著者
田中 正人 木村 繁 手代木 扶 松本 泰 伊藤 猛男 赤石 明 水溜 仁士 大久保 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.442-451, 1993-05-25
被引用文献数
20

1994年打上げ予定の技術試験衛星VI型に搭載して我が国初の衛星間データ中継実験を行うSバンド衛星間通信用アンテナ(SIC)について述べる.SICは衛星搭載としては世界初のオンボードビーム形成マルチビームフェーズドアレーアンテナであり,電気的にビーム走査を行い複数の周回衛星(ユーザ衛星)との間で同時にデータ中継することができ,また,オンボードマイクロプロセッサを用いてユーザ衛星の位置を計算し自動的にビームを向ける,などの特徴を有している.オンボードビーム形成方式は米国のデータ中継衛星の方式に比べて我が国のようにユーザ衛星が比較的少ない場合に周波数と電力の有効利用が図れるなどの利点を有する.本論文ではまず,SICの機能・構成について述べ,つぎに温度変動等に起因する位相・振幅誤差の影響を含めたアンテナ解析について述べる.更に,主要コンポーネントとして新たに開発した広帯域マイクロストリップアンテナ,小型で位相誤差の少ないビーム形成回路,ユーザ衛星の軌道計算を行う移相器コントローラについて述べる.最後にSICの搭載モデルの総合試験結果を述べる.