著者
三上 隆司
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.191-197, 2009
被引用文献数
1 10

著者らは,米の食味を迅速にかつ客観的に評価したいという要求に応え,いち早く食味計を開発し市場に送り出して来た.本稿では,米の食味の品質評価装置の開発という内容で解説した.また,これまで公表していなかった食味計開発の歴史的な部分も一部紹介させて頂いた.食味鑑定団に至る考え方と,それに必要な機器(炊飯食味計,シンセンサ,硬さ・粘り計)についての開発の経過と必要性についても述べた.そして,これら機器を使用した食味鑑定値の表示と,それぞれの機器を使用した用途別分類方法についても,新しい提案ができた.この食味鑑定値は,より官能検査値に近い値となり米の評価,ご飯の評価に有効に活用して頂けるものと考えている.
著者
酒井 昇
出版者
日本食品工学会
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.19-30, 2010 (Released:2011-03-28)

電子レンジを始めとしてマイクロ波加熱は、速く簡単に加熱・調理できることから、食品産業で良く利用されている。しかし、加熱速度が大きい半面、加熱むらも大きいなど問題も残っている。マイクロ波を照射したとき、被加熱物の加熱性を決めるのは誘電物性であることから、食品の誘電物性を知ることは重要である。本稿では、まずマイクロ波加熱の原理とマイクロ波加熱における水の役割について説明した。次に、水分濃度および塩分濃度の誘電物性に及ぼす影響について説明した。水分が減少することにより誘電率が減少し、塩分濃度が増えることにより誘電損率が増大する。最後に解凍にともなう物性変化について説明した。氷が融解するとき熱物性が変化するのと同時に誘電物性が大きく変化するため、ランナウェイ現象の原因となる。
著者
中山 保之 坂宮 章世 船木 健司 栗田 修 矢野 竹男
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.133-143, 2015
被引用文献数
1

橙系サツマイモである隼人芋を原料とした干芋である"きんこ芋"ならびにきんこ芋製造時に廃棄されている表層部を活用した,2種類の新規芋焼酎の実用的レベルでの製造を行った.焼酎の製造にあたっては,米麹は白麹を用いて製麹,酵母は鹿児島4号酵母(C4酵母),水は地下水を使用した.きんこ芋ならびに天日乾燥させた表層部は,粉砕などの前処理をせずに用いた.仕込みは伊勢市内にある企業の焼酎製造工場の設備を用いて,二段仕込みで行った.きんこ芋からは酸度5.5,揮発性酸度0.5,アルコール濃度11.9%,表層部からは酸度7.4,揮発性酸度1.4,アルコール濃度10.9%,の最終二次もろみが得られた.きんこ芋から得たもろみは,焼酎にきんこ芋の香気特性を残すため,常圧蒸留を行った.一方,表層部から得たもろみは,焼酎に表層部に由来する臭気が残らないようにするため,減圧蒸留を行った.きんこ芋200 kgからは291 L, 表層部400 kgからは551 Lの原酒が得られた.それぞれの原酒はアルコール濃度25%となるように割り水して調整した後,720 mLの褐色ビンに充填した.香気成分の定量結果から,それぞれの芋焼酎は,対照とした市販3焼酎と比較すると,芋焼酎の特微香成分であるモノテルペンアルコール類の種類ならびに含有量が低かったが,市販3焼酎では検出されなかった,原料の橙系サツマイモ固有で,甘さを連想させる香気成分である,β-イオノンが含まれていた.それぞれの芋焼酎は22種類の香気成分の定量値を用いた因子分析および官能評価によって,特性分析を行い,それぞれ期待した通りの従来の芋焼酎とは異なる芳香特性をもつ製品であることが確認できた.
著者
並河 良一
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.137-146, 2011
被引用文献数
1

高い経済成長を続けるイスラム圏の巨大な食品市場が,日本・欧米の企業の注目を集めている.しかし,イスラム圏の食品市場に参入するためには,イスラム教を基礎とする「ハラル制度」をクリアする必要がある.ハラル制度とは,イスラム教の禁ずる豚肉やアルコールなどの食材を含まない,衛生的で安全な食品の規準を定めて,不適合品の生産,流通,輸入などを制限する制度である.ハラル制度は,宗教を基礎とするため,非イスラム国の企業が違和感を抱く箇所,実施が困難な箇所がある.このため日本の食品企業はイスラム市場に十分に参入できないでいた.しかし,ハラル制度の体系・内容・運用を注意深く観察すると,同制度は,工業規格の性格を帯びており,食品工場等の技術者による理解が可能で,工場の現場マニュアルの作成の基礎となるように技術的に記載されている.したがって,技術力を有する日本企業は同制度を容易にクリアできると考えられる.
著者
平 修 小西 康子 金子 大作 一柳 優子
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.9-17, 2013

