著者
青木 美紀子 佐久間 勇人 三ツ屋 妙
出版者
学校法人聖路加国際大学
雑誌
聖路加国際大学紀要 = Bulletin of St. Luke’s International University (ISSN:21891591)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.139-143, 2023-03

本学では看護学部4 年生の選択科目「看護ゼミナール(遺伝看護)」を開講している。遺伝医療と社会の関わりを概観し,先天的な体質をもつ人や家族の現状と課題を理解し,看護支援を考察することを学習目標としており,教授方法の一つに当事者参加授業を導入している。当事者参加授業は,対象理解を深める有効な教育方法である。2022年度は,脊髄小脳変性症の当事者と協働し,オンラインを活用した当事者参加授業を試みたので報告する。2022年度の履修者は12名であった。当事者による体験の共有だけでなく,当事者から提示された質問について,学生が回答を準備して当事者と共有する機会も設けた。学生は,当事者との対話を通して対象理解を深め,当事者から提示された問い(生きるとは何か,看護とは何か)を通して看護観に改めて向き合う姿勢がみられた。当事者参加授業の展開に関し,新たな工夫を探求する必要がある。
著者
丸谷 美紀 里中 利恵 中村 元子 佐久間 勇人
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.549-556, 2021-12-28 (Released:2022-02-09)
参考文献数
23

本稿の目的は,東日本大震災以降の自然災害における難病患者と家族の被災経験や災害への備えを,患者・家族の声明として示し,今後の我が国の災害対策の一助とすることである.まず,全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会会長からは,2011年の東日本大震災以降,2019年の台風まで続く地震・豪雨等の災害においても,難病患者への避難支援や避難所の配慮が欠如し,法や制度と乖離している実態が報告された.日本ALS協会鹿児島県支部事務局長からは,熊本地震で在宅人工呼吸器装着患者への渾身の支援が報告され,患者・家族会の情報伝達システムの確立,及び災害への備えの重要性が言及された.一方,脊髄小脳変性症患者からは災害に備えたくとも障壁があることが述べられた.東日本大震災以降,法制度は整備されてきたが,その後も想定を上回る災害が続き,難病患者の避難支援,被災後の疾患・健康管理や生活の支援,災害への備えに関し,課題が山積していることが伺える.特に避難所での食事・睡眠・排泄環境等の不備が,患者の健康状態に影響した.2011年に比較すると2018年には,人工呼吸器装着患者の電源確保や原疾患の治療薬の備蓄は充実してきていた.しかし,難病患者が災害時も安心して過すためには,薬や人工呼吸器等の狭義の医療への備えに加え,食事・睡眠・排泄等の基本的ニーズを満たす生活環境の整備へ重点をシフトすることが必要となる.そのためには,難病患者の支援者も無事であることが求められ,換言すれば,難病患者の災害支援とは,全ての人の災害支援につながる.