著者
村中 智彦 藤原 義博 伊藤 さと子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.58-75, 2007-07-30
被引用文献数
1

研究の目的 知的障害児の個別指導において、逸脱反応の生起を防ぎ課題遂行反応を高める最適な試行間間隔(ITI)の設定を検討することを目的とした。研究計画 ITIの量的な相違が従属変数に及ぼす効果を検討するために反転計画法(B-A1-B-A2-Bデザイン)を適用した。場面 大学での机上課題を行う個別指導。対象児 2名の知的障害男児で、S1は10歳、S2は8歳であった。独立変数の操作 見本合わせの難度が異なる絵カード課題と単語カード課題の遂行事態で、ITIを0秒として教示を遅延しない(ND)条件、5カウントの間隔で教示を遅延する(5D)条件、3カウントの間隔で教示を遅延する(3D)条件を実施した。行動の指標 (1)課題遂行反応(絵や単語カードを取る、台版に置く)の潜時2秒以内の反応数の割合、(2)逸脱反応(離席、絵や単語カードを口に入れる)の割合であった。結果 (1)S1のカードを取る課題遂行反応の潜時2秒以内の反応数の割合は、両課題に共通してND条件で高く5D条件と3D条件で低下した。S2のカードを取る反応は、絵カード課題ではND条件で高く5Dと3D条件で低下し、単語カード課題ではNDと3D条件で高く5D条件で低下した。S2のカードを台版に置く反応は、両課題に共通して実験後半のND条件で5Dと3D条件よりも高かった。(2)S1、S2ともに、カードや指を口に入れる・折る逸脱反応が、両課題に共通して実験後半の5Dと3D条件でND条件よりも高かった。結論 対象児がいつでも課題遂行できるようにITIを0秒として教示を遅延しない設定が最適であることが確認された。