著者
伊藤 祥子
出版者
学校法人 東洋大学現代社会総合研究所
雑誌
現代社会研究 (ISSN:1348740X)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.16, pp.5-14, 2018 (Released:2019-10-31)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本稿の目的は、流通過程の情報化の現状を整理することである。情報化の中でもインターネットの登場は流通過程における情報流に多くの変化をもたらした。それらについての部分的な研究は数多くあるが、それらを俯瞰して、また近時の問題点を含んで論じているものは少ない。したがって本稿はその全体像を描くことを目的としている。 その方法として、まず情報流の概念を再考しながらインターネット登場後の情報流の変化を跡づける。そこでいくつかの問題点、特にパーソナルデータに関するものを指摘する。そして情報と制御の流通理論を参照し、今日の流通過程におけるICTによるデータ流通の拡大やそれを利用したマーケティング、あるいは市場メカニズムの高度化を明らかにする。結論として、消費者の情報が市場の制御域で拡大していることが示され、そのことの意味も明らかにされる。
著者
錦織 達啓 伊藤 祥子 辻 英樹 保高 徹生 林 誠二
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.63-69, 2015-02-01 (Released:2015-04-07)
参考文献数
32
被引用文献数
4 10

林床からの137Cs流出の起きやすさを知るため,福島県内の林床被覆状況が異なる四つの林分を対象に,斜度37~39°の斜面に3 m2の試験プロットを設け,2013年5月から10月の145日間,表面流出水に含まれる懸濁態および溶存態137Csを観測した。137Csは最大でも土壌蓄積量の1.1%しか移動しなかったが,その移動量はプロット間で最大10倍異なり,ヒノキ林で最も多く,次いで落葉広葉樹林,アカマツ林,スギ林となった。移動した137Csの96%以上が懸濁態であり,土壌侵食量は下層植生や有機物層に乏しいプロットで多かったことから,林床被覆量が137Cs移動量に強く影響したと推察された。表面流出水と近傍の渓流水中の懸濁物質の双方において,137Cs濃度と有機物量の間に正の相関が確認された。これにより,渓流水中の137Csの一部が林床起源であること,その林床起源の137Csは主に有機物層に由来していたことが示唆された。ヒノキ林は林床被覆に乏しい傾向にあるが,福島県には少ないため,最も広く分布する広葉樹林の林床被覆状況が森林からの137Cs流出に大きく影響すると考えられた。