著者
青柳 斉
出版者
新潟大学農学部
雑誌
新潟大学農学部研究報告 = 新潟大学農学部研究報告 (ISSN:03858634)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.71-81, 2005-03

中国長江中下流域における米主産地で、近年の生産・流通には以下のような特徴が見られる。第一に、早稲・|米の減少と中稲・粳米の増大である。とりわけ江蘇省で、90年代に|米生産から粳米の生産・消費に急速に移行している。第二に、但し、中稲が増えている中国南方の米主産地すべてで生じているのはない。例えば湖南や江西の中稲は|米であり、依然として粳米の生産・消費が増える傾向にはない。第三に、インディカ種の普及は、中国南方で80年代に急速に進展し、江西・湖南等の|米主産地においては、すでにほとんどの|米生産において雑交稲が普及している。最後に、最近の品種構成の変化は、近年の食糧販売の自由化政策によって促進されている。The rice-producing district down the valley of China CHANG JIANG has recently the following characteristics of the rice production and distribution. Firstly, in that rice-producing district, early variety of rice (indica type rice) has been decreasing and middle (of early and late) maturing rice (japonica type rice) has been increasing. Especially, JIANG SI changed rapidly from indica type rice production to japonica type rice production and consumption in 1990ages. Secondly, however its changing of rice variety has not spread throughout the rice-producing district of the southern CHINA. For example, Middle maturing rice in HUNAN and JIANGXI is indica type rice, and both districts still have not the trend to increasing the japonica type rice production and consumption. Thirdly, in 1980'ages, indica type rice breeds had developed rapidly in southern China, and hybrid rice has spread in the indica type rice-producing center such as HUNAN and JIANGXI. Lastly, recent changing of the rice variety structure is promoted by the policy of deregulating food-selling obligation..
著者
朴 紅 青柳 斉 李 英花 郭 翔宇 張 錦女
出版者
北海道大学農学部農業経済学教室
雑誌
農経論叢 (ISSN:03855961)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.101-115, 2010
被引用文献数
1

中国東北地方は、近年アジアにおける有数のジャポニカ米の産地として急速な成長を示し、注目されてきた。しかし、米生産量の拡大は物流体制の未整備もあり、2003年を頂点に深刻な過剰をもたらした。その結果、東北地方内部においても激しい産地間競争が行われ、米のブランド化をめぐって品種改良や栽培技術の向上、マーケティングなどに力が入れられるようになっている。本論では、古くから良質米産地として著名である黒竜江省五常市を対象として、現段階における高級ブランド米産地の形成要因を明らかにする。まず、五常市の稲作生産と産地形成の特徴を述べた上で、第1には産地の新たな市場対応とブランド形成について分析を行う。産地の担い手が糧食局から分化・独立した精米加工企業から近年設立された農民専業合作社へと急速にシフトしていることが示される。第2には産地基盤としての農業構造の特徴を明らかにする。まず、朝鮮族の割合が高く、韓国などへの海外出稼ぎなどにより農地の賃貸借が増加し、大規模経営が形成されている点、つぎに、品種改良による優良品種の普及と臨時雇用型の有機栽培経営が行われている点が明らかにされる。
著者
朴 紅 青柳 斉 李 英花 郭 翔宇 張 錦女
出版者
北海道大学大学院農学研究院
雑誌
北海道大学農經論叢 (ISSN:03855961)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.101-115, 2010-03-31

