著者
平澤 紀子 藤原 義博
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.313-321, 2002-09-30 (Released:2017-07-28)

本研究は、激しい頭打ちを示す重度知的障害児に対して、機能的アセスメントに基づいた課題指導に、できるだけ選択機会を設定することによって、すみやかに頭打ちの低減を図ることを目的とした。機能的アセスメントから、頭打ちには、課題からの逃避と感覚刺激の獲得機能が推定された。そこで、課題の遂行手続きを形成した上で、課題や選択機会を段階的に設定した。また、課題から逃避させない、感覚刺激を遮断するという結果条件の操作を行った。その結果、頭打ちは指導開始後の早い段階で低減し、課題の設定後も維持され、選択機会の設定後ほぼ生起しなくなった。一方、課題量や種類の拡大に伴って生じた新たな逸脱行動は、その時点の機能的アセスメントに基づいた指導手続きによって低減した。この結果は、本指導手続きによって、課題の嫌悪性を高めている確立刺激と頭打ちの強化・維持要因が改善されたことによるものと考えられた。以上を基に、自傷行動のある重度知的障害児への課題指導について言及した。
著者
平澤 紀子 藤原 義博 山本 淳一 佐囲東 彰 織田 智志
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.108-119, 2004-06-30 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

近年の応用行動分析学では、発達障害児者の行動問題を解決するために、積極的行動支援(PositiveBehavioral Support)に代表されるように、行動問題を減らすだけでなく、QOLの向上を積極的に目指していこうという動きがある。そのために、日常場面においては、行動分析学を提供する人と対象者に直接支援を行う人々との協働を前提としているが、その成果は関与する個人や環境の対応能力に委ねられているという指摘にとどまっている。そこで、本論文では、教育・福祉現場において積極的行動支援に基づく実践が行動問題の減少だけでなく、適応行動の増加を実現し、それを継続し拡大するためには何が必要かを明らかにすることにした。そのために、積極的行動支援の2つの基準とともに、実践上の課題を提示している2つの事例を検討し、そのことを通して、どのように積極的行動支援を進めることが有効か、また、その際の課題は何かについて考察した。
著者
平澤 紀子 藤原 義博
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.11-19, 1995-09-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1 1

本研究は、困難課題からの逃避機能を持つ問題行動が機能的に等価な"援助"要求行動に置き換えられ維持されるのに必要な条件を、日常文脈において伝達性が異なると推定される援助を特定している行動と特定していない行動の2つの援助要求行動により検討した。実験1では、発達遅滞児2名を対象に、2つの援助要求行動を、それに対する援助率を操作的に高めることにより形成した。その結果、両児共2つの行動で同様に問題行動との置換が成立した。実験2では、援助率は操作せずに、非訓練者に対して、伝達性により援助率に差が生じるかどうか、その援助率の差が問題行動の低減に影響するかどうかを検討した。その結果、両児に差はあるが、伝達性により援助要求行動の援助率が規定され、問題の低減に影響される可能性が示された。これらの結果から、問題行動と置換されるべきコミュニケーション行動の条件について、伝達性の観点から考察した。
著者
藤原 義博 宍戸 和成 井上 昌士
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

知的障害特別支援学校の授業において、やりとり機会と協同的学習機会を創造するのに、以下の設定の有効性が示唆された。即ち、人や物が行動の手がかりとして機能する文脈の設定、活動に共通する具体物や発信や応答を強化する手掛かり教材の活用、集団随伴性の強化を理解させるための個別的支援、教師の役割の子どもへの移行、複数の子どもが同時に参加可能な役割の設定、発信者と受信者双方の同時並行的な参加の設定、であった。
著者
藤原 義博
巻号頁・発行日
2013

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2010-2012
著者
村中 智彦 藤原 義博 伊藤 さと子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.58-75, 2007-07-30
被引用文献数
1

研究の目的 知的障害児の個別指導において、逸脱反応の生起を防ぎ課題遂行反応を高める最適な試行間間隔(ITI)の設定を検討することを目的とした。研究計画 ITIの量的な相違が従属変数に及ぼす効果を検討するために反転計画法(B-A1-B-A2-Bデザイン)を適用した。場面 大学での机上課題を行う個別指導。対象児 2名の知的障害男児で、S1は10歳、S2は8歳であった。独立変数の操作 見本合わせの難度が異なる絵カード課題と単語カード課題の遂行事態で、ITIを0秒として教示を遅延しない(ND)条件、5カウントの間隔で教示を遅延する(5D)条件、3カウントの間隔で教示を遅延する(3D)条件を実施した。行動の指標 (1)課題遂行反応(絵や単語カードを取る、台版に置く)の潜時2秒以内の反応数の割合、(2)逸脱反応(離席、絵や単語カードを口に入れる)の割合であった。結果 (1)S1のカードを取る課題遂行反応の潜時2秒以内の反応数の割合は、両課題に共通してND条件で高く5D条件と3D条件で低下した。S2のカードを取る反応は、絵カード課題ではND条件で高く5Dと3D条件で低下し、単語カード課題ではNDと3D条件で高く5D条件で低下した。S2のカードを台版に置く反応は、両課題に共通して実験後半のND条件で5Dと3D条件よりも高かった。(2)S1、S2ともに、カードや指を口に入れる・折る逸脱反応が、両課題に共通して実験後半の5Dと3D条件でND条件よりも高かった。結論 対象児がいつでも課題遂行できるようにITIを0秒として教示を遅延しない設定が最適であることが確認された。
著者
平澤 紀子 藤原 義博
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.4-24, 2000-09-25
被引用文献数
5

研究の目的 養護学校高等部生徒の他生徒への攻撃行動に対する機能的アセスメントに基づく指導をpositive behavioral supportをcontextual fitの観点から、(1)仲間に向けた攻撃行動に対するO'Neill et al.の機能的アセスメントに基づく支援計画の立案様式を検討し、(2)学級担任が現在の学校体制に適合させる過程を明示した。研究計画 形成評価と事前・事後評価を用いた。場面 養護学校高等部において攻撃行動が頻繁に生起する登校場面と昼休み場面と生起しない学級場面で実施した。対象 攻撃行動を起こす高等部1年の男子生徒1名と攻撃の相手となる生徒及び学級の生徒を対象とした。全般的手続き 攻撃行動の生起を防止しながら、学校体制のアセスメントから学級担任の実効可能な条件を明確化し、それに基づいて、機能的アセスメント、指導計画の立案、指導手続きを決定した。指導手続きは、学校場面では、対象生徒と学級の生徒に対して機能的アセスメントで選定された適切なかかわりや活動スキルを形成する一方で、登校・昼休み場面では、これらの標的行動を対象生徒と相手の生徒の双方に指導した。行動の指標 登校・昼休み場面における対象生徒の攻撃行動、適切なかかわり、相手の生徒との接触、対象生徒と相手の生徒とのかかわりのパターンを測定した。結果 対象生徒の攻撃行動は低減し、相手の生徒との適切なかかわりのパターンが増加した。結論 仲間に向けた攻撃行動には、機能的アセスメントに生徒同士のかかわりの分析を加え、O'Neill et al.の様式を修正することは有効であった。また、高等部体制において、学級担任が行う機能的アセスメントやそれに基づく指導の実行過程が明示された。