著者
野並 慶宣 斉藤 信 佐々木 康弘 鈴木 敦士
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.698-703, 1983-12-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
14

新鮮殼付鶏卵およびあひる卵を70℃あるいは100℃に30分間加熱した後凍結,解凍した場合の卵白の微細構造を透過型電顕で観察し,解凍卵白中に分離している液の組成を分析し,またオボムチンを希釈あるいはpHを5.50とすることにより沈でん,除去した卵白を同様に加熱,凍結,解凍し,その微細構造を観察し,次の結果をえた。(1)新鮮生卵白の微細構造は鶏とあひるとでは明らかに異なるが,いずれの場合も電子密度の極めて高い線維状構造が認められ,オボムチンを除去した卵白ではこの構造は認められない。(2)電顕図において,卵白蛋白質は加熱により電子密度の高い塊状となり,加熱温度が高くなるとこの塊の周辺部の電子密度は増大して塊の輪郭は明らかとなる。オボムチンを除いた場合は,加熱により生じた塊は互に接続するものが多くなり,酸によりオボムチンを除いた場合は,蛋白質は大部分電子密度の高い大きい塊となるが,酸によるこの変化はあひる卵より鶏卵において著しい。(3)分離液の重量の卵重に対する割合はいずれの加熱条件下においても鶏卵とあひる卵で差はないが, 70℃,30分間加熱のあひる卵の分離液中の固形物含量は他の場合より著しく少ない。(4)分離液中の窒素は, 100℃, 30分間加熱の鶏卵,あひる卵および70℃, 30分間加熱の鶏卵の場合は蛋白態のものが多いが, 70℃, 30分間加熱のあひる卵の場合は大部分が非蛋白態である。また分離液中のヘキソサミン,ウロン酸は鶏卵よりあひる卵に多い。(5)鶏卵およびあひる卵の分離液中の遊離の糖のペーパークロマトグラフィーによる分析結果は,新鮮鶏卵卵白の透析性糖のそれとは異なる。