著者
三島 好雄 北郷 邦昭 伊藤 雅史 仁瓶 善郎 西 直人
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

小口径血管手術後の長期開存率は極めて不良であり,本研究では臨床応用可能な小口径人工血管の作製と,閉塞原因としての仮性内膜肥厚などの出現機転の解明を目的として実験的臨床的に検討した.試作した人工血管は優れた抗血栓性を示す2-methacryl-oxyethyl phosphoryl-choline(MPC)ポリマーとsegmented polyur ethane(SPU)の混合溶液を直径2mmのDacr on人工血管に吸着させて作製し,長径2cmのMPC人工血管を,micr osur ger yによって家兎頚動脈に移植した.対象としてSPUのみを吸着させた人工血管を作製して,同様に移植した.コントール人工血管の内腔は移植90分で既に赤色血栓が形成され,全例3日以内に閉塞した.一方,MPC人工血管では,移植5日後の内腔面には血栓形成は認められず,移植1週後には内腔全体は薄いフィブリン様の膜で被われ,移植2ヶ月後には新生内膜の形成が認められ,直径2mmと極小口径であるにもかかわらず,移植後早期の開存率は良好であった.本人工血管は,仮性内膜のanchoringを改善することにより,臨床応用への可能性が示唆された.一方,閉塞原因としての仮性内膜肥厚は動脈壁に対する損傷の治癒過程であり,抗PDGF作用を有する薬剤の投与で抑制されたこと,異なるePTFE人工血管で内膜肥厚度に相違が見られるなど,薬剤投与とグラフト構造の改良により,遠隔成績の向上が示唆された.臨床例では晩期閉塞例の検討から,新たな閉塞機序として仮性内膜剥離が問題となる点が示唆された.本研究の課題は世界的にも活発な研究が進められており,今後,更に検討を要するものと考えられる.