著者
鈴木 浩史 中野 裕太 住谷 陽輔 湊 真一 前田 理
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:21888566)
巻号頁・発行日
vol.2018-AL-169, no.7, pp.1-6, 2018-08-27

化合物にはひとつの組成に対して様々な分子構造が存在し,それぞれで異なる性質を有する.化学反応における反応経路ネットワークとは,分子構造を頂点とし,遷移可能な分子構造の間に辺を引いたグラフ構造を指す.反応経路ネットワークの解析は,反応設計に携わる化学者の助けとなる重要なタスクである.本稿では,分子構造間の遷移に必要なエネルギーに着目し,エネルギーを制限した反応経路ネットワークの上で,特定の分子構造を始点とする単純経路を列挙する.ただし,経路の総数は組合せ爆発を起こすため,明示的な列挙は避けなければならない.そこで,SIMPATH アルゴリズムにより,暗黙的に全経路を格納したゼロサプレス型二分決定グラフ (ZDD) という圧縮データ構造を構築する.さらに,ZDD が持つ効率的な絞込み機能を応用することで,エネルギーの上限に対する可能な経路の抽出を行う.
著者
柳澤 慧 高橋 陸 中村 文彦 住谷 陽輔 飯田 良 新田 明央 倉 千晴 戸口 侑 小島 遼人 藤吉 隆雄
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.145-154, 2015-12

記者発表による市民への情報伝達過程では,情報はおおむね研究者,広報担当者,ジャーナリスト,市民の順で伝わる.そこで,記者発表に関与する専門職と考えられる研究者,広報担当者,ジャーナリストの役割を考え,情報伝達過程における課題と解決策を博士後期課程1 年次の大学院生の視点から考察した.市民に研究成果を届ける記者発表をする理由は二つある.税金を原資として運営する研究の市民に対する説明と,「トランス−専門知」が関わる領域での社会の意思決定のための情 報提供である.ここで記者発表をめぐる課題は六つ挙げられるだろう.研究成果の間違った理解と伝搬,研究成果の強調,社会からの関心の研究成果以外への集中,研究者個人と組織の立場の相反,研究不正や倫理的問題の発覚,そして,市民・ジャーナリスト・科学者の態度の違いである.これらの課題の解決策はおおむね,それぞれの専門職としての役割の認識と倫理教育,情報のフィードバック回路の形成に大別できる.ここから,記者発表に関わる三者の役割の違いを認識したうえで, 規範と現実の食い違いは生じるとの前提でシステムの設計をするのが重要である.そして,その設計において大事なことは認識のずれを許容し吸収する仕組みの準備である.そのためには,バッファーとしての役割を担う中間的専門家が活動できる基盤が必要である.