著者
倉田 敬子 三根 慎二 森岡 倫子 酒井 由紀子 加藤 信哉 上田 修一
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.61, pp.59-90, 2009

原著論文【目的】 本論文の目的は、 日本の医学研究者において、 電子ジャーナルの利用がどこまで進み、それにともない論文の読みの形態、 入手経路、 検索手段にどのような変化が生じているかを明らかにすることにある。 【方法】 日本で医学部、医学研究科を持つ80大学に所属する医学研究者2,033人を抽出し、質問紙調査を実施した。 質問項目は、先行研究の分析に基づき、以下のとおりとした。 1) フェイスシート 、2) 最近読んだ論文の形態、入手経路、検索手段、 3) 普段使う検索手段、書誌データベース、 4) オープンアクセス手段の認知度と利用。 【結果】 2007年3月までに回収できた651件を集計した(回収率32.3%)。 主な結果は以下のとおりである。 1) 最近読んだ論文の7割は電子版論文であった。 2) 電子版論文の85%は大学図書館が契約する購読電子ジャーナルであり、印刷版の6割は個人購読雑誌であった。 3) 最近読んだ論文の検索手段はPubMedが一般的で、全論文の7割弱、電子版論文の8割以上がPubMedによって検索されていた。 PubMedを週1回以上検索する研究者は9割に上った。 一方、最近読んだ論文をサーチエンジンで見いだした研究者はほぼ皆無であった。 4) オープンアクセスは論文の入手先としては、PubMed Central が1割利用されていた以外は使われていなかった。 5) 年齢による論文利用パターンに違いはなかったが、 専門領域(基礎系、臨床内科系、臨床外科系に区分)によっては大きな違いがあった 。
著者
宮田 洋輔 上田 修一 若宮 俊 石田 栄美 倉田 敬子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.109-118, 2017

<p>現代における学会発表の位置づけを考察することを目的として,ウェブサイトに対する事例調査とメールによる質問紙調査を実施した。54 学会を対象とした事例調査からは,研究集会の定期開催,開催事務局への依存と前例を踏襲する傾向が分かった。質問紙調査では世界中の285 学会からの回答を分析した。その結果,1)自然科学・医学系ではポスター発表も採用,2)ほとんどで査読を実施,3)人文学・社会科学系では配布資料・口頭のみでの発表も認められていること,4)発表資料の電子形式での記録,提供はあまりなされていないこと,などが明らかになった。以上から,研究者のインフォーマルな交流の場としての研究集会という認識は大きく変化していないこと,学会発表は研究集会の一部と見なされていること,発表を研究成果として独立して蓄積し,広くアクセスできるようにする意識が弱いことが示唆された。</p>
著者
安形 輝 上田 修一
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.84-96, 2019 (Released:2019-06-28)
参考文献数
25

印刷本のうち,電子書籍版が提供される割合は,年々,高まっていると考えられる。電子書籍化の進展を測るために,国立国会図書館の蔵書から印刷版の書誌データを得て主要な電子書籍プラットフォームの提供データと照合し電子化率を調査する手法を考案し,調査した。1)近年,電子化率は高くなっている,2)出版点数の多い出版社ほど電子化率は高い,3)各プラットフォームの提供する電子書籍には重なりがある,4)コミックの電子化率は高い,5)学術書の電子化率は高い,6)小説の電子化率は高いという仮説を設定した。 調査の結果,2017 年の電子化率は,36.6%となり,全ての出版物に展開した場合,約3 万点の電子書籍があると推計した。調査結果は,2)と5)以外の仮説を支持するものであった。 次に,国立国会図書館デジタルコレクションの収録件数を1901 年から1980 年まで調査し, 1960 年頃から2000 年頃までの間に電子書籍化の空白期間があることを指摘した。
著者
宮田 洋輔 上田 修一 若宮 俊 石田 栄美 倉田 敬子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.109-118, 2017 (Released:2017-07-14)
参考文献数
10

現代における学会発表の位置づけを考察することを目的として,ウェブサイトに対する事例調査とメールによる質問紙調査を実施した。54 学会を対象とした事例調査からは,研究集会の定期開催,開催事務局への依存と前例を踏襲する傾向が分かった。質問紙調査では世界中の285 学会からの回答を分析した。その結果,1)自然科学・医学系ではポスター発表も採用,2)ほとんどで査読を実施,3)人文学・社会科学系では配布資料・口頭のみでの発表も認められていること,4)発表資料の電子形式での記録,提供はあまりなされていないこと,などが明らかになった。以上から,研究者のインフォーマルな交流の場としての研究集会という認識は大きく変化していないこと,学会発表は研究集会の一部と見なされていること,発表を研究成果として独立して蓄積し,広くアクセスできるようにする意識が弱いことが示唆された。
著者
上田 修一 安形 輝 池内 淳 石田 栄美 野末 道子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究の目的は,分野を限定せず,日本語及び英語の学術論文への直接的なアクセスを保証し,公開された検索アルゴリズムを用いた学術論文に特化した検索エンジンの構築と評価である。ウェブクローリングを行うために機関リポジトリ収載ファイルを調査し,深層ウェブの存在などウェブ構造を明らかにした。また,日本語および英語で書かれた全分野の学術論文の構成要素と構成を調査し,その結果に基づいて,学術論文の自動判定を行うための判定ルールを構築した。次いでウェブから約300万件の日本語PDFファイルを収集し, Solrによる検索エンジンの構築を行った。既存の検索エンジンと比較評価を行った結果,構築した検索エンジン「アレセイア」は,論文へのアクセスの点で優れており,高い確率で学術論文を自動判定できることが明らかになった。
著者
石田 栄美 宮田 洋輔 神門 典子 上田 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.33, pp.85-92, 2006-03-22

