著者
伊藤 喜雄 平泉 光一 加瀬 良明 小澤 健二 青柳 斉 伊藤 忠雄
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

米主産地の現地調査及び流通業者からの情報提供により、新食糧法下の米流通の規制緩和は、従来の自由米市場ですでに発生していた産地間競争に加えて、卸・小売等の業者間競争を本格的かつ全国的に展開させていることが分かった。具体的には、以下の点である。1.新潟県や北陸3県、島根県などコシヒカリ品種に代表される良食味米の主産地や、大都市近郊産地の千葉・兵庫・滋賀県などでは、生産者及び農協レベルで計画外流通の販売対応が拡大しつつある。そこでは、生産者グループ・法人組織や農協において、栽培協定や品質管理、販売促進の強化など多様な産地マーケティングが展開している。2.スーパーや米卸業者、米小売専門店等の中には、上述の主産地と直接的な取引関係を結ぶ業者も多数登場している。その結果、産地ブランドの地域的細分化が進み、産地間及び流通業者間で競争が激しくなっている。特に、過剰下の買い手市場の中で、大手スーパーの産地掌握が強まっており、農協の米マーケティングの展開に大きな影響を与えている。3.北海道や東北、熊本・佐賀県などの非良食味米産地では、米需給関係の過剰基調のもとで、生産者及び農協の当初の自主販売の動きは止まり、計画流通による連合会での統一販売対応に回帰しつつある。そこでは、米流通再編の担い手である大手スーパー等に対して、経済連・全農の組織再編による系統米販売体制の強化が模索されている。4.米国や中国の海外ジャポニカ米主産地に関しては、産地レベルでの技術開発では食味よりも収量志向が強く、国産米と競合する現地のブランド米(良食味米)は量的には極めて少ない。そのため、品質面で日本との競争力は現在時点では小さいと言えそうだ。2年間の実態調査により,現下の米産業の競争構造に関して以上の点が明らかになった。