North East China has attracted attention as it has become one of the few leading production areas of japonica rice. However, because of the expansion of rice production and the inadequate commodity flow system, there has been severe over-production since the production peak of 2003. It resulted in fierce competition among production areas there. Since then, there has been focus on product branding with variety, growing techniques, and marketing improvement etc. This study focuses on understanding the reasons behind the formation of the high-class brand rice production area in Wuchang City, Heilongjiang Province, which is famous for rice production in the past. In terms of marketing, independent rice polishing enterprises differentiated from the Food Bureau. Recently the farmers specialized cooperative has taken up the main responsibility of product branding. The foundation of the production area has two characteristics. The first one is that since many Korean farmers in this area go to their home country (Korea) to work, more and more of their land is lent to other farmers, resulting in a formation of large scale farming. The second one is that the quality of rice has spread with an improvement in variety and an improvement of organic rice production.
著者
青柳 斉
出版者
新潟大学
雑誌
新潟大学農学部研究報告 (ISSN:03858634)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.64-70, 2007-03
被引用文献数
3

米の農協マーケティングの展開は、需要量に応じた生産目標数量配分方式の普及に加えて、外食産業の消費増や消費者の米需要の多様化によって促進されている。そのため、米の主産地では、業者の多様なニーズに即応できる集荷・販売方式や、多様な価格帯に対応した販売政策の導入がマーケティングの手法として重要になってきた。但し、農協マーケティングの展開形態は、産地の立地条件や直面している市場条件の特徴によって異なる。魚沼みなみ農協は、高級銘柄米産地における農協マーケティングの先進事例である。当農協は、専任の営業担当者を配置して、有機米等の独自販売を拡大している。そして、高級銘柄米としての品質保証のために、品質評価にもとづいて生産者に栽培改善を指導している。但し、品質評価に基づく区分集荷や生産者に対する報奨制度は導入していない。その理由は、当農協のマーケティング戦略が、高級銘柄米「魚沼コシヒカリ」を「主食」としてではなく、「特産物」として安定的な販路を拡大することにあるからである。
著者
張 鎮奎 伊藤 亮司 青柳 斉
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.386-397, 2012-12-25

牛乳消費の減少傾向に加えて,生乳価格の低迷と飼料価格の上昇によって,近年,酪農経営は厳しい経済環境に直面している。乳牛飼養農家戸数は,90年の6万3,300戸から2000年に3万3,600戸,2010年には2万1,900戸までに激減した。乳牛飼養頭数では,92年の2,082千頭を最大として以後減少に転じ,2000年に1,765千頭,10年には1,484千頭へと減少している。さらに牛乳生産量では,96年の8,659千トンが最大で,2000年8,415千トン,09年7,881千トンといように,生産性(1頭当たり生乳生産量)の上昇によって飼養頭数ほどではないものの生産量も徐々に減少してきている。このような酪農家,飼養頭数の減少は,酪農協の解散や組織の再編を促してきた。農水省「農協数現在統計」によれば,酪農協数は70年の650組合から80年574組合,90年520組合,94年には454組合へと減少した。95年度末に農水省の定義変更により,信用事業を兼営する酪農協は総合農協にカウントされた。そこで,95年の酪農協数は383組合になったが,05年258組合,09年198組合へとその後も減少が続く。特に,70~90年の20年間で130組合の減少に対して,95~09年の14年間で185組合も減少しており,近年の減少度合いが特に大きい。
著者
朴 紅 青柳 斉 伊藤 亮司 張 錦女 坂下 明彦
出版者
北海道大学大学院農学研究院
雑誌
北海道大学農経論叢 (ISSN:03855961)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.61-69, 2011-03-03

This is the second of the essays that study the development of organic rice production areas based on the case of Heilongjiang Wuchang City, which is famous for being the breadbasket of quality rice. In this study, Minle Township, which is the core area of organic rice production in Wuchang City, is chosen for the research. This essay also summarizes the process Minle County underwent to become an organic rice growing area. Furthermore, three production and sales organizations are given as examples, and their organic rice management characteristics are analyzed. The first case is the Fengsu Cooperative, which is an extensive and specialized farmersユ cooperative established in 2006 with 450 household members and a 2,000-hectare production base. The next case is the Farming Science and Technology Association, which is an organization centered on skilled peasant households, established in 2002. This association is transregional and has 100 household members and a 300-hectare production base. The third case is the Meiyu Cooperative, established by villager groups in 2008. With 100 household members and a 200-hectare production base, the Meiyu Cooperative is an organization based on and controlled by an enterprise providing a residence community for their members. In addition, although several peasant households receive orders directly from the enterprise,spontaneously-organized peasant cooperatives are more common, against the backdrop that organic longgrain rice now sells at high prices. All these factors demonstrate the characteristics of Minle County as a production area of premium rice.
著者
伊藤 喜雄 平泉 光一 加瀬 良明 小澤 健二 青柳 斉 伊藤 忠雄
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