書名だけでなく目次や帯情報を用いて,図書を日本十進分類法の分類カテゴリに自動分類する実験を行った。分類手法には,相対出現率と相互情報量にもとづく重み付けとSupport Vector Machine(SVM)による手法を用いた。「BOOK」データベースとNII-CATデータを統合した24 000件を用いて学習させたところ,重み付けに相対出現率と相互情報量を用いた場合は,書名に加えて目次と帯情報を用いた場合の効果が認められた。また,機械学習手法よりも,統計的手法のほうが有効であった。分類カテゴリの分野ごとの再現率を調べたところ,分野によって再現率に大きな差があった。さらに,帯情報などが有効な分野もあり,書名,目次,帯を用いた効果が分野ごとに異なることが明らかになった。In this paper, we describe methods of classifying Japan MARC records to class number of Nippon Decimal Classification. We compare the performance of three categorization method, based on mutual information(MI), relative frequency and SVM. In each method, training data are title and table of contents and blurb on the flap in Japan MARC records. The experimental results show that the best performance is MI using title and table of contents and OBI, but other methods are not. In failure analysis, we found the performance depends on subject of class number.
著者
南 友紀子 岩瀬 梓 宮田 洋輔 石田 栄美 上田 修一 倉田 敬子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.163-180, 2016 (Released:2016-12-07)
参考文献数
48

本研究では,van Deursen らの「デジタルスキル」を基礎に,従来の情報検索の専門的なスキルを組み込んだウェブ環境における情報検索スキルの現状を明らかにすることを目的とする質問紙調査を行った。2014 年8 月にオンライン調査を実施し,1,551 名から回答を得た。その結果,ウェブ環境で検索を行う人々は,(1)ブール演算子などの高度な情報検索技法は用いない,(2)ウェブ上の情報の形式は理解している,(3)検索語の選定に対する意識は高い,(4)一定の評価方針のもとに複数の検索結果を閲覧する,(5)インターネットから恩恵を受けていると感じている,ことが明らかになった。階層的クラスタリングにより回答者を8 クラスタに分割し,高い情報検索スキルを持つクラスタを特定した。この高能力者群は,比較的若く,男性が多く,学歴が高く,批判的思考能力と自己認識が高かった。高能力者群は全てのスキルの平均得点が最も高いが,検索技法に関するスキルのみ得点は大幅に低かった。
著者
上田 修一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.226-232, 2007-05-01 (Released:2017-05-09)
参考文献数
30
被引用文献数
3

BMからEBP,そしてEBL/EBLIPへという流れの中で,新しく始めた共同研究「エビデンスベーストアプローチによる図書館情報学研究の確立」では,研究におけるエビデンスとは何かの解明を目標に,図書館情報学研究における研究方法の再検討のためのワークショップの開催,EBL/EBLIPの導入などの活動を行っている。EBMに始まる根拠に基づいた進め方は広い支持を得ている。けれども,実際の場になると,検討すべき課題は多く,またエビデンスに対する考え方も多様である。
著者
南 友紀子 岩瀬 梓 宮田 洋輔 石田 栄美 上田 修一 倉田 敬子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.163-180, 2016

<p>本研究では,van Deursen らの「デジタルスキル」を基礎に,従来の情報検索の専門的なスキルを組み込んだウェブ環境における情報検索スキルの現状を明らかにすることを目的とする質問紙調査を行った。2014 年8 月にオンライン調査を実施し,1,551 名から回答を得た。その結果,ウェブ環境で検索を行う人々は,(1)ブール演算子などの高度な情報検索技法は用いない,(2)ウェブ上の情報の形式は理解している,(3)検索語の選定に対する意識は高い,(4)一定の評価方針のもとに複数の検索結果を閲覧する,(5)インターネットから恩恵を受けていると感じている,ことが明らかになった。階層的クラスタリングにより回答者を8 クラスタに分割し,高い情報検索スキルを持つクラスタを特定した。この高能力者群は,比較的若く,男性が多く,学歴が高く,批判的思考能力と自己認識が高かった。高能力者群は全てのスキルの平均得点が最も高いが,検索技法に関するスキルのみ得点は大幅に低かった。</p>
著者
上田 修一 武田 節夫 山脇 一郎 山下 純一 安本 三治 橋本 貞夫
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
CHEMICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.125-131, 1982
被引用文献数
8

