著者
伴 光哲 山内 健生
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.41-49, 2016-04-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
34

1. 屋久島の原生的照葉樹林,約40年生スギ人工林,および常緑針広混交老齢林において,Townes型マレーズトラップによってナガカメムシ上科を捕獲し,その環境指標性を検討した.2. 3科11属16種182個体が採集され,それらのうちの6属8種(ヨツボシチビナガカメムシ,ヒゲブトナガカメムシ,クロツヤナガカメムシ,キモンナガカメムシ,ルイスチャイロナガカメムシ,オオモンシロナガカメムシ,ムラサキナガカメムシ,イシハラナガカメムシ)は屋久島から初記録であった.3. 捕獲個体数が多かったヤスマツチビナガカメムシとオオモンシロナガカメムシはいずれも盛夏に捕獲の極大があった.4. 種数,個体数は島西部の原生的照葉樹林で最も高く,島東部の約40年生スギ人工林で最も低い値を示した.5. 多様度指数は島東部の原生的照葉樹林で最も高く,島東部の約40年生スギ人工林で最も低い値を示した.6. 重複度指数(R0)を基にクラスター解析を行った結果,隣接した地域の異なった植生タイプの森林より,距離が離れていても共通の植生タイプの森林の方が種構成の共通性が高く,種構成は植生に影響されることが示唆された.