著者
藤原 洋樹 村中 智彦
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.193-204, 2012

中学校において、オープン教室「朝教室」を始業前に設置し、学習困難を示す生徒への学習指導を試みた。教師が実行しやすい教室の設置方法や生徒の通室を促し、課題遂行を高める指導方法について検討した。指導期間は11か月で、指導対象は学習困難を示す生徒を含む通室中のすべての生徒であった。教師10名と支援員4名が指導を行った。介入期では、生徒の通室を促すため、学年の生徒全員と保護者に教室の案内を行い、困難生徒には個別の声がけを行った。教室で生徒が取り組む課題は、数学と社会科のプリント課題であった。プリント課題では、生徒が学習の達成感を繰り返し得られるように1枚当たりの問題数を減らした。生徒が課題に取り組む手続きでは、生徒自らがプリント課題の選択を行い、採点するセルフ方式を取り入れた。介入の結果、一般生徒の通室が増加すること、教師のマンツーマンによる指導が困難生徒の課題遂行を高めること、三者面談や友人関係を生かした個別の声がけが困難生徒の通室を促すこと、教師の指導に要する負担の軽減が教室の継続を支えることが示唆された。
著者
村中 智彦 藤原 義博 伊藤 さと子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.58-75, 2007-07-30
被引用文献数
1

研究の目的 知的障害児の個別指導において、逸脱反応の生起を防ぎ課題遂行反応を高める最適な試行間間隔(ITI)の設定を検討することを目的とした。研究計画 ITIの量的な相違が従属変数に及ぼす効果を検討するために反転計画法(B-A1-B-A2-Bデザイン)を適用した。場面 大学での机上課題を行う個別指導。対象児 2名の知的障害男児で、S1は10歳、S2は8歳であった。独立変数の操作 見本合わせの難度が異なる絵カード課題と単語カード課題の遂行事態で、ITIを0秒として教示を遅延しない(ND)条件、5カウントの間隔で教示を遅延する(5D)条件、3カウントの間隔で教示を遅延する(3D)条件を実施した。行動の指標 (1)課題遂行反応(絵や単語カードを取る、台版に置く)の潜時2秒以内の反応数の割合、(2)逸脱反応(離席、絵や単語カードを口に入れる)の割合であった。結果 (1)S1のカードを取る課題遂行反応の潜時2秒以内の反応数の割合は、両課題に共通してND条件で高く5D条件と3D条件で低下した。S2のカードを取る反応は、絵カード課題ではND条件で高く5Dと3D条件で低下し、単語カード課題ではNDと3D条件で高く5D条件で低下した。S2のカードを台版に置く反応は、両課題に共通して実験後半のND条件で5Dと3D条件よりも高かった。(2)S1、S2ともに、カードや指を口に入れる・折る逸脱反応が、両課題に共通して実験後半の5Dと3D条件でND条件よりも高かった。結論 対象児がいつでも課題遂行できるようにITIを0秒として教示を遅延しない設定が最適であることが確認された。
著者
本田 智寛 村中 智彦
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.42-64, 2010

研究の目的 自閉症児を対象に、学校の朝の会場面で報告言語行動(タクト)と聞き手への接近行動のシミュレーション指導を行い、直接指導を行わない自由場面でのタクトと接近行動の形成を目指した。その中で、タクトの指導手続きやシミュレーション指導場面の役割について検討した。研究計画 ベースライン、介入1期、介入2期で構成した。場面 対象児の在籍する小学校の特別支援学級の朝の会をシミュレーション指導場面とした。登校時、20分休憩と昼休みの開始時および終了時の5場面を自由場面とした。対象児 小学校の特別支援学級に在籍する自閉症男児2名であった。介入 介入1期では、各自由場面の「○○に行ってきました」などのタクトと接近行動のシミュレーション指導を朝の会で行った。介入2期では、朝の会場面でのシミュレーション指導の中で、タクトに先行する聞き手への接近行動を高めた手続きを分析し、「行ってきましたカード」などの手続きを自由場面に導入した。行動の指標 タクトの正反応と単語反応の生起を測定した。接近行動をプロンプトレベルで評価した。結果 介入1期では、タクトは生起したが、接近行動の遂行は高まらなかった。介入2期では、接近行動の遂行レベルの向上が認められた。結論タクトにおける接近行動の重要性とシミュレーション指導を行う授業場面の生起条件の分析としての役割が示された。