従来,農薬検出は,LC-,GC-MSによるものが一般的である.しかし,時間,コスト的に課題がある.今回,ナノ微粒子支援型質量分析(Nano-PALDI MS)法により,簡便に農薬を検出する手法の開発を試みた.コア成分の異なる8種類(Ti, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Ag)合成した.これらを用いて,水田除草剤に用いられるトップガン剤に含まれる4つの農薬(bromobutide, pentoxazone, pyriminobac methyl, bensulfron methyl)の検出に成功した.また,用いた8種類のナノ微粒子による農薬検出の結果をクラスタ解析することで,農薬を検出するのに有効なナノ微粒子を選定できることを示した.
著者
早川 喜郎 川名 隆広 神谷 勇一郎
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.215-220, 2008-12

野菜・果実加工において、濃縮プロセスは、最も重要な技術の1つであり、品質・コストに大きく影響を与えている。本研究においては、多くの食品に適用が可能で、かつ多品種少量生産に適する新規の凍結濃縮技術を開発することを目的とした。この凍結濃縮技術は、界面前進凍結濃縮を原理としており、氷の生産、分離が同一容器内で可能であり、装置構成、操作が非常に簡単なシステムである。濃縮条件の最適化、製氷器の最適設計、氷に含まれる溶質成分の回収と自動化、装置の自動化などの開発を行い、小規模の界面前進凍結濃縮システムを開発した。このシステムを使用してトマトジュースの凍結濃縮試験を行った結果、Brix40%程度の高濃度濃縮が可能であり、香味に優れた濃縮品を得ることが可能であった。また、トマトジュースのように他の果汁に比較するとバルブ質を多く含んでいるジュースでも凍結濃縮が行えることが確認できた。
著者
三上 隆司
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.191-197, 2009
被引用文献数
1 10

著者らは,米の食味を迅速にかつ客観的に評価したいという要求に応え,いち早く食味計を開発し市場に送り出して来た.本稿では,米の食味の品質評価装置の開発という内容で解説した.また,これまで公表していなかった食味計開発の歴史的な部分も一部紹介させて頂いた.食味鑑定団に至る考え方と,それに必要な機器(炊飯食味計,シンセンサ,硬さ・粘り計)についての開発の経過と必要性についても述べた.そして,これら機器を使用した食味鑑定値の表示と,それぞれの機器を使用した用途別分類方法についても,新しい提案ができた.この食味鑑定値は,より官能検査値に近い値となり米の評価,ご飯の評価に有効に活用して頂けるものと考えている.
著者
深谷 哲也 佐久間 欣也 堤 隆一
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-18, 2010
被引用文献数
2

無菌包装米飯を組み合わせたready-to-heat食品の売上は,日本の市場において,この10年で倍増した.無菌包装米飯は,従来のレトルト米飯に比べ,味や品質に優れている.カゴメデリは,電子レンジ加熱して食する大変ユニークな調理食品で,カゴメ株式会社が,1999年から販売を開始した.これは,無菌包装米飯とレトルトパウチに充填されたメニュー調理用ソース(例えば,リゾット用,チキンライス用,ドリア用など)を組み合わされたセット食品である.これは,電子レンジ調理に対応した調理食品で,約2分の加熱で食べられる簡便性と,1食300 kcal以下の設計が若年女性に受け入れられた.私たちは,この技術をさらに発展させ,米飯メニュー対応商品のみならず,ショートパスタ,ロングパスタ(スパゲティ),穀類,豆類などを使ったメニューにも応用可能な技術とした.本報では,その中でも,無菌包装米飯製造における技術的な考察として,「微生物制御」と「容器開発」について紹介した.<br>「微生物制御」について<br>①<i>C. botulinum</i>による中毒リスクは,米飯のpHを4.9以下にすることで低減されるが,カップ容器内ヘッドスペース中の酸素濃度もリスクの大きさに影響していることがわかった.<br>②ヘッドスペース酸素濃度を約5%以上に保てば,腐敗先行,または腐敗と毒化がほぼ同時に発生することから,<i>C. botulinum</i>による中毒リスクを,より低減させるためには,少なくとも,ヘッドスペース中の酸素濃度を5%以上に保つことが有効であることがわかった.<br>③pHを5.0以下に調整すれば,原料由来<i>B. subtilis</i>の耐熱性を低下させることができ,105℃での炊飯も商業的無菌の確保が可能となることがわかった.<br>「容器開発」<br>①密封性と易開封性を同時に実現するために,それぞれの評価法を設定し,開け易さを実感できる開封強度を15~30N,目標とするシール強度を5~13 N/15 mmと設定した.<br>②連続的な実工程試験,最終荷姿での振動試験,落下試験を繰り返し,設定したシール強度が実用面でも問題ないことを確認した.<br>③容器成型工程の環境落下菌測定を行った結果,補足した菌は,全て100℃,10分間の加熱処理で死滅することを確認した.また,容器や蓋に付着している一般生菌数は,1.2個/容器+蓋であったが,いずれも耐熱生菌ではなく,無菌包装米飯の殺菌工程で十分死滅させることができることがわかった.
著者
青山 亮介 北村 豊 山崎 和彦
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.127-133, 2009
被引用文献数
1 5