米主産地の現地調査及び流通業者からの情報提供により、新食糧法下の米流通の規制緩和は、従来の自由米市場ですでに発生していた産地間競争に加えて、卸・小売等の業者間競争を本格的かつ全国的に展開させていることが分かった。具体的には、以下の点である。1.新潟県や北陸3県、島根県などコシヒカリ品種に代表される良食味米の主産地や、大都市近郊産地の千葉・兵庫・滋賀県などでは、生産者及び農協レベルで計画外流通の販売対応が拡大しつつある。そこでは、生産者グループ・法人組織や農協において、栽培協定や品質管理、販売促進の強化など多様な産地マーケティングが展開している。2.スーパーや米卸業者、米小売専門店等の中には、上述の主産地と直接的な取引関係を結ぶ業者も多数登場している。その結果、産地ブランドの地域的細分化が進み、産地間及び流通業者間で競争が激しくなっている。特に、過剰下の買い手市場の中で、大手スーパーの産地掌握が強まっており、農協の米マーケティングの展開に大きな影響を与えている。3.北海道や東北、熊本・佐賀県などの非良食味米産地では、米需給関係の過剰基調のもとで、生産者及び農協の当初の自主販売の動きは止まり、計画流通による連合会での統一販売対応に回帰しつつある。そこでは、米流通再編の担い手である大手スーパー等に対して、経済連・全農の組織再編による系統米販売体制の強化が模索されている。4.米国や中国の海外ジャポニカ米主産地に関しては、産地レベルでの技術開発では食味よりも収量志向が強く、国産米と競合する現地のブランド米(良食味米)は量的には極めて少ない。そのため、品質面で日本との競争力は現在時点では小さいと言えそうだ。2年間の実態調査により,現下の米産業の競争構造に関して以上の点が明らかになった。
著者
青柳 斉 伊藤 亮司
出版者
地域農林経済学会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.289-294, 2010-09-25

The consumer questionnaires done in the cities southward from Chang Jiang revealed that per capita rice consumption had been decreasing due to consumption of non-staple food and wheat products. In addition, about half of the answerers to the questionnaire had increased their japonica rice consumption. Consumers with a taste for sticky rice account for about 60% of the answerers. These indicate that southward from Chang Jiang, where the majority of rice produced is indica rice, there is a large market for Northeast rice, i.e., sticky japonica rice. On the other hand, most answerers indicated a taste for aromatic rice, which is related to rating Thai rice highly. Therefore, it is assumed that enlargement of the market for Northeast rice is conditioned by the relative price to indica rice and the possibility of breeding japonica rice as an aromatic rice.
著者
泉田 洋一 立川 雅司 加古 敏之 新山 陽子 青柳 斉 生源寺 眞一 茂野 隆一 坂下 明彦 川手 督也 荒幡 克己
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、日本の農業・農村経済学の成果を個別関連学会の活動成果総体として分析すると同時に、共通課題を抽出して、その方向性を見極めんとするものである。具体的には14の農業経済関連学会の成果を時系列的に分析し、共通課題の抽出にあたっては、各学会の学会誌掲載論文の形態分析、会員へのアンケート調査に加えて、国際農業経済学会、韓国、台湾、中国の農業経済学会の動向についても詳細な分析を行った。成果は拡大しているものの国際化や情報化への対応等における課題が浮き彫りになっており、関連学会間の相互補完(複合結合)が必要となる。