著者
深谷 哲也 佐久間 欣也 堤 隆一
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-18, 2010
被引用文献数
2

無菌包装米飯を組み合わせたready-to-heat食品の売上は,日本の市場において,この10年で倍増した.無菌包装米飯は,従来のレトルト米飯に比べ,味や品質に優れている.カゴメデリは,電子レンジ加熱して食する大変ユニークな調理食品で,カゴメ株式会社が,1999年から販売を開始した.これは,無菌包装米飯とレトルトパウチに充填されたメニュー調理用ソース(例えば,リゾット用,チキンライス用,ドリア用など)を組み合わされたセット食品である.これは,電子レンジ調理に対応した調理食品で,約2分の加熱で食べられる簡便性と,1食300 kcal以下の設計が若年女性に受け入れられた.私たちは,この技術をさらに発展させ,米飯メニュー対応商品のみならず,ショートパスタ,ロングパスタ(スパゲティ),穀類,豆類などを使ったメニューにも応用可能な技術とした.本報では,その中でも,無菌包装米飯製造における技術的な考察として,「微生物制御」と「容器開発」について紹介した.<br>「微生物制御」について<br>①<i>C. botulinum</i>による中毒リスクは,米飯のpHを4.9以下にすることで低減されるが,カップ容器内ヘッドスペース中の酸素濃度もリスクの大きさに影響していることがわかった.<br>②ヘッドスペース酸素濃度を約5%以上に保てば,腐敗先行,または腐敗と毒化がほぼ同時に発生することから,<i>C. botulinum</i>による中毒リスクを,より低減させるためには,少なくとも,ヘッドスペース中の酸素濃度を5%以上に保つことが有効であることがわかった.<br>③pHを5.0以下に調整すれば,原料由来<i>B. subtilis</i>の耐熱性を低下させることができ,105℃での炊飯も商業的無菌の確保が可能となることがわかった.<br>「容器開発」<br>①密封性と易開封性を同時に実現するために,それぞれの評価法を設定し,開け易さを実感できる開封強度を15~30N,目標とするシール強度を5~13 N/15 mmと設定した.<br>②連続的な実工程試験,最終荷姿での振動試験,落下試験を繰り返し,設定したシール強度が実用面でも問題ないことを確認した.<br>③容器成型工程の環境落下菌測定を行った結果,補足した菌は,全て100℃,10分間の加熱処理で死滅することを確認した.また,容器や蓋に付着している一般生菌数は,1.2個/容器+蓋であったが,いずれも耐熱生菌ではなく,無菌包装米飯の殺菌工程で十分死滅させることができることがわかった.