A hydroxylated metabolite of 1-(tetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (FT), 1-(trans-3-hydroxytetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (trans-3'-OH-FT, VIII) and its isomer, 1-(cis-3-hydroxytetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (cis-3'-OH-FT, VI), were synthesized and isolated at high purity. As compounds related to FT metabolites, 2, 3'-anhydro-1-(cis-3-hydroxytetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (2, 3'-anhydro-FT, V), 1-(2, 5-dihydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (3', 4'-dehydro-FT, XII) and 1-(5-acetoxytetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (5'-AcO-FT, XI) were also synthesized. The antitumor activities of these compounds against sarcoma 180 and L 1210 were examined. The activities of cis-3'-OH-FT (VI) and 2, 3'-anhydro-FT (V) were found to be lower than that of FT. The activity of 5'-AcO-FT (XI) was the same as that of FT. 3', 4'-Dehydro-FT (XII) showed much greater activity than FT.
著者
山下 純一 山脇 一郎 上田 修一 安本 三治 采見 憲男 橋本 貞夫
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical & pharmaceutical bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.4258-4267, 1982-12-25

Six types of 5-fluorouracil (5-FU) derivatives were synthesized ; namely, 2,4-di-O-substituted, 2-O-substituted, 4-O-substituted, 1,3-disubstituted, 1-substituted and 3-substituted compounds. After oral administration of these compounds to rats, the blood levels of 5-FU were determined. Among O-substituted derivatives, a 4-O-substituted derivative was most easily activated to 5-FU and 2-O-substituted derivatives were next most easily activated. Among N-substituted derivatives, acyl and sulfonyl derivatives showed the highest 5-FU releasing abilities and 1-alkoxymethyl substituted derivatives showed low ability. N-Alkyl substituted derivatives were not activated to 5-FU. Several compounds which gave higher blood levels of 5-FU than that obtained with 1-(tetrahydro-2-furyl)-5-fluorouracil (Thf-FU), as well as same related compounds, were selected and their antitumor activities were examined. The 2-O-substituted derivatives, 2-butoxy-5-fluoro-4 (1H)-pyrimidone (11) and 2-benzyloxy-5-fluoro-4 (1H)-pyrimidone (19), were as effective as Thf-FU. The activities of 2,4-di-O-substituted derivatives, 2,4-dibutoxy-5-fluoropyrimidine (1) and 2,4-dibenzyloxy-5-fluoropyrimidine (6), against Ehrlich carcinoma and against sarcoma 180,respectively, were the same as those of Thf-FU. The 1-substituted derivatives, 1-ethoxymethyl-5-fluorouracil (49) and 1-(1-ethoxy-1-phenylmethyl)-5-fluorouracil (50), were found to be as effective as Thf-FU.
著者
小島 浩之 上田 修一 佐野 千絵 安形 麻理 矢野 正隆 吉田 成 内田 麻里奈 森脇 優紀 冨善 一敏 設楽 舞 野中 治 木部 徹 島田 要
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、記録媒体として紙に次ぐ歴史を有するにもかかわらず、これまで学術的な観点から調査・研究がなされてこなかったマイクロフィルムについて、図書館等への訪問実態調査(33機関)、および図書館と文書館への質問紙調査(大学図書館:1,378、都道府県立図書館:58、国立国会図書館:1、公文書館:75、大学文書館:88、専門図書館:380)を基軸とし、生産・出版・保存・活用・管理等の諸側面から総合的に分析した。

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著者
上田 修一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.636-638, 1986-12-01 (Released:2017-09-08)
被引用文献数
1
著者
國本 千裕 宮田 洋輔 小泉 公乃 金城 裕奈 上田 修一
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.199-212, 2009

本研究は読書の行為に焦点を当て「読書とはいかなる行為であるのか」を明らかにすることを目的としている。既存の読書研究は,読書の対象や,児童や生徒に対する読書指導といった側面に焦点を当てるものが多かった。これに対して本研究は,個人の行う読書は様々な次元からなる行為であると考え,成人を対象として読書の次元を明らかにしようと試みた。20代から40代の計29名を対象にフォーカス・グループ・インタビューを5回実施し,発言を分析した結果,読書とは,対象(何を読むのか)に加えて,志向(なぜ・何のために読むのか),行動(どのように読むのか),作用(読んだ結果何を得るのか),場所(どこで読むのか)の五つの次元から成る行為であることが明らかになった。特に対象は,物理的媒体,ジャンル,内容評価といった観点からみられる可能性が示唆された。