開設した。八重山諸島は、周囲を海に囲まれ、石垣島を中心に大小8の有人島からなり、沖縄本島から約400km離れている。この地域は、医療・介護保険下のリハサービスの量が不足しており、また退院後の生活をサポートする環境が十分ではない。今回、このような地域での回復期リハ病棟の現状及び課題について報告する。<BR>【対象】平成18年10月1日から平成19年9月30日までの1年間に当院回復期リハ病棟を退院した患者104名(男性31名、女性73名)を対象とした。平均年齢は、79.4±12.4歳(男性72.4±14.9歳、女性82.7±9.8歳)であった。<BR>【現状】当院回復期リハ病棟は、専従医師1名、専従PT3名、専従OT1名、ST1名で行っている。発症から入院するまでに要した日数は37.0±13.4日、平均在院日数は87.5±42.2日であった。紹介元は石垣島内の急性期病院が87.5%と多く、沖縄本島の急性期病院からの紹介もあった。対象疾患別では骨折等49.0%、脳血管疾患等39.4%、廃用症候群10.6%、靭帯損傷等1.0%であった。退院先は、自宅51.0%、施設21.2%、療養病床13.5%であり、その他は急変等であった。ADL評価はBarthel Index(以下、BI)を用いた。退院時BIは、自宅退院群70.9±25.5、施設退院群39.3±34.3であった。<BR>【問題点・課題】最大の問題点は、自宅復帰率が低いことである。自宅復帰には患者の能力や認知症の有無等様々な要因に影響されるが、家族環境にも影響される。親族(二親等内の介護が可能な者)の石垣島在住者数をみると、自宅復帰群の退院時BI40以下(7名)は5.3±2.0人、一方施設退院群のBI85以上(4名)は3.7±1.2人であった。統計的な優位差はなかったが、親族が患者の身近にいる事で自宅復帰しやすい傾向にあるといえる。特に八重山諸島は他の地域と陸続きではないため、沖縄本島や本土にいる親族が介護のために八重山諸島へ帰るという事は経済的負担が大きいので難しい。よって地域内に親族が多い事が、自宅復帰の大きな要素の1つと考える。また、退院後の自宅生活を支援するサービスの量が圧倒的に不足している。昨年報告したようにPT/OT/STの人員不足と、通所リハでは一事業所あたりの利用者が、八重山諸島では26名(全国:9.6名)と多いことなど、サービス面の不足があげられる。これに加えてさらに、低い平均所得、高い物価、高い共働き率、地域の施設依存心もこの地域の在宅復帰率を下げる要因となっている。<BR>【終わりに】この地域では、家族環境や高い共働き率による介護力の低さ、高い施設依存心という問題点を抱えている。今後の課題として、自宅復帰率を増加していくために、早期から家族及びケアマネージャーと連携し自宅復帰を意識させたり、少ないサービスや介護力を有効に使い自宅復帰可能な環境設定を提供していく必要がある。