減圧噴霧乾燥法(VSD)は乾燥塔内を10~20 kPaに減圧することにより,40~60℃で液体試料の粉末化を可能とする方法である.本研究では,減圧された乾燥塔内の噴霧特性と粉末化特性を実験的に明らかにすることにより,VSDの設計・操作に資する基礎データを得ることを目的とした.材料に無糖練乳とヨーグルトスラリを用いて,減圧・非減圧の乾燥塔に噴霧し,その液滴径を測定したところ,噴霧圧や噴霧空気流量と液滴径の関係解析から,減圧下に噴霧されることによって液滴はより微細化し,二流体ノズルへの噴霧空気流量が小さい場合でも微細な噴霧液滴が得られることが判明した.しかし少ない噴霧空気流量でVSDを操作すると液滴の乾燥不良が生じ,逆に大きい噴霧空気流量で乾燥すると,微細粉末が乾燥塔外へ多く排出されるのでVSD乾燥特性の向上には,微細粉末を容易に回収する装置的改良が必要である.
著者
ラフマン・アイラ 城 斗志夫 伊東 章 片岡 龍磨 大西 真人 渡辺 敦夫 Rahaman Aila Jyou Toshio Itou Akira Kataoka Tatsuma Oonishi Masato Watanabe Atsuo
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.151-160, 2005-06

包装餅工場を対象に繁忙期と閑散期について紅場内の用水使用量の調査を行った, 洗米工程と浸漬工程ともに, シーズンによる違いはなく.米1トンあたり約5m3の絹水が使用されており.両工程で工場全体の用水使用量の約60%に相当することがわかった,そこで, 包装餅の品質.とくに微生物による保蔵安定性を損なうことなく.餅製造工場の洗米等用水 (ここは、洗米用水と浸漬用水の両者を併せて洗米等用木とする.以下洗米等排水、洗米等工程についても同様の意昧で用いる) 費用と排水処理コストの低減を目的に洗米等排水を膜分離技術により毒生し, 洗米等用水としてリサイクルすることを目的に本研究を行った.排水の再生には.予備試験の結果等からUFにより再生することとし, 分画分子量3万.10万および15万の3種の中空糸UF膜モジュールを用い, 膜モジュールの選定を行った.また, 洗米等排水の成分分析結果から, 1次・2次洗米排水には溶質等戒分 (溶質と懸濁成分を合わせて溶質等成分とする) の濃度が高く, また予備実験の結果UF処理におけろ透過流束が著しく低いことがわかった.したがって, 1次・2次洗米排水は活性汚泥法で処理することにし, 溶質等成分の少ない3次洗米排水以降のものを再生することにした.3次洗米以降の洗米排水と浸漬排水を混合した洗米等排水を試料とし.UF処埋による再生とリサイクルに関する研究を行った.透過流束.高分子成分としてのタンパク質と低分子量成分としての脂肪酸阻止性能, さらに.膜の洗浄回復性の点から分画分子量15万の膜が洗米等排水の処理に適していることがわかった.In a packed rice cake niariufacturing plant, about 5 m3 fresh water to one Lori of raw rice is used in each process of the rice washing and soaking process. The amount of water used ini both processes accounted for about 60% of that in the whole plarit regardless of season. The purpose of this study is to clarify the rice washing drainage by inernbrane separation techriictue and to reuse the clarified water in the rice washing and soaking processes in order to decrease the costs of fresh water and wastewater treatirient without spoiling product quality. especially storage stability related to rrucroorganisins. Because the results of the preliminary experiments suggested that UF membrane is suitable fur clarification of rice washing drainage, three types of hollow fiber CF riiembrane modules were tested nominal molecular weight cut off. 30kDa, 100kDa. and 150kDa. The analysis of drainage from the rice washing and soaking processes revealed that the first and second rice washing drainage contained a lame quantity of solutes and suspended substances. and permeation flux were very low. Therefore, we decided that the first and second drainage should be treated by active sludge method. and the other drainage should be clarified by UF membrane for recycling. A mixture of third to fifth rice washing drainage and rice soaking drainage was used for clarification and recycling experiments. The membrane modules far clarification of rice washing drainage was evaluated from the viewpoint of peririeation tiux, rejection rate of solutes. which were protein as high molecular weight substance and fatty acid as low molecular weight substance, and tiux recovery by riiembrane washing. It was concluded the meiribraiie module of 150 k was the most suitable for the clarification and recycling of rice washing drainage.
著者
渡辺 学 三堀 友雄 酒井 昇
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.269-278, 2005-12