著者
伏本 佳織 上田 修一
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.62, pp.167-192, 2009

短報【目的】テレビニュースは,ニュースメディアの中で中心的な役割を果たしている。娯楽化とセンセーショナリズムへの移行は,常に批判されている。しかしながら,テレビのニュースの変化について調査がなされていないので,ソフトニュースの上昇率,およびニュースに対する過度の演出効果の導入について検証するために映像の分析と視聴者調査を行った。【方法】2008 年6 月に放送された100 のニュース番組を記録した。これらの番組は,日本のNHK と5つの放送局の1,697 のニュース項目からなっている。これらのニュース項目に対して,ニュースカテゴリ,ニュースのテーマ,ニュースのタイプ,キャスター,インタビュー形態,音響効果,映像効果,テロップによってコード化した。また,視聴者のテレビニュースに対する意識を知るために利用者調査(質問紙調査)を行った。【結果】ニュース項目の分析から,(1) デイリーニュースが過半数を占める,(2) バイオレントニュースは42.8%,(3) ソフトニュースは37.2%,(4) メインキャスターとサブキャスターがニュースを読むスタイルが大多数,(5) BGM は48.5%のニュースで使用されている,(6) テロップがよく使われている,(7) 発話の文字化のためにテロップが使われている,(8) テロップの文字の大きさやフォント,色の変更が頻繁になされている,ことが明らかになった。1997年に行われた先行調査と比べると,音響効果,映像効果,テロップの使用が増えた。この10年間にソフトニュースの割合は減ったが,過剰な演出は増加した。質問紙調査では,回答者は,日常的にテレビニュースをよく視聴し,現在のテレビニュースに満足していると回答した。しかし,自由回答には批判的な意見が多く,テレビニュースに対する潜在的な不満があると考